漫画の登場人物(しかも脇役)に本気で恋をする
ふと思い出したことがある。
小学生の頃、友達数人と交換日記をしていた。
懐かしいよね。
あの頃、交換日記って流行ってた。
それ用のノートもあったほど。
中学になると、ノートを回すのではなく、ルーズリーフとか便箋に手紙を書くようになっていた。
私は、とにかく書くことは好きで、毎日誰かしらに手紙を書いて渡していた。学校で会って話せばいいようなこともあったし、ちょっと内緒話も書いた。
ある友達とは、なぜか、自作の物語を書いて送り合っていた。
内容はなんとなくしか覚えていないけれど。
思い出すと、ちょっと…、いや、だいぶ恥ずかしい。
ポエムみたいなものだったり、恋愛小説のようにしてみたり。
あの頃、スラムダンクが社会現象になっていて、学校中がスラムダンク一色だったと言っても過言ではない。
スポーツはてんでダメだった私も、なぜか、体育のペーパーテストで高得点が取れた。バスケだったから。スラムダンクのおかげで、バスケのルールが完璧に理解できていたからである。
スラムダンクにハマりにハマっていた中学2年の私は、登場人物の男の子に恋をするのである。
桜木花道ではなく、流川でもなく、ミッチーでもなく、もちろんゴリでもない…
花道の不良仲間だった水戸洋平に、本気で恋をした。
漫画の登場人物に、本気で惚れる。
主人公や、物語の中心的人物ではなく、あまり出番の多くない脇役というのが、私らしいなと思い返す。
当時は、本当にスラムダンク一筋だったから、来る日も来る日も水戸洋平のことを考えていた。
漫画本で言うと、初期の頃の1,2巻と、体育館で派手なケンカが展開される6,7巻あたりを、いつも食い入るように読んでいた。7巻の洋平くんはカッコよすぎた。
ばったり出会って、あわよくば抱きしめてもらえないかな、とか本気で望んでいた自分がこわい。
いや、そんな自分もかわいいのだが。
そんな、水戸洋平に恋していた私は、洋平くんと私の恋愛小説を書いて、しかも連載のように、毎日友達に渡していた。
「続く…」
とか書いていた。
その友達が、続きを待っていたかなんて知らない。
私がただ書きたくて、頼まれてもないけど書いていた。
手元には残っていない。渡してたから。
どんなことを書いていたのかも忘れた。でも、常に私は洋平くんに愛されていたように思う。
たまに、その友達も書いてくれた。
その子は漫画を描くことが得意な子だった。私の描いた洋平くんとのラブストーリーの続きを、漫画で描いてくれた。
私が、何か悪いやつらに襲われそうになっているところに、洋平くんが助けに来てくれて、そして抱きしめてくれるという、ある意味ベタなストーリーだった。めちゃくちゃ興奮して読んだのを覚えている。
物語の中だけど、私は洋平くんに抱きしめてもらい、キスをしてもらったのである。
ませた中学生だったな。キスだなんて。
テスト期間も、勉強するよりもまず創作活動を楽しんでいたな。
ふと、思い出した。
あれは、私の創作の始まりだったのではなかろうか。