見出し画像

「アフターコロナ」の採用戦略

リクルーティング・パートナーズ株式会社の鮎川(@ayutackn)です。

現在コロナウイルスによって、多くの企業で採用予算の縮小や計画の見直しに入っているかと思います。
採用活動は事業成長に欠かせませんが、このような状況下では求職者も企業も「様子見」のスタンスが続くでしょう。

一方でコロナウイルスという外圧が「採用活動のオンライン化」を推し進めたのも事実です。「使い方がわからない」「うちはそういうの厳しいから」という理由で「採用活動のオンライン化」から距離を置いていた企業もWebツールなどを駆使していかねば採用活動が立ち行かなくなるはずです。ちなみに「採用活動のオンライン化」というのはWeb説明会に対応しようとか、Web面接を増やそうとか、そんな小手先の話ではなく、オンライン上でどうコミュニケーションをとっていくのか?という「戦い方」の話になります。

そこで、今回は来るべきアフターコロナにおける採用戦略を「採用活動のオンライン化」という視点からお伝えできればと思います。

戦略①「お金」をかけず「時間」をかける

コロナショックによって採用予算の見直し(主に縮小)を余儀なくされた結果、人材確保の見通しが立てにくくなり、コロナの終息もしくは様子を見ながら再び採用活動を開始するといった企業が増えてくると考えられます。
お金をかけられない中で、企業が今のうちにできることは何でしょうか?それはずばりお金をかけなくても働いてくれる(資産になる)コンテンツをつくることです。お金をかけなくても働いてくれるコンテンツはストック型と呼ばれ、これは時間が経ってもコンテンツとしての価値が劣化しない、いわば「賞味期限が長い」コンテンツであるということです。採用領域で言えば、採用サイトや採用ブログ・採用動画をはじめとしたオウンドメディアがストック型の代表例です。一方でお金を払って掲載する求人媒体やWeb広告、SNS広告といったものはフロー型(流れていく)と呼ばれ、資産になりにくいコンテンツだと呼ばれます。採用活動がストップしている企業こそ、このストック型コンテンツを磨きこみ、情報発信の準備しておく必要があると考えます。

こちらにフロー型コンテンツとストック型コンテンツを整理しておきます。

戦略②オンラインでの存在感を強める

オンラインでの存在感を強めるというのは”求めている採用ターゲット”が御社のことを「何か聞いたことある」「最近見かける」という状態であることだと言えます。昨今の情報が溢れている世の中ではその会社を知るきっかけが求人媒体や採用サイト、SNS、YouTube、Web広告などデジタルメディア起点が多いことから、デジタル×ストック型コンテンツという領域で戦っていく必要があります。デジタルツール最大のメリットはデータを蓄積できることですので、利活用→分析→修正のPDCAを回せるため、運用次第でその資産価値を高めることができます。

【デジタル×ストック型コンテンツ】
・採用サイト
・採用ブログ
・採用動画
・採用スライド

【デジタル×フロー型コンテンツ】
・求人媒体(ネット)

【アナログ×ストック型コンテンツ】
・採用パンフレット
・社内報

【アナログ×フロー型コンテンツ】
・求人媒体(紙)
・折込チラシ

デジタル領域の中でも、特にZ世代・ミレニアル世代はSNSの存在感が強くなっています。少し前に、GENKINGさんの「Googleは使わない、SEO対策しているから」という記事が話題になりました。

「昔の若い子の楽しみって買い物やカラオケ、今はセルフィーなんですよ。SNSに写真をアップするのがライフスタイルの1つになっている」と続ける。だから、ビジュアルで個人ユーザーがリアルに使っているモノが分かるのだと。「一昔前ならGoogleで検索して化粧品のランキングを見ていたが、いまは見ません。結果にウソが多いのも若い子は知っている。自分が使っている化粧品が良くなくても、(ネットの)評価がいいと『ウソだな』と思う。Instagramは個人がやっているからウソがない」

求職者はリアルを求めてるんですよね。おっさん世代はこの感覚がたぶんわかりません。綺麗に作られた採用サイトやお化粧を施されて書かれた求人媒体の文字情報はすぐに見抜かれます。本当にアップデートしないといけないのは採用活動のやり方ではなく、わたしたちの意識。凝り固まった検索リテラシーを解していくことがデジタル領域に踏み込む第一歩だと思います。

戦略③「ヒキ」を捻り出す

デジタル領域で×ストック型コンテンツを戦っていくと決めた後は、実際にどんなコンテンツを作っていくのか?というコンテンツメイクの話になります。そもそもですが、この情報洪水の中では採用サイトを作り変えたところで応募は増えませんし、採用ブログを頑張ったところで流入は増えません。伝えたい情報を発信しても読まれずに素通りされてしまうコンテンツも膨大にあります。では、どのような情報を届ければ、ターゲットに刺さり心を動かすコンテンツをつくることができるのでしょうか?大きく以下の3ステップで検討を重ねます。

STEP1 採用ターゲットの設定
STEP2 魅力因子の抽出
STEP3 採用コンセプトの策定

<STEP1>
採用ターゲットを明確化するためには、自社の考え方(経営理念)や目標・戦略を実現するために必要な要素、現在活躍している人材の傾向などを把握した上で、採用ターゲットの要素設計を行なっていきます。採用ターゲットが明確になれば、どんな方法で集客するか、どの人材を選ぶのか、などの戦術を具体的に固めていくことが可能になります。

<STEP2>
STEP1で設定した採用ターゲットに対し訴求すべき企業の魅力因子を8分類の切り口で抽出。採用ターゲットに対し望ましい変化を起こすための、企画の材料を収集していきます。

①「理念・ビジョン」の明快さ
②「戦略・目標」の将来性
③「事業・商品」の特徴
④「仕事・ミッション」の醍醐味
⑤「風土・慣行」の親和性
⑥「人材・人間環境」の豊かさ
⑦「施設・職場環境」の利便性
⑧「制度・待遇」の充実度

労働条件や処遇待遇だけではなく、仕事への貢献度や成長実感、魅力的な仲間とともに過ごす時間、誇りの持てる企業組織への所属といった「意味報酬」を中心に重要な魅力因子を議論しながら企業の情報資産を収集し、採用ターゲットへ発信すべき価値を絞り込んでいきます。企業が伝えたい事実をそのまま発信しても、ターゲットの関心事とずれていれば、読む気になってもらえないコンテンツになってしまいます。必要に応じて経営ボードやターゲットの属性に近い人へのインタビューなどを通じて採用ターゲットの気持ちを鮮明にイメージできる状態にしていきます。

<STEP3>
STEP1で設定した採用ターゲットとSTEP2で抽出した魅力因子をもとに、ここまでに整理した材料を使って、採用ターゲットにとっての最大の関心事、そこに訴求すべき魅力的な「ヒキ」、企業が伝えるべき価値を絞り込みながら採用コンセプトを設計し、強力なキャッチコピーを決めます。このキャッチコピーに沿って、一貫した採用コンセプトの下、求職者とのデジタルコミュニケーションを実施していきます。ここまでやってはじめて「採用活動のオンライン化」のスタートだと言えます。

戦略④自在型のピッチャーになる

デジタル領域でストック型コンテンツを磨き終えたら、次はその露出機会を最大化せねばなりません。いくら良いコンテンツを作ったとしてもそれが採用ターゲットに「届かない」と意味がありません。【デジタル×ストック型コンテンツ】の領域で戦うと書きましたが、ストックだけで良いのかと言われるとそうではありません。先述の通り、ストック型コンテンツは中長期的に取り組むべき領域ですがフロー型コンテンツと違い瞬発力に書けます。

結論としてはストック型コンテンツとフロー型コンテンツのそれぞれの特徴を理解した上で使い分けることをオススメしています。ストック型コンテンツはどうしても時間がかかってしまうので、成果が出るまでの期間は自社で出来ることを整理してコツコツと積み重ねながら、フロー型コンテンツを利用し、少しずつウォレットシェアを移していくことが理想的だと思います。

巷では「求人メディアに依存せずにオウンドメディアを始めませんか?」という謳い文句が溢れていますが、ストック型コンテンツとフロー型コンテンツ(求人媒体と自社コンテンツ)はどちらが良いのか?という議論には個人的にはあまり意味を感じていません。例えるなら、ピッチャーに速球と変化球のどちらが優れているか?について議論するようなものだからです。

優秀なピッチャーは速球一本に頼るのではなく、速球も変化球も両方を場面に応じて投げられる自在型です。速球だけだと打者の目も慣れてしまい、最後には打たれてしまいます。必要に応じて変化球も織りまぜ、「緩急をつけた」ピッチングができるピッチャーが望ましいと思いませんか?採用の世界も同じことです。

速球一本で伸びてきたピッチャーがスランプに陥り、変化球を覚えまたマウンドに立つように、求人媒体一本でやってきて、応募者の伸び悩みに陥った企業が、採用オウンドメディア上で記事コンテンツを制作し、SNSで配信といったようにストック型コンテンツを増やして新たな応募者を獲得する、といったような可能性は大いにあります。この概念こそが「アフターコロナ」の採用戦略軸になると考えています。

アフターコロナの世界がどうなるかはわかりませんが、今回はコロナウイルスという外圧によってWebリテラシーが決して高くはなかった企業の視点が強制的に引き上がるきっかけになったのは事実です。一方でコロナショックにより店舗を閉じられたような企業様がいらっしゃるものまた事実。この困難をお客様と一緒に乗り越えるため、採用領域において会社としても個人としても、できる限りの支援をさせていただきたいと思っています。

Kick the coronavirus. Wash the hands and gargle.

以上、少しでも参考になりましたら幸いです。