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平成最後の夏の最後に。
季節に明確な終わりなんてないと分かっていても、なぜか今日は夏の終わりを感じずにはいられなかった。
空はここぞとばかりに、夏の、あのもくもくとした縦にのびる雲を浮かべ、セミは今日が最後だと言わんばかりにわんわんと鳴き、沈む夕日はどこか寂しそうで。
それはこれまでの毎日と変わらない空であり、雲であり、セミの鳴き声であり、夕日であるはずなのに、どこか寂しさを感じてしまう。
ただ、確実に、雲は前よりちょっと高くなり、セミたちの声はちょっとずつ変わってきていて、夕日の時間は前よりちょっと早くなっている。
夏を横臥している、と、のんびりそう思っていた間に、少しずつ、だけど確実に夏の終わりはそこまできていた。
「平成最後の夏」
なんて言葉がよく使われていた。
そんな言葉を使わなくても、今年の夏はもう二度とこないと分かった。けれども、まるでその言葉を免罪符に、何でもできるような気がしていた。
その言葉を免罪符に、きっと私はこの夏をおおいに楽しんでいた。
花火大会にも行った。
お祭りにも行った。
浴衣を着て線香花火もした。
海ではしゃいだ。
お日さまのもと走り回った。
きっと、恋だってした。
もうそこまできている夏の終わりを前に、寂しさなんて感じる必要がないほどに。
同じ夏はもう二度と来ないのだけれど。
明日からもきっと変わらず暑い日は続くのだけれど。
それでも、去り行く今年の夏に「ありがとう」を告げながら、またね、と手を振った。