そうか。夕日を追いかけてここまできたんだ。
そう錯覚してしまいそうな夕暮れだった。
沈む先は地平線ではないけれども、
雲があって沈んでいく姿が最後までみえなかったけれども、
それでも目が離せなくなるような魅力を、夕日はきっともっている。
世界中どこへいっても、夕焼けは最高の絶景だと思う。
追えるものなら、この沈みゆく夕日を追いかけて地球を一周してみたい。夕日を見たら次の場所へ移動する。そうやって西へ西へ進んでいく、そんな旅もきっと悪くない。
日が沈むか沈まないか、ただひたすらに夕日を追っていたら、モスクからコーランを読む声が聞こえてきた。
イスラム語は全く分からないけど、単調な声はしばらく聞いているとなんとなく分かったような気になってくる。
教えを説くその声が海へと消えていく様を、夕日を眺めながらずっと、ずっと見ていた。
夕日が沈みきると、さっきまでの眩しさが嘘みたいにとたんに真っ暗になる。いつの間にか空には月が出ていて、控えめに星が光っていた。
小さい頃はなぜか大嫌いだった黄昏時が、大きくなった今、一番好きな時間帯になってしまった。
上弦の月のもと光るモスクがどこか寂しげだった。