時には昔の話をしよう。
こんなに簡単に国境を越えるようになったのはいつからだろう。
パスポートと航空券さえあれば、あっさりと日本という国を出れてしまう。
私にとって、どこかよその国にいくことは大して難しいことではなくなってしまった。
「頭の中に常に世界地図を描けるように」
どこかの社長さんが言っていた大好きな言葉だ。
次の休みにどこいこう。
次に引っ越す先はどこにしよう。
好きな街はどこ?
今一番行きたいところはどこ?
そんなとき、私の頭の中には世界地図が広がる。
その感覚が当たり前のようになってしまって、今では簡単に一人で国境を越えてしまうけれども、初めての一人旅でアメリカを訪れたとき、出発前とてもとても怖いと思っていたのを思い出す。
日本とは違う銃社会な国。
日本では考えられないような犯罪が起こったりする。
もしも、そんな場面に出くわしてしまったら、私はきっと英語がわからなくて一番に殺される。
なんて被害妄想までしていたほどだった。
そんな、日常会話もままならないぐらいの少しの英語力と、スーツケースに詰め込めないほどの大きな不安をもってでかけた私に、現地の人はとても優しくしてくれた。
郊外のホテルを出るときに、街への行き方を聞いた私に、ゆっくりと何度も説明をしてくれたフロントのお姉さん。
乗る電車が分からず困っていたときに乗り場まで連れていってくれたおばあちゃん。
電車で隣に座っていろんなことを話した初対面の人が去り際に「Have a good day」と言ってくれた。
世界は思っていたよりも優しかった。
それからもう5年半も経つ。
気付いたら留学に行っていたり、バックパック1つで中南米を旅したり、すっかり海外に行くことに慣れてしまっている。
と同時に、旅の最中に目の前で起こることへの感動が薄れていってる自分にも気付く。
5年前の自分なら目を輝かせて見ていたようなものを、いつものことだと、見流してしまってる自分がいた。
旅へのときめきをもっともっと敏感に。
今回の一人旅は、そんな昔の自分を思い出す旅にしよう。
世界の優しさをしっかりとかみしめることのできる自分に戻るために。