ショートショート『UFOを呼ぼう!』
老人が家の近くを散歩していると河川敷でひたすら両手の上げ下げを繰り返しながらブツブツと何かを呟いている男がいた。
怪しい男が気になった老人は転ばないよう慎重に河川敷までの坂を下り、男に声をかける。
「何をやっとるんですかな?」
「UFOを呼んでるんですよ」
そう答えた男は再び「UFO来い〜」とブツブツ呟きながらまた両手の上げ下げを再開する。
「UFOなんて来るわけないでしょ」
老人は男を小バカにして去っていった。
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後に残った男は両手の上げ下げとUFOを呼ぶための言葉を発しながら考えていた。
もう20年間毎晩この儀式をしてるんだからUFOが来てくれないことなんてわかってるんだ。
乗ってきたUFOが壊れた俺が元の星に帰るには仲間の助けを呼ぶしかないんだ。こっちは藁にもすがる思いなんだよ。
クソっ、こんな修理の部品もない未開の地に来てしまったばかりに……。
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