見出し画像

ITは投資か?コストか?

中堅・中小企業の経営者の方々からITのコストについて相談されることがよくありますが、以前は多くの場合はITコストを下げられないかという相談がほとんどでした。最近はDXの意識が浸透し始めているのか、効果を出すための投資という観点でのIT・デジタルの相談も増えてきた印象です。良い傾向だと思います。
ただ、いまだにITをコストとしてしか見れていない経営者もいるようなので、ITにおけるコストと投資の違いについて整理しておきたいと思います。

ITは投資というよりはコスト

ITのコストの内訳は、ラン・ザ・ビジネス、いわゆる保守運用に8割の金額が使われているという状況は、現在でもそれほど変わり無いようです。これではITコストを削減する方にしか目が行かないのも仕方ないですね。DXレポートのバージョン1でも言われている通り、レガシーシステムの刷新はDXの第1歩になってくると思われます。

経済産業省DXレポートバージョン1より

ITのコストと投資の分けるとすると、コストは「新たな付加価値を産まない現状を維持するための保守運用」とします。一方、IT投資とは、投資という言葉の意味の通り、リターンを得なければなりません。ITにおける効果、狙い(リターン)が明確であるものをIT投資と呼びましょう。このようにITコストとIT投資をわけて考えなければDXも進みません。あまりITリテラシーが高くない中小・中堅の経営者はこれまでの経験からITはコストのイメージが強すぎて、IT投資という発想が得られなくなってしまってようるように思います。設備への投資は積極的に行う経営者もIT投資には消極的である方が多い印象です。これはITの投資対効果が分かりにくいことにも起因しているでしょう。ITの投資対効果については以下の記事をご参照ください。

中小・中堅企業は投資に回せるキャッシュにも限りがあります。まずはITのコストを徹底的に見直す必要があるでしょう。レガシーシステムのコストを見直し、IT投資に回さなければDXは進みません。DXレポートバージョン1にてレガシーシステムの刷新の必要性を謳ったところ、内容が誤解されてしまい、慌ててバージョン2を出したという事ですが、多くの企業ではDXの最初の1歩はレガシーシステムからの脱却になってくると思われます。

攻めと守りの投資

IT投資の内訳については、いわゆる攻めと守りの投資割合で日米で特徴があるようです。

経済産業省DXレポートバージョン1より

以前は日本は守り偏重でしたが、最近ではその傾向は少し解消されているようですね。攻めと守りのどちらが良い悪いではなく、あくまでバランスのとタイミングの問題であるかと思います。DXはビジネスモデルの変革に焦点が当てられがちですが、両利きの経営で言われている通り、既存ビジネスを持っている企業では既存ビジネスの改善・収益率向上、リスク低減のための守りのIT投資も必要です。DXにおいても攻めだけではなく守りとのバランスであると思います。

投資のポートフォリオ

既存事業で生み出したキャッシュをどの新規事業に投資するかはPPMで整理して、PLMで事業のライフサイクルを計画することが必要になってくるかと思います。

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)のイメージ
プロダクトライフサイクルマネジメント(PLM)のイメージ

IT投資はITコストとはわけて考えて、ITも通常の経営における投資と同じようにリターンを明確化する、そして事業のポートフォリを整理して既存事業と新規事業のバランスをとりながらビジネスモデルを刷新していく、というような流れが既存の企業には必要になってくるでしょう。DXはIT・デジタルで何か新しいことをやらなければいけないということではなく、通常の経営戦略を考えることとほぼ一緒ですね。

いいなと思ったら応援しよう!