スシュルタ・サンヒター総論編1/1ー3
अथातो वेदोत्पत्तिमाध्यायं व्याख्यास्याम: ||1||
यथोवाच भगवान् धन्वन्तरि: ||2||
athāto vedotpattimādhyāyaṃ vyākhyāsyāmaḥ ||1||
yathovāca bhagavān dhanvantariḥ ||2||
athātaḥ {then and therefore そして}
veda {ヴェーダ(アーユルヴェーダ)}
utpattim {始まり}
ādhyāyam {chapter 章を}
vyākhyāsyāmaḥ {explain 説明しましょう}
yathovācaḥ {as told このように話した}
bhagavān dhanvantariḥ {ダンワンタリ神は}
*日本語訳
これからヴェーダ(アーユルヴェーダ)の始まりの章をお話します。
このようにバガワーン・ダンワンタリは言いました。
अथ खलु भगवन्तममरवरमृषिगणपरिवृतमाश्रमस्थं
काशिराजं दिवोदासं धन्वन्तरिमौपधेनववैतरणौरभ्रपौष्कलावतकरवीर्यगोपुररक्षितसुश्रुतप्रभृतय: ऊचु: ||3||
atha khalu bhagavantamamaravaramṛṣigaṇaparivṛtamāśramasthaṃ
kāśirājaṃ divodāsaṃ dhanvantarimaupadhenavavaitaraṇaurabhrapauśkalāvatakaravīrya gopurarakṣitasuśrutaprabhṛtayaḥ ūcuḥ ||3||
atha {now 今}
khalu {now then そして}
bhagavantam {god 神}
amaravaram (devaśreṣtam) {最高神}
ṛṣigaṇa {聖者のグループ}
parivṛtam {沢山の}
āśramastham {アシュラム(修行場)}
kāśirājam {バラナシの王}
divodāsaṃ dhanvantarim {ディヴォダーサ・ダンワンタリを}
aupadhenava {アウパデナワ}
vaitaraṇa {ワイタラナ}
aurabhra {アウラブラ}
pauśkalāvata {パウシュカラーワタ}
karavīrya {カラウィールヤ}
gopurarakṣita {ゴープララクシタ}
suśruta {スシュルタ}
prabhṛtayaḥ {after placing in 据えた後}
ūcuḥ {told, asked 話した、尋ねた}
*日本語訳
聖者が集まるアシュラムで、アウパデナワ、ワイタラナ、アウラブラ、パウシュカラーワタ、カラウィールヤ、ゴープララクシタ、スシュルタはバラナシの王であるディヴォダーサ・ダンワンタリ(最高神)を囲んで座り、師に尋ねました。
*ダルハナの解説
・amaravaram (devaśreṣtam) {最高神}は、ダンワンタリ神(乳海攪拌で出てきた)の生まれ変わり。別の学者によると devaśreṣtam はブラフマー神の生まれ変わりであると言われている。
・धन्वन्तरि [dhanvantari] ダンワンタリとは。
धनु: शल्यशास्त्रं, तस्य अन्तं पारम् [dhanuḥ śalyaśāstraṃ, tasya antaṃ pāram]
外科の知識の終わり、つまり外科の知識の最高峰、これがダンワンタリである。
・prabhṛtayaḥ {after placing in 据えた後} prabhṛti は、bhojādayaḥ =ご飯など の意。
・ゴープララクシタは、ゴープラとラクシタという別々の人の名前であり、弟子は8人であったと考える人もいる。
・弟子は、ニミ、カーンカーヤナ、ガールギャ、ガーラワーをも含む12人であるという考えもある。
・スシュルタがメインであるのに、どうして一番始めにスシュルタの名前ではなく、アウパデナワたちの名前が連なっているのか。それは聖者として、アウパデナワたち(デーワリシ)は、ラージャリシの尊敬の的だったから、その敬意を表すためにアウパデナワたちの名前を始めに記した。
*ナオコの解説
・現代医学の外科学の本にも、 ”外科学の父”(Father of surgery)はスシュルタであるという記述があります。鼻や耳の整形外科の方法を初めて紹介したのはスシュルタです。ダンワンタリやスシュルタが生きた時代は、戦争が絶えず、そこで怪我をした人たちを助けたり、処刑によって鼻を切り落とされた人を助けるためにこの外科学が発展したと言われています。
・バラナシの王であるディヴォダーサ・ダンワンタリ(外科学の創始者)は、ヴィシュヌ神の化身であるダンワンタリ神(乳海攪拌で出てきた)の子孫もしくは生まれ変わりであると言われています。
・prabhṛtayaḥ {after placing in 据えた後} - prabhṛti の意味するところは bhojādayaḥ =ご飯なども共にした。よってダンワンタリ先生とスシュルタたちの師弟は毎日寝起きや食事をも共にして勉強したと考えられます。(グルシシヤパランパラ)
つづく。