デザイン教育 研究の調査
デザイン教育に関する日本の論文を覚え書き程度にメモしていくだけの回です。デザイン系の論文がJ-STAGEでたくさん見られるようになって、本当にありがたいです。
「デザイン教育」キーワードに引っかかる古いものから見てます。(J-STAGE等に掲載されていて見られるものだけに限定しています)。時々新しい順でも見てます。※ 論文を書くのに必要な所まで来たら、途中で終わります。(Ver.1. 2020-12-25)
デザイン教育の検討, 宮崎 央, 金沢大学教育学部附属高等学校紀要, 高校教育研究 (8), 91-99, 1957-02-25
DOI なし, 金沢大学術情報リポジトリ
「(1957年時点における)デザインの意味はアイデアから図示や模型製作、そして実物の完成まで見届けるというように、造形計画を広く含有するもの」としている。芸術家工芸における指導内容は①基礎学習、②デザイン実習、③鑑賞・批判 の3つである。製作内容は①制作実習、②理解、③使用・鑑賞 の3つである。講義科目として、8つの概論(工芸の特質、工芸の変遷など)で構成されている。指導内容の目的や効果などが分かりやすく掲載されている。
デザイン教育の実践, 市田 ナカ,美術教育1959 年 1959 巻 49 号 p. 29-32
DOI https://doi.org/10.11356/arted1951.1959.49_29
小学校低学年向けの平面デザインの課題の紹介、実際の作例と結果と考察が載っています。ネタが欲しいときに見ると楽しいかも。
デザイン教育の本質は何か, 東 政美, 美術教育1961 年 1961 巻 77 号 p. 6-8
DOI https://doi.org/10.11356/arted1951.1961.77_6
デザイン評論家の勝見勝の見解「北欧のグッド・デザインは、いろんな土地の、いろんなグループによって推進されてきたが、それらの根底には、われわれの生活環境をそのようにととのえるのかという生活様式確率への意志がひそんでいる。それは、われわれの時代精神を、どのように表現するかというデザイン様式創造の問題である」を紹介している。子どものときからのデザインの芽生えは、物を並べる、積み上げる、飾るという行為をする。子供はセザンヌの静物のように今来構成せず、一列にきちんと並べたり、中央に丸く/四角く並べたり、八百屋の店頭そのままに積み重ねたりした。この行為から発展させて考えてみると、彼らは「くりかえし、あつめる、ならべる」という本能があって、これを身の回りの机や壁の張り紙などに適応させてみると、動きやすくなったり、取りやすくなったり、人の動きが変化したりと、新しい機能が表れてくる。あるいはその間に課題が生じる。これを解決することも有意義なデザイン活動であろう。色や形の基礎教育だけでなく、生徒の日常に即した、子どもの内面欲求に即したものにすべきである。
第10回大会への課題 デザイン教育の諸問題, 石井 南放, 美術教育1961 年 1961 巻 70 号 p. 24
DOI https://doi.org/10.11356/arted1951.1961.24
デザイン教育の問題:「現代文明社会において特にデザイン教育が必要な理由」、「美術教育におけるデザインの位置・役割」、「児童生徒の心身発達段階とデザイン指導の系統」、「抽象表現、模様、図案、デザイン等の関係」、「改定指導要領のデザイン教育批判」、「現場の実際問題の研究発表並びに討議」。これらは研究大会の討論テーマなので結果は書かれていない。
理系学科出身エンジニアのためのデザイン教育認定(<シリーズ>「物理教育は今」), メルビル ピーター, 覧具 博義, 日本物理学会誌 2005 年 60 巻 5 号 p. 380-384
DOI https://doi.org/10.11316/butsuri1946.60.5.380
こちらは「設計」という意味のデザイン教育でした。エンジニアリングにおける設計ができるようになることをどう認定するかという話です。物理・応用・実験スキルとともに、電磁気学、波動現象、古典及び量子力学、統計力学および熱力学、物質の性質に関する修得が必要である。
A-011 工学部におけるデザイン教育の試行(ポスター発表論文,(A)創造性を育む様々な取り組み):: 「面材の椅子」デザインと製作, 飯田 晴彦 , 大渕 慶史, 工学・工業教育研究講演会講演論文集 2007(0), 712-713, 2007
DOI https://doi.org/10.20549/jseejaarc.2007.0_712
熊本大学のものづくり創造融合教育センターの試みで、ものづくりと創造力の育成を目的としたものである。こちらは「設計」のほうのデザインではない。ものごとの本質を見極め、解決策を考えるプロセスとしてデザインを捉えている。大学院生向けの教育プログラムである。面材の椅子のデザイン教育のプロセス:①立方体を紙でつくり、それをスケッチ練習の素材とする、②パースの基本を講義する、③面材の椅子のデザイン((1)コンセプト設定、(2)スケッチ、(3)スチレンボードで1/5のラフモデルの制作をおこない構造を検討、(4)製図、(5)製作)、④ポスター発表(デザインプロセスのまとめと振り返り)。各ステップで教員から問題点の指摘を行い、解決策を学生に考えさせた。
結果、アイデアスケッチの質とアイデア数が増えた。発想は狭かった。情報収集力が弱いためだと考えられる。
大学におけるデザイン教育の方向, 堀田 明裕, デザイン学研究 44(2), 57-66, 1997
DOI https://doi.org/10.11247/jssdj.44.57_1
従来の大学におけるデザイン教育についてまとめられている。ユーザの生活環境に関する要求を解決することをデザインと定義し、このために必要な能力は構想能力と造形能力の2つであり、これを融合した能力の獲得が必要であるとする。
学部1,2年では主に造形能力の獲得が目的である。ある構想に基づいて、頭の中に形態のイメージを作り、それを伝達する表現力を身につけることが目標。造形のための材料に関する知識も必要で、材料の特性によって造形条件が変わってくることも理解する。論理的な思考能力と、形態としてのイメージに変換できる柔軟な思考能力も求められる。文字や図によって自己の思考プロセスを記述する能力と、絵や図面、立体造形などによるイメージを持とに視覚的に表現する能力が基本となる。教員は思考の結果を形態として表現するプロセスを見ることで、学習者の学びの判断する重要な材料にしている。
学部3,4年では主に構想能力の獲得が目的である。構想能力とは、デザイン上の問題をいかに発見し、その解決の方向や形態としてのイメージを提示する能力である。まず生活に対する観察能力とその分析能力が必要である。デザインの基本はそれを使用する人間とその環境との関係に生じる問題の解決である。生活に対する観察はデザインの出発点である。ここで見つけた得られた問題をどう解決していくかという発想能力と提案能力と、それを具体的に実現させるための技術や材料、あるいはシステムに関する知識収集能力が必要である。複雑なメカニズムを持った空間や製品、あるいは複数の空間や製品を伴うシステムデザインの方向などが訓練される。
学部1,2年で構想能力を、3,4年で造形能力を身につけるという方法も検討されたが、材料的な制約などを理解した上で構想を行うほうが的確であるという検討についても書かれている。
<造形能力一覧>
①形態の観察力・分析力
②形態の描写力・表現力
③形態の構想能力
④構想に基づいた平面及び立体構成力
⑤構想に基づいたレイアウト能力
⑥図学、建築、あるいは機械製図に基づいた図面作成能力
⑦模型製作能力
⑧写真およびビデオ撮影・編集能力
⑨CAD,CGなどコンピュータ操作のための基礎能力
⑩文章構成能力
など
<構想能力一覧>
①フィールドの観察能力・調査能力
②データ分析能力、問題発見能力
③使用・生産に関する知識収集能力
④仮設提案能力、問題解決能力
⑤形態総合化能力
⑥プレゼンテーション能力
⑦デザインレポート作成能力
⑧口頭発表能力
など
社会や人間と光学に関する知識(種々の環境や社会の仕組み、生活やそこで生活する人の社会的特性や行動特性、生体的特性などに関する知識)、使用条件と生産条件に関する調整力(生産技術や材料技術に関する知識)、知識獲得能力(学ぶ力)
(今後は製品や空間を、時間的、空間的、社会的な視点を考慮してデザインする必要がある、チーム作業能力の獲得、これらを教育に組み込む必要性についても言及している)
教員の役割に関しては、常に学習者のコース内での活動を把握し、社会との連携を考慮した教育の調整が必要とされる。さまざまな教員による評価視点を学生に見せる必要がある。教員が制作しているところを見せることは学生のモチベーションUPにもなる。学生を参加させるのも有効である。