読書と人間形成には関係があるか
読解が文章を媒材とした受容作用であることはいうまでもない。受容した累積は、当然読者の固有のものと相互に共鳴し合い、抵抗しあいながら、新しい結果を生産していく。かくて読書における人間形成が可能になるのである。そして、この共鳴と抵抗とは、それによって自己の革新をうながすのであってみれば、読者においてもっとも重視しなければならない心的現象なのである[1]。
つまり、ここに書かれている人間形成のプロセスは
1「読書による読解」
2「受容」→累積
3「読者固有の"もの"と共鳴・抵抗」
4「新しい結果=自己の革新」
である。
望月(1961)[1] によると、文章を理解する観点は「表現」「内容」「主旨」の3つであるとされる。したがって読書感想文はこのいづれかの観点に立って述べられるべきである。望月の感想文の(作文力を除く)評価基準とは次のようなものである。
ア.0点
特定の理解観点(表現・内容・主旨)に即して述べていない。いずれかの観点に立って、感想は述べられるものである。それら観点に即さない感想は、きわめて周辺的な、あるいは軌道を踏みはずしたものである。
イ.1点
記述された箇所の指摘が十分でなく、事がらを抽象的に述べている。つまり、感想の論拠をあげないで、単に「おもしろい」とか「かなしい」とか述べているもので、共感を得ることがとぼしい。
ウ.2点
記述された箇所を指摘し、いくつかの事がらをはっきりと述べている。論拠を示しているから説得力がある。
エ.3点
自分の生活態度や現実の環境社会などと関連して、深く掘り下げて述べている。完成された感想であって、掘りさげは無限である。
※ウ・エの場合は、さらにその中にいくつかの段階が考えられるが、これ以上細分すると基準として煩雑になる。
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瀬尾(1980)[2] によると、読書感想文は
人間としての成長につながる"発見のよろこびや想像の楽しさ"にいろどられた読書の道。やがては文化の発展にまでつながる道。
であるといい、"読書の年輪"を記録するものとして "分類と体系化" を考える手始めとして「読書ノート」をつけると良いと述べている。
[1] 望月久貴. 読解指導における読書感想文の処理(評価)(1 小学校,II 各論,<特集>学習目標と指導方法-特に小・中・高の読むことの指導において-). 国語科教育 8, 107–113 (1961).
[2] 瀬尾正樹. 読書感想文指導の構想. 国語教育研究(26中), 476-485, 1980-11-04 (1980).
作文力(文章構成力)について書かれた文献:
[2] 西山由美子: 構成力を高める読書感想文の指導 : 効力感に着目して. 和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 3, 133-143, 1994-03-31(1994).