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「一緒にやりたい」って言えない私と、しっかりがっつり言える君

幼い頃を振り返ると、誰かと“一緒に”何かをやりたいと言ったことがあまりないような気がする。

幼稚園の時に友達がバレエを習っていると聞いて「やってみたい」と言ったことはあるけれど、それは「一緒に通いたい」ということではなかった。

小学生になり、「一緒に帰ろう」「待ち合わせして、習い事に一緒に行こう」というのはあった。それに友人と話したり遊んだりすることも楽しかったんだけれど、「一緒に」という思いは薄かった気がする。

塾通いやクラブ活動が始まるような年齢になっても、「友達が通ってる塾に私も行きたい」「あの子がいなくなるならクラブを辞めようかな」と思ったことも特になかった。

謎だ。人にはとても興味はある。
実際、クラスメイトを観察しながら「あの男子はあの女子が好きなのかな」「あの子はあのアニメが好きなんだな。私も観てるからその話をしよう」とか、思っていた。けれど、特に執着はなかった気がする。

思い当たるのは、自己主張の苦手な自分の性格だ。
自分を主張することをよしとせず、幼稚園の頃からすでに、周囲の気配を察知して「優等生」でいることが多かった。家族と超仲良しでべったり、ということもなかった。

ただ、「大人の話が通じる子ども」として扱われ、周囲の大人から頼られることは多かったように感じる。だから家でも外でも、人と行動することにどこか疲れてしまう感覚があったのかもしれない。

さらに言うなら、「お揃いで買おう」「一口ちょうだい」も、私が絶対に言わない言葉だった。

誰かとお揃いで何かを買うなんて、なんだか気が引ける。本心では嫌がっているかもしれないじゃないか。誰かの食べ物をもらったり交換したりすることも、人のものを取るみたいで嫌だった。

たしか小学校高学年のころに「誰かと遠慮なく接点を持てる人は、すごく精神的に大人もしくは子どもで、経済的な余裕があるか、もしくは余裕がないことに気づいていないかのどちらかなんだろう」という考えに至った気がする。可愛げのない子どもだ。

そんな昔のことを思い出したのは、寝る前に息子から「ママ、ロブロックス(ROBLOX、さまざまなゲームを作って遊べるゲーミングプラットフォームのこと)を明日一緒にやろうね。僕はiPadからログインするから、ママはケータイからログインしてね」と、息子からゲームのマルチプレイのお誘いを受けたからだ。

今5歳の息子は、日頃から臆面もなく「ママー、これやってー」と私に指示してくる。

それだけではない。「ママー、一緒にこの動画を観てほしいのー」「ママー、このお菓子を一緒に食べたいのー」など、私の状況なんて気にせずにあれもこれも一緒にやろうとしてくる。

なぜそんなにも、無邪気に自己主張ができるんだろう?
なぜそんなにも、一緒にやりたがるんだろう?

私はいまだに心底わからない。「子どもらしい」「幼いからだ」と言ってしまえばそれで終わりだ。加えて、息子は発達がややゆっくりで、まだできないことがいろいろある。私の様子を察知しにくいのは、そのせいもあるだろう。それでも私の子どもの頃にはあまりなかった現象なので不思議だった。

わからなすぎて本人に聞くと「だって一緒にやりたいからだよー」と、答えのような答えじゃないような言葉が返ってくる。言語能力もまだ発展途上なので、本心は言えていないと思う。でもとりあえず、本当に一緒にやりたいんだということはわかった。

離婚していて周囲にいる大人は私だから頼ってくるのかな、とも思ったが、療育の先生にも要求を伝えられるようになったし、保育園のお友達とも関わりを持っている。彼の世界には私以外の人間もしっかりと存在していた。

ここまで考えを及ばせたところで本題に戻ると、やっぱりあの「一緒にやろうよ」感は、私にとって未知なのだ。

こうした違いを感じるたびに、子どもは自分とは違う個体なのだ、とつくづく思う。たとえ血を分けていて、私のお腹から生まれた命だったとしても、子どもはまったく別の生物なのだ。

だからつい身勝手に、その「一緒にやろうよ」と言えるまっすぐさを失わないでほしい、と願ってしまう。

ということは結局のところ、私も幼い頃、本当は誰かに「一緒にやろうよ」と言いたかったのだろう。他人に気を使い、我慢をしすぎて、自分の本音がわからなくなってしまっただけで。

息子はまだ5歳だから、この先どう成長するかはまったくわからないし、想像もできない。でもおそらく今のまま大きくなると、The・空気を読まないマイペース系男子が爆誕してしまう気がするので、それはできれば避けたい。

それに「一緒にこれやろう」といいながら、相手のリソースを奪うだけなのもいけない。何らかの形で人の役に立てるといいな。あと、一緒に何かをする対象がいつまで経ってもママだと困るので、一緒に何かするお友達が増えますように。

……こまごまとした願いをてんこ盛りにしてしまったが、私はとにかく、素直に堂々と「一緒にやろうよ」と言える少年に育った君を見てみたいんだ。

来年は小学生。おそらく通級か支援級になる。これから先、自己肯定感が下がって、誰にも何も言えなくなったり、早々に不登校になったりするかもしれない。

でも君の良さはなくなってほしくないし、誰にも奪えない。私とはまったく違う個体のまま、自由に生きてほしい。私がこんなこと思っているなんて気づかなくていいからさ。

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