読めば読むほど味わいが深まる「海からの贈物」
アン・モロー・リンドバーグ 著 吉田健一 訳
読んだきっかけ
10代の終わりか20代はじめ頃、読んだきっかけすら思い出せませんが、ライフスタイルの変化毎に(結婚・育児・家族の自立)、内容の理解がどんどん深まっていく本なので、何度も何度も読み返しています。
印象に残った言葉
海は物欲しげなものや、欲張りや、焦っているものには何も与えなくて、地面を掘り繰り返して宝物を探すというのはせっかちであり、欲張りであるのみならず、信仰がないことを示す。忍耐が第一であることを海は我々に教える。忍耐と信仰である。我々は海からの贈りものを待ちながら、浜辺も同様に空虚になってそこに横たわっていなければならない。
ほら貝の簡素な美しさは私に(中略)自分の生活を簡易にして、気を散らすことのいくつかを切り捨てることなのだということを教えてくれる。
日の出貝の段階では、二人の人間が個人的に親密な付き合いをしているだけだった。牡蠣の状態でも、その個別的な、仕事本位の状態から逃れることができずにいた。しかし”たこぶね”まで来れば、二人は親密とか、個別的とか、仕事本位とかいうものから抽象的で普遍的なものへ、そしてまたそこから個人的なものへと自由に往復することができなくてはならないはずである。
この本から学んだこと
この本は1955年にアメリカで書かれているけれど、女性が抱える当時の現代社会の問題というのは、半世紀以上経っても変わっていないし、多くの女性が男性と同じように外で働くようになった今、さらに問題が深くなっているよね。
結婚して二人で働いている間はお互いに独立していて、良い関係が保てても、いざ子供が産まれると生活が一変。膨大な生活のタスクが増え、仕事も生活も回らなくなり、特に女性は子供や家族に与えることに疲弊して自分をなくしてしまう。
そんなとき大切なのは、自分自身の時間を少しでも持つこと。静かな孤独な環境で自分自身の内側に向き合えること(読書だったり、手芸だったり、音楽だったり・・)で自分の中のエネルギーを取り戻すこと。
また、子供が成長し、中年を迎える時に大切なのは「女は自分自身で大人にならなければならない」ということ。誰かに頼ったり、誰かと競争しなければならないと思うのを止め、一人の人間として成熟し、大きな愛で家族や社会とつながっていくこと。
”たこぶね”の時期に入った今、また深い学びをもらいました。
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