葛飾応為「月下砧打美人図」
今日は中秋の名月ですね。月、見てますか?(ロマンチストw)
さて、わたしはですが先日東京国立博物館でお月見してきました。トーハクの常設展示では季節に合わせた展示替えを毎回されてるので、今は秋やお月見や月に関する作品がたくさん展示されてます。
最近目立った企画展がやってなくてもトーハクに良く行くようになったのですが、季節の作品をその季節に見るという体験が至高すぎる。夏は花火や夕涼みの作品を超乙~と思いながら堪能してました。
というわけで前置きが長くなりましたが、今回のわたしのお目当て作品は!そう!葛飾応為の「月下砧打美人図」!!!!まさか!この!作品が!見れるなんて!!!嬉しいサプライズすぎる!トーハクもっと宣伝しろ!という感じで貴重にも程がある作品が見れます。
彼女の作品は10点ほどしか無いからです。
遠藤は葛飾北斎ラバーですが、北斎より応為が好きです。彼女の作品は北斎譲りの極太アウトラインの力強さや構図の粋さや視点のユーモアさはもちろん、北斎にはない圧倒的なロマンチックさも兼ね備えてて、わたしが女性だからかもしれませんが、応為のその繊細な美に対する感度の高さにはぁ~うっとり…!となるのです。
応為自身は男勝りな江戸っ子らしい性格をしていたと言われてますが、きっと自分がなめられるのが嫌でそういう感じの性格になってただけで、彼女の芯にはロマンチックが溢れてる。きっとそこに流れる目に見えない風ですら彼女は違いを感じとり描きわけられる気がする。北斎から自然や人間に対しての観察眼は鍛えられたと思うけど、それに加え彼女の作品からはそれらに対する愛おしさを感じる。美人図がうまいのは、きっと描く対象の人物に対して寄り添い、想いを馳せ、どんな人であれそれぞれの人生を尊ぶことが彼女にはできたからだと思う。
「月下砧打美人図」は月灯りの下で女性が砧を今まさに降り下げようとしているシーンで、左足がその勢いで浮いているのです。まじ最高じゃない?ドラマチックさといい、美の冷凍保存さといい一瞬のダイナミックさに、私の中の神奈川沖浪裏が荒ぶりまくるわけです。
一目見てこんなに鳥肌がぶわぁぁあって立った作品は久しぶりで、思わず泣いてしまうぐらい本物から溢れでる輝きが眩しかったです。応為の作品見ると毎回泣いちゃうな。
じっくり見ていくと指先の表現が結構不思議だったり(下手ではない)、
他の絵師が描いた月が描かれた作品はたいていベースのベージュの色を生かしてアウトラインを暗い色でぼかして浮かび上がらせているだけなのですが、応為のこの作品は月の色自体にも白で丁寧に着彩されててびっくりするくらい月が綺麗という驚きや、
袖口の赤い襦袢の縮の表現をするために激しく波打った技法が施されてるのですがこれは北斎から学んだものだという新しい発見があったり、
掛け軸の一文字にススキがあしらわれていてかわいすぎるのと、柱に使われてる渋い紫が本当に美しい色で応為の絵をめちゃくちゃ良く引き立てられてて掛け軸の魅力にもうっとりしました。
砧打について、全く知らなかったのですが、今で言うアイロンみたいなもんで、砧打すると布が月の光を通すほど美しい仕上がりになるみたいです。
木綿や麻の生産地では秋の夜になるとトントンとあちこちから聞こえてきてたそうで、俳句や和歌にもたくさん詠まれています。源氏物語にも枕草子にも出てくる。
濡れた水が乾きにくい夜に作業したとのことですが、月灯りの下で砧打…当時は普通にアイロンなくて大変だったと思うけど、端から見たらめちゃくちゃ風流で、日本人のこういう感性ほんとに好きだなぁと思いました。
というわけで、まさかの最高お月見ができて遠藤は満足です。みなさんも良い夜をお過ごしください◎