19歳ダウン症人生初のコンビニで買い物
突然ですが、みなさんが、人生ではじめてコンビニで買い物をしたのは、何歳の時でしたか?
小学校低~中学年が多いでしょうか?
私のダウン症の弟は現在19歳ですが、先日、ようやく人生ではじめてコンビニで買い物をしました。19年の人生史上初、です!
二十歳近くになるまで、コンビニで買い物をしたことがない、というのは、かなり特異な例だと思います。
そして、弟は、「知的障害ゆえに、コンビニで買い物をすることが困難」というような障害の状態ではありません。
1、弟がなぜこの19年間コンビ二で買い物をしてこなかったのか
2、コンビニで19年間買い物してこなかったことによる人生への影響
について、書きたいと思います。
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1、弟がなぜこの19年間コンビ二で買い物をしてこなかったのか
先ほどもお伝えしましたが、
弟は「知的障害ゆえにコンビニで買い物がすることが困難だった」という訳ではありません。
弟のダウン症の程度は中程度で、現在就労支援施設に通っており、
言語や会話は不明瞭な部分もありますが、おおよその意思疎通はとれます。
会話のレベルでいうと小学校低~中学年くらいを思い浮かべていただくと近しいかもしれません。
また、高校(特別支援学校)時代から、電車とバスを乗り継いで1人で通学していたので、ある程度1人で自立して行動することもできます。
コンビニは家の近くにもあり、これまで家族と出かけた時など、
「家族と一緒にコンビニに入りほしいものを伝える」ということは何度も経験してきました。
しかしながら、自分で商品を取り「会計までする」ということは一切したことがありませんでした。
子供がはじめて「コンビニで買い物をする」という行為ができるようになるのは、次のステップがあるのではないかと考えています。
①親などがコンビニで買い物をする行為をみて、やり方を覚える
↓
②自分もできると思う
↓
③やってみる
親の買い物についていき、それを見て覚え、自分でやりたがり、おつかいにいく、というような感じかと思います。
そして、おつかいを繰り返していくうちに、おつりの端数が切りよくなるお金の出し方を覚えたり、お弁当のレンチンをお願いする行為を覚えたり、公共料金の精算をする、という行為を体得したりするのだと思います。
弟に関してでいうと、
「①見てやり方を覚える」
まではありましたが、
「②自分もできると思う」と「③やってみる」がありませんでした。
まず、「②自分もできると思う」について。
弟は、自分がダウン症だということをはっきりとは理解できていませんが、
周囲に比べて「人にはできて、自分にはできないことが多い」という形で、自分のことを認識しています。(明示的には口に出しませんが)
勉強でも、運動でも、「周りができて自分にはできない」という経験を積むことが、他の人に比べて、これまでの人生でかなり多かったのだと思います。
実際、授業にはついていけないし、運動会の徒競走は体が小さくいつも下位でした。いわゆる「成功体験」の数が世間の平均よりも非常に少ないのです。
そのせいか、性格でいうとかなり明るい性格なのですが、
「自分自身がはじめて挑戦すること」に対して臆病になる傾向が非常に強いです。
能力的にできることであっても、はじめてやることに対しては「無理」「できないよー」といったり、その場に固まってしまうことが多いのです。
だから、そんな弟は、自分でコンビニにいって会計をしたがったことは一度もありませんでした。
たまにおなかがすいたときは、常に家にいた祖母をコンビニまで連れていき、会計をしてもらっていました。
だから、「③やってみる」という行為までに至りませんでした。
ただ、ここには私含む家族や周囲の人が反省すべきポイントだと思っています。
なぜなら、臆病になる弟に対して、「あなたもできるよ」「コンビニでこれを買ってみてごらん」ということを促してきたことは、これまでほとんどなかったからです。
電車で一人で通学するという行為は、弟が学校へ通う上で必要不可欠なので、何度か親が付き添いながら練習し、1人で通えるようになっていく、という学習プロセスを踏んでいったのですが、
コンビニで好きなものを買うという行為は、これまで必要不可欠になったことがなかったので、周囲がそこに挑戦させてこなかったのです。
2、コンビニで19年間買い物してこなかったことによる人生への影響
「買い物する」という行為を行わないとどんな影響があるのか。
非常にたくさんあります。
まず、自分で買い物をしないと必然的にお店に行く機会も減るので、物欲がわきづらいです。弟がこれほしい、あれほしい、ということ(特に嗜好品)はほとんどありません。
次に、「お金」の価値観が形成されません。「物を得るためにお金が必要」という概念が、ちゃんと体感できないのです。弟は、小学生のままごとで出てくるレベルでの「お金」で理解が止まっています。
そして、この2点により、労働意欲がわきづらいです。
物が欲しい→お金が必要→仕事をする必要がある、という風に考えることができないのです。
つまるところ、この、「19年間自分でコンビニで買い物をしたことがなかった」という事実は、弟がいま就職できていない、ということに、少なからず影響を与えていると思っています。
(※もちろん、世の中のすべての障害者にあてはまる訳ではありません。あくまで弟、というケースについての私見です)
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そんな弟も、先日家族で入ったコンビニで、家族の促しと励ましをうけ、はじめてコンビニで自分で会計をしました。満足げでした。
なぜもっとはやく、弟がその体験をできるように私はしなかったのか、ということを反省するばかりです。
そして、スーパーとか、書店とか、飲食店とか、
まだまだ「買う」という行為一つとっても体験できていないことばかりなので、
今後は弟にガンガン買い物を頼もうと思っています(土日は弟暇してるので)。
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