長男7歳がサッカーしにスペインに行った話
2024年10月、長男の太陽(7歳)が約1ヶ月、スペインへのサッカー留学に旅立った。
サッカーとの出会い
父は野球→アルティメット、母は水泳→バレーボール→ラクロス、誰もサッカーはしていない家族の元に生まれた、パパのコピーかと思うほど同じ顔をした長男。テレビでスポーツを観るのが大好きで、バンボに座りながらスポーツが始まると画面を凝視して瞬きもしない、動かない。そしてCMになると怒り出す始末。歩けるようになったころからもうすでに、ボールを投げるのも蹴るのも大好き、そんな子だった。
保育園でサッカー大会があり、どうやら太陽は活躍したらしくたくさんシュートを決めたと聞いた。「オレ、サッカー習いにいきたい!」と。そうかそうか、仕事が忙しいから近場で送迎できるところでね、と自宅から車で5分のフットサルスクールに通うことにした。
まだまだちびっ子サッカーなので、ボールを手で掴んでしまう子もいればゴールに見立てたコーンで遊ぶ子もいる。でも太陽は、1人だけちゃんとサッカーをしていた(笑)
保育園に案内のくる課外キャンプ。3つの選択肢があり、1つ目が日帰りキャンプ、2つ目が1泊のキャンプ、3つ目が1泊のサッカーキャンプ。同じ保育園のお友達はみんな2つ目の1泊キャンプに行くといい、太陽だけはサッカーキャンプに行くと言った。先生も課外活動のコーチもみんなに「え!太陽くん1人だよ。本当に大丈夫?」と心配された。1人でどこかにお泊りをしたことなんて、祖父母の家ですらない。でも彼は「オレはサッカーをしにいく」と聞かなかった。このとき5歳。(うちの子たちは2人とも早々に「オレ」笑)
誰も知っている人がいない中でのぞんだサッカーキャンプ。帰ってきたときは「優勝したよ!」と表彰状を見せてくれた。「お友だちはできた?」と聞いたら「できたよ!」と。「お友だちは何て名前?」と聞くと「知らん」だった。一度一緒にサッカーをした人は、たぶんみんなお友だちなんだと思う。
太陽、ごめん!
コーチだか運営の人だかに「太陽くんもう少しちゃんとサッカーできるところに連れていってあげたほうがいいですよ」と言われて、なんとなく「ちゃんとしてそうなところ」を探して、グランパスのスクールに体験に行った。同い年で上手な子がたくさんいた。「え、幼稚園とか1年生ってこんなにみんなうまいの?こんなにできるの?どうなってるの?」が、純粋な当時の私の感想。
太陽は上手な子たちとサッカーができることをとても楽しんでいた。それを見て、心から「太陽、ごめん!」とも思った。もっと早く、ちゃんと情報収集して子どもが1番楽しくサッカーができる場所を見つけてあげればよかった。
ちなみに太陽は、数字は全てDAZNを見ながらサッカーで覚えた。時間の概念もサッカーで覚えた。足し算もアディショナルタイムで覚えた。いろいろな国の国旗もオリンピックやW杯で覚えた。わからないことはサッカーに例えると理解する。サッカーにより教育され、サッカーにより成長させてもらっている(笑)
メンタルが強いのか、鈍感力が高いのか
グランパスのスクールに通いながら、試合経験を積むために別のチームにも所属。スクールで技術を学びながら、もう1つのチームでゲーム感覚を身につけていく。年長でサッカーをはじめて丸2年。パパと太陽、二人三脚でサッカーに向き合い、できることはとてもたくさん増えた。不器用ながらも少しずつ技術もついてきた。それにともなって、当然チームでやるべき戦術やプレーが出てくる。2バック、3バックの動き、連動をさせながらも攻めるときは行く、今は守備に枚数をかけるべきかカバーにセカンドで待つべきか、など頭を使ったプレーや判断が必要な場面に直面する。
太陽はどうやらまだまだサッカーIQが追いついていなさそう。遠くから監督の怒号が聞こえることも多々ある。フィールドプレーをしてきた夫も私も、試合を見ていると思うことがいろいろある。音になって口から漏れ出る前に飲み込むことは少なくない。(いや、飲み込めないことの方が多い。笑)
そんな彼の強みは「怒鳴られても叱られてもへこたれない」こと。これは、メンタルが強いのか鈍感力が強いのか….正直、親の私たちにも分からない。もっと落ち込めよ!と思うことすらある。負けたあと悔しそうな顔を少しするものの「あのオレのスーパーシュート見た?」とドヤ顔で聞いてくる。このハートの強さは、パパによると私譲りらしい。え?
そんな太陽がこの秋、スペインに行くことになった。
太陽7歳、1人でスペインへ
どういう経緯でスペインに行くことになったのかは、正直私はあまりよく分かっていない。気づいたらパパと太陽の中で「スペイン留学に行く」ことになっており「ママ、お金よろしく!」ということだった(笑)
(パパは、一部NISAを解約して俺も出すから行かしてやりたい、だった)
現地は当然言葉も通じないし日本人の友だちがいる状態でもないので、ひとまずスマホは持たせて困ったことがあったら連絡ができるようにだけしておいた。
ずっと「楽しみー!」とワクワク状態で、緊張も不安も全くなさそうだった。これも私譲りか。
そして出発。初めて親元を離れての生活、それが言葉の通じない初海外。まあいろいろなことがあった。
技術、フィジカル、メンタル、理解力
途中、フィードバックの文章をもらった。
理解力は、まあわかる。ない。
フィジカルは日本にいるとフィジカルトレーニングらしいことはまだあまりやらないし、確かに体が硬く不器用なのでそれもわかる。
メ……メンタル?笑
ここで私、初めて我が子のことが急に心配になる。(今までなっとらんかったんかい笑)でも本人からは「楽しいよー!」と能天気なボイスメッセージが送られてくるので、まあいいか、と思いながらあまり気にせずに放置。
海外の洗礼
2週目あたりで、生活の面でいくつか自立していない部分が露呈する。
1つ目は、洗濯。どうやら持っていった洗濯ネットが壊れてしまったようで、どうやって寮の洗濯に出せばいいか分からなかったらしい。汗だくのゲームシャツを数日着たみたいで「くさい、シャワーを何度も浴びてこい!」とだいぶ年上のお兄ちゃんたちから煙たがられたよう。パシられたり、太陽が行くと部屋を移動されたりと話を聞いていると、それなりにやられてそうな感じ。ボイスメッセージで「練習のあとシャワーを浴びてるのに、あと5回あびてこいって言われるの、お兄ちゃんたちに」という弱々しい声を聞いたときにはさすがに胸が苦しくなった。
2つ目は、裸足で歩いていいゾーンと靴を履いて行かなければいけないところの見分けがついていなかったのか、横着をしたのか「食堂まで裸足で行っている日本人がいる」と警告をされたこと。チームの寮からイエローカードが出たようで、もう一度やるともうトレーニングには参加できなくなる、とのことだった。
3つ目は、太陽に貸したボールがなくなった、とタイ人の兄弟に100ユーロ請求された。太陽は「ここに返した」と話していたが、寮での解決策は「ボールを買って返す」となったそう。しかも「どのボールがいい?」と選ばせると。なんでやねん、なくなったやつと同じやつにせんかい!いや、そもそも太陽は返したって言うとるやないかい、寮内探せよ!とか、いろいろ思うことはあったものの、子どもは実質「人質」。無事に帰国してくれれば何でもいいと思い、ぐっと飲み込んだ。
「サッカーが嫌いにさえならなければいい」
たかだか7歳。大きなお兄ちゃんたちの中で初めての環境で暮らす我が子に日本から何もしてやれないもどかしさもありつつ、太陽からのLINEは「がんばるね」だった。逃げたい、帰りたいは一度も言わなかった。サッカーが嫌いになるようなことがあれば、口も手も出す、スペインにでも乗り込もうと思っていた。でも、時折現地から送っていただける写真ではサッカーは楽しそうだったこと、そして終わりがあることが分かっていたのが救いだった。
一時帰国
一度、4日間帰国するスケジュールになっていた。成田空港まで迎えにいった。少し身長が伸びて、元気そうな太陽が見えたときにはさすがにホッとした。
「何が食べたい?」と聞くと「寿司!」と。
7歳ってふつうどのくらい食べるんだろう。
太陽は15皿ほど(ちなみに夫34歳も軽く20皿、次男4歳も6,7皿)。いつも諸先輩方が「家でラーメンを食べさせてから寿司に行く」という現実があと数年でやってくる恐怖を感じながらクレカをきる。
スペイン前半戦の楽しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと、苦しかったこと、たくさん話を聞きたいなと思っていろいろ質問してみたけど
「んー!いちばん大変だったのは、お土産を選ぶことかな!」と言われた。笑
嫌な気持ちになったことはもう忘れているのか、あまり認識していないのか、もう何がなんだか私には分からない。でも、この鈍感力はきっと未来の彼を救うと信じることにした(笑)
再びスペインへ
そして、またスペインへ旅立った。行く直前にいろんな準備をした。万が一のために部屋で洗濯できる方法もパパと練習した。送っていく道中、車の中では「行った先でのルールをしっかり守ること」という生活の話もしたし、「どんなところを見られているのか」という話もした。
が、その話をしているとき彼はスマホをみて適当に生返事をしていた。笑
私は、カッチーーン!
今からスペインに経つ息子に
「もうスペイン行くな!というか、むしろ帰ってくるな!」
とつい言ってしまって、とても気まずいお見送りになってしまった。笑
そんな息子が、今日スペインから帰国する。
どんな顔をして帰ってくるのか、どんな話をしてくれるのか(今回はお土産はいらないと言ってあるので、きっと大変じゃないはず笑)。
長男がいなかった1ヶ月、私はとても子育てを省みる期間になった。
10割、反省だった。
こうやって振り返ると、まだサッカーをはじめてたった2年しか経っていないのに、よくやっていると思う。私に同じことができたかと思うと、できたと思うけど←、でも太陽よりはもう少しいろんなことに傷ついてただろうな、とは思う。
さいごに
私は、太陽にサッカー選手になってほしいとは別に思っていない。
でも、夢に向かって一生懸命頑張る楽しさを知ってほしいと思うし、できれば夢を叶えられるよう親にできることはやりたいし、全力で応援したいなとは思っている。
太陽はサッカー選手になりたいと言う。
太陽が夢を叶えられることを応援するということは、すなわちサッカー選手になることを私も望むことになる。
太陽よりもサッカーが上手な子は星の数ほどいて、サッカー選手になれるのはその中のほんの一握り。成長していく過程できっといろんなことが分かってきてメタ認知をしていく中で、私にできることは「サッカーが好きな太陽」でいられるように関わることなんだなと、今は腹落ちさせている。
今の太陽は「運動が好きな自分が好き」。
運動が好きな自分が今の彼のアイデンティティになっている。
その心を一生持ち続けて、運動習慣のある大人になるといいな。
たった今、無事に帰国!
初めてコーナーキックからヘディングで決めたよ!と嬉しそうに報告してくれて、良かった!
実は1回目の帰国後にチックのような目の動きが出てたのだけど、今回帰ってきてほぼなくなってるので、ちょっと安心した。
さあ、パパはまた今日から忙しくなる。
私は変わらず、仕事に邁進させてもらう。
大志を持って好きなことに全ツッパする勇姿を、私は背中で見せていこうと思う。
廣瀬あゆみ