「量子もつれとは何か:谷村省吾教授解説」が面白かった
こちらの記事に触発されて動画を見ました。
動画のタイトルはこちら。
こちらがその動画。
ちなみに、2022年のノーベル物理学賞は次のようなものでした。
ベルの不等式というのは、言葉には聞いたことがあったのだけど、それがEPRパラドックスとむすびついていたというのは知りませんでした。
谷村省吾先生は Twitter でフォローさせて頂いていて、と言っても最近は Twitter をほとんど見ていないのだけど、哲学と熱く議論されていたことが印象にあります。この本まで買ってしまった。
ジャンルを越えても熱く真っ正面からぶつかっていかれるような方です。
量子もつれ
量子もつれ(エンタングルメント)というのは、2つの粒子の性質がもつれたように絡まっている様を言います。量子論から導きだされる現象は種々ありますが、その中でも特に不思議で面白い現象です。よく例に挙げられるのがスピンですが、例えば、粒子Aが左スピンであれば粒子Bは右スピンという状況になります。なんで、2つの粒子がこんな風にもつれ合うのか。不勉強につき存じません(~_~;)。理由はともかく、何故かそんな性質が量子論にはあるのです。
もう1つ、量子には特殊な性質があって、量子の状態は観測するまで決まりません。「観測するまで左スピンであり右スピンでもある」のです。「どちらかに決まっているがわからない」というのではなくて、「どちらの状態でもある」というなんだかわからない状態です。右スピンでもあり、同時に左スピンでもあるのです。これもなんでそうなるのかはわかりません。とにかく、そうなんです(~_~;)。
さて、どちらかが左スピンであればもう一方は右スピンであるという量子もつれの状態にありながら、今はまだどちらの粒子も左スピン右スピンどちらでもあるという2つの粒子Aと粒子Bがあるとします。この2つの粒子を引き離してみます。粒子Bを遠く遠く、銀河の果てまで持っていきます。それから粒子Aのスピンを観測します。
粒子Aは右スピンでした。
そのとき・・・。
同時に粒子Bが左スピンであると決定するのです。
だって、粒子Aともつれの状態にあるからね。
でも。
同時に?
なにそれ。
粒子Bはまだ観測してへんし。
銀河の果てまで引き離されて。
同時にって。
粒子Aが右スピンであるという情報が一瞬で粒子Bに伝わったとでも言うの?
一瞬って、相対性理論に反するっしょ。
そう反論したのはアインシュタインでした。
反論論文は「物理的実在性についての量子力学的記述は完成したと考えられるか」。
通称「EPRパラドックス」と言われています。「EPR」は論文の共著であるEinstein、Podolsky、Rosen の頭文字を取ったものです。
ベルの不等式
「ベルの不等式」というのは局所実在論の上限を与える式だそうです。局所実在論が成り立つのならばこういう不等式が成り立つはずで「ある値は特定の数値を超えるはずがない」と言っているのがベルの不等式です。ベルの不等式については谷村先生が動画で身振り手振りで解説してくださってます。
そのあたり、とても面白いので是非動画をご覧ください。
ベルの不等式と量子論
ところが、量子論のもとに計算すると、上限であるはずの数値を超えてしまう。ベルの不等式が成り立たない。この「ベルの不等式が成り立たない」ことを「ベルの不等式の破れ」と言います。「破れ」というのは物理学ではよく使われる表現で、例えば「対称性の破れ」などと言われたりします。「対称性が保たれる」と思っていたのに保たれなかった、というような場合に「対称性が破れた」というようです。
さて、量子論で計算するとベルの不等式が破れる。それが正しいとすると、量子論では局所実在論が成り立たないということになります。でも、これはまだ理論段階。物理学は実証されてこそ認められる。実証できない理論はどれだけエレガントな理論であったとしても、認められません。かの一般相対性理論もそうでした。日食で実証されるまで認められることはありませんでした。
量子論におけるベルの不等式の破れの実証
そこで。「量子論ではベルの不等式が破れる」ことを実験した人達がいます。そして、それを実証した。実験して、そして実証したわけです。それが「量子もつれの実験によるベルの不等式の破れの立証」です。物理学において実験で実証するということはとても大切なことです。誰も実証しなければ絵に描いた餅に過ぎない。どの理論においても実験で実証しようという方々がいます。理論化する、実証する、理論化する、実証する、そんなことを何度も何度も繰り返してきました。そうして現代の物理学が成り立っています。
「ベルの不等式の破れを実証した量子もつれの実験」。実証実験は何度も改良されています。ベルの不等式が発表されたのが1964年。クラウザーが式を改良して偏光を用いた実験を考案。クラウザーが実験したのが1972年。アスペが実験したのが1982年。ツァイリンガーの実験が1998年。完全に実証されたのが2015年。その間にどう改良されたのか、何故改良しなければならなかったのか。これについては谷村先生が動画でとても面白く解説して下さっています。『物理学者が騙されてるんじゃね?』とか(笑)。ここのくだりもとても面白いので、是非ご覧ください。
疑問
こういうものをみたり聞いたり読んだりすると、たいていは疑問が残るのですが、今回も同じです。
(1)光の偏光って量子もつれ状態になるの?
(2)実証実験で生成される光子対。このペアはもつれ状態にあるの? どうやってもつれ状態を作り出せるの?
(3)「45°偏光は確率で x だったり y だったり」ということが、√2 につながるの?
また宿題だなぁ。