なめくじ
さっき洗面所で歯を磨いていたら隣の開け放った風呂場に何か黒っぽい細長いものが目に入った。何だろうと思ってよくよく見るとなめくじである。はじめは小さなムカデかとも思ったが、足がない。更に近付いて見ると小さなツノが二本。
ああ、なめくじ。
久しぶりに見た。
なめくじと言えば思い出すことがあって、息子が小学校低学年の頃のことである。その日は休日であったか。昼食の用意をしようとキャベツを一枚めくったら、そこにいたのがなめくじであった。
「あ、なめくじ」
と誰に言うでもなく声にしたんだが、これに反応したのが小学校低学年の息子であった。
「え! どれどれ?」
と、文字通り飛んできた。
「ほら、ここに」
と言って見せた時、息子はこう反応した。
「あ! お母さん、ちょっと待って!」
と言って部屋に、これまた飛んで行った。
(待って? なんで?)
と思いつつまな板の前で待つことしばし。
息子が持ってきたのは虫を入れるプラスチックケースであった。
「え? これに入れるん?」
「うん!」
「・・・」
そうして、プラスチックケースの中にキャベツ一枚となめくじ一匹を入れたのだった。
あのなめくじはどうなったんだったか。
さっきのなめくじはどうなるんだか。
明日の朝にはいなくなるんだろう。