君のために生きようか
高校生の頃、Mステで「好きやねん大阪」を歌う大倉くんに一目惚れして以来、20代前半から後半まで、関ジャニ∞のライブには欠かさず通う大倉担のEighterだった。
7人が歌う関ジャニ∞の楽曲も、7人が一緒にいる時の空気感も全てが好きだった。
相方のMちゃんと何度も双子コーデでライブに行ったし、セブンコラボの時は、カラオケオールして朝から何軒もコンビニを回った。
遠征だって、たくさん行った。
あの日々は、間違いなく私にとっての青春だった。
そして、彼らの青春もまた、永遠に続くものだと信じていた。
この世に、永遠なんてないとどこかで分かっていたのに。
2018年、すばるくんが関ジャニ∞を脱退すると発表した日、出勤前にも関わらず、ベッドの上で声をあげて泣いたことを今でも覚えている。
先立って流出した週刊誌の記事なんて嘘だよって言ってほしかった。
私にとっては、7人の関ジャニ∞が全てだったから、お門違いにも裏切られたような気持ちになって、6人になった関ジャニ∞も、その後5人になった関ジャニ∞も受け入れることができなくて、視界に入れることさえ拒んだ。
すばるくんが居ない初めてのツアー、6人の関ジャニ∞という現実を、突き付けられるのが怖くて、チケットを持っていたのに行けなかった。
ファンクラブもやめて、グッズもCDも全て手放した。関ジャニ∞のすべてからさよならした。
私の二度目の青春は、7人で最後に関ジャムに出演した夜、終わりを告げた。
それから、去年の秋までの5年間、関ジャニ∞がどう活動してきたか全く知らない。
大倉くんの映画(窮鼠)は観に行ったし、Twitterもフォローしたけれど、熱心に追うことはしなかった。
あんなに、好きだったのに。
同担拒否のガチ恋で、20代のほとんどを過ごしてきたのに。
私は、大倉くん以外の誰かを好きになって、彼が過去になっていく事実を認めざる得なかった。
きっとこの先も、いつまでも忘れられない元カレみたいな存在で、私の中に残り続けるんだろう。
それでいいや、私が昔のように応援せずとも、どこかで幸せに生きててくれたら。
そんなおこがましいことこの上ない思いを抱えていた。
それが去年、とある出来事で運命が変わった。
去年の秋、何の気なしに開いたXに、大倉くんの投稿が上がっていた。
大倉くんが事務所で作業する後ろ姿を収めた1枚の写真付ポスト。
そうだ、彼は今後輩のプロデュースもやってるんだっけ、その程度の知識でぼんやりと開いてハッとする。
「倉子ちゃん……?」
そう、ポケットに倉子ちゃんらしきぬいが入っていた。
ここで補足すると、私は女装した関ジャニ∞が演じるキャンジャニ∞が大好きだった。
大倉くんよりも、倉子ちゃんが好き!みたいな時期すらあったほど熱烈な倉子ちゃん信者だ。
突然の推しの新情報に、今までの鬱屈としていて歪みきった関ジャニ∞への未練のような感情が、遠くへ弾け飛んだ気がした。
あれほど目を背けて、もう関ジャニ∞は見れない……とぐじぐじ言っていた私と決別することを決めた。
本来ならば、大倉くんでそうなるべきだったと、重々分かっている。
しかし、前述のとおり、5人になった関ジャニ∞に対して、言葉では言い表せないほどの歪みきった感情を抱えていたので、ここでキャンジャニちゃんが登場してくれたのは、私にとって大いに救いであったと思う。
開き直ったといえば、語弊があるかもしれない。
でも、その時の私は、それくらい何も恐れるものはなかったし、無敵状態だった。
数年ぶりに開いた、事務所の㏋。
関ジャニ∞を離れて以来、一切男性アイドルに触れていなかった私は、何を見ても衝撃の連続。
一番驚いたのは、コンサートグッズが通販できること。
コロナ禍なんていいことなし、でもこうして時代に合わせて、あの!事務所が!変わってくれたなんて!と感激してしまった。
そして、その頃、ちょうど関ジャニ∞冬のドームツアーに向けたグッズが販売されていた。
なんとも運がいい話だ。
開いてまた衝撃!え……関ジャニ∞のグッズが可愛い……?
いや、今までも可愛かったよ、でもデザインが段違いに可愛い。
嘘……大倉くんが監修を……?えっ、いつの間にそんなしごでき男に……?
でもよく考えたら、私が好きだった頃から、最年少でありながら一番グループのことを俯瞰で見ていて、頼もしい人だったよなぁ、と納得した。
気づいたら、ツアーに行く予定もないのに、諭吉と何人かサヨナラしていた。これだからオタクって怖い。
時間が解決してくれるとはよく言うけれど、もしかしたら自分にとってもそうだったのかもしれない。
5人の関ジャニ∞を見てみたい、今の私なら受け止められるかもしれないと思った。
善は急げと、5人になってからのアルバム、DVDを買った。
ステージの上の5人は、自分の想像よりもずっと、活き活きとしていた。
そして、あの頃と変わらず、いや、あの頃よりももっと、音楽に真剣に向き合って、自分達にしかできない、自分達しか立てない唯一無二の居場所を見つけていた。
大倉くんは、数年前よりもずっと逞しく頼りがいのある大人の男の人になっていたけれど、くしゃっとした笑顔も、メンバーと話すときの笑い声も、あの頃のまま、何も変わってなかった。
大好きな、関ジャニ∞の大倉くんだった。
あの日、あなた達のことを諦めてごめんなさい、そう思った。
きっと、この後ろめたさは永遠に抱え続けると思う。
でも、一度離れた自分を否定することも出来ない。それが、当時の自分にとっての最善策だったから。
5人になってからの楽曲を聴いて、ステージに立つ姿を見て、もう一度関ジャニ∞のことを応援したくなった。
けれど、その為には、やっぱりちゃんと自分の目で確かめたい。
幸運にも、一般で京セラドーム公演の金曜日のチケットを手に入れることが出来た。
元丸山担の友人に話したら「金曜日、まだチケットあるよ」と教えてくれた。
彼女は、すばるくんが脱退した時に、すばるくんの居ないツアーで、ステージに立つ丸ちゃんを見て心が折れてしまった。それ以来、関ジャニ∞から完全に離れている。
私のように再び道が交わることもあれば、彼女のように二度と交わらないこともある。推し活は人それぞれ。
そんな彼女が私の背中を押してくれたことを心から嬉しく、ありがたく思った。
コンサート当日。
私は天井席から、色とりどりに光るペンライトの海を見つめていた。
照明が落ちて、映像が流れ始める。どきどきと心臓が跳ねる。
1曲目、ステージに現れた彼らを見て、その声を聴いて、涙が止まらなくなった。
声出しが解禁されて、定番曲のコール&レスポンスが出来た。
振りも全部懐かしくて、未だ自然と身体が動く自分にも驚いたけれど、嬉しかった。
そりゃそうだよね、10年くらい通ってたんだから。そう思えることに、幸せを感じた。
こうしてまた、戻る場所を守り続けてくれてありがとう。
関ジャニ∞を続けてくれてありがとう。
たくさんの感謝と、たくさんの笑い声を、ステージ上に立つ彼らへ惜しみなく贈った。
その夜、帰り道で数年ぶりにファンクラブに入り直した。
ここまで書いておいて、怒られないかなって今めちゃくちゃ不安になってきた。
一途に応援し続けたEighterの皆様、どうか出戻った私を許して頂けると幸いです。
もう一度、彼らを応援するとここに誓います。
今度こそ、一緒に支え合って生きていきたい。5人の幕が閉じるその日まで。