不謹慎ではあるけれど
シングルになって社会復帰するに当たって、決めていたことがあります。
『子どもたちを最優先にすること』
就職先も、できる限り子どもたちに淋しい思いをさせないように、勤務時間帯や休日の条件を妥協せずに選んできました。
数社の転職を経て、現在勤めている会社はファミリー経営の中小企業。
私にはなかなか理解のできない理不尽な方針に、入社してから何度となく驚かされ、不満と不安が常にモヤモヤと溜まっています。
勤務条件も、入社前に聞いていたものとは違うことが多く、異動も重なって、必ずしも定時で退社できなくなりました。
次男はまだ学童保育に預けているので、少しでも残業すると預かり時間ギリギリになり、これまで何度もお迎えが遅れて迷惑をかけてしまい、
“あぁ、こんな生活もうやだなぁ”
と思う毎日。
けれど、自分が選んで決めた会社です。
「本当に自分に合っていて、働き甲斐もあって、雰囲気も良くて、上司も同僚もステキな人ばかりで…
そんな理想の職場なんてあるわけない。」
そう思って、なんとか乗り切っていくつもりでした。
そんな後ろ向きな姿勢で業務に当たるせいか、仕事でのミスが続き、さらに気持ちは沈んでいきました。
そしてある日、退社間際に血相を変えた上司に声をかけられ、かなり大きなミスをしてしまったことを指摘されたのです。
心臓はバクバク、目の前は真っ暗…
どうしてきちんと確認できなかったのか、悔やんでも仕方ないけど、自責の思いに押し潰されてしまいました。
「やってしまったことは仕方ない。対応を検討するから今日はひとまず帰りなさい。」
そう言われ、ぐったりして会社を出ました。
次男を迎えに行き、涙と大きなため息が出そうになったとき、次男が、
「今日ね、学校ですごい楽しいことがあったよ!」
と嬉しそうに話し出したので、ぐっとこらえて話の続きを聞いていました。
家に帰ると、長男は、
「めっちゃ疲れたわ〜。学校めんどい。」
と、ぼやいています。
思わず私は、
「お母さんも今日すごい疲れたよ。しかもヤバいミスしちゃって…もうどうしよう。」
と愚痴をこぼしました。
すると長男が、
「おぉ!クビになるかも!?良かったじゃん!」
次男も続いて、
「そうだよ〜、土下座して『すみません!クビにしてください』って言えばいいじゃん。」
えっ…
あまりの私の頭の中の状況とのギャップに、しばらくボーッとしてしまいましたが、子どもたちはケラケラ笑っています。
「お母さん、今の会社つらいんでしょ?もっといいとこ探しなよ。」
と、笑いながら言ってくれる子どもたち。
“そっかぁ、子どもたちに淋しい思いをさせないって決めてたけど、自分が生き生きと働く姿を見せることができている方が子どもたちにとっては大切なことなのかもしれないな”
もちろん、私がミスをしたことは許されることではないし、子どもたちも特に深くは考えずに発した言葉だったかもしれません。
けれど、私にとっては、落ち込む母親を元気にしたいという、子どもたちなりのとても優しい言葉に思えたのです。
これまで子どもに対しては、苦手な運動の習い事を
「嫌でも、とにかくもう少し続けなさい」
と言ったりしてきましたが、気持ちが乗らないことはやっぱり続かない。
仕事も、「子どものためを思って」
と言い訳をして、限られた選択肢の中から世間的に安定した先を選ぶのではなく、本当に自分が好きなことを見つけて、それをライフワークにする勇気を持ちたいと思います。
幸い、私のミスは、その後の上層部の確認の結果、大事には至らずに済みました。
日々の業務には前よりも一層気をつけるようになり、今は自分の未来について前向きに考えて過ごしています。