【第3回 リハビリスポーツプログラム実施編】スポーツを活用した 地域リハビリテーション・システム 構築モデル事業
こんにちわ!
鮎川地域共生コミュニティ研究所の鮎川です。
当研究所は「だれもがコミュニティにアクセスできる地域社会をつくる」をVISIONとして、多世代、障害のあるなし関係なく地域住民が緩やかに繋がり合い、日々の暮らしの中で困りごとがあったり、あたらしいことにチャレンジしようと思ったとき、それぞれが自分の出来ることで協力し、支え合えるコミュニティを形成し、地域共生社会の実現をすることをMISSIONとしています。
今回は第3回となりました「スポーツを活用した 地域リハビリテーション・システム構築モデル事業」のレポートです。
この事業は「日本リハビリテーションスポーツ学会(以下、JARS)」様との共催事業で、2020年8月~来年2021年3月まで実施。
【年間スケジュール】
8月当事業概略説明及び意見交換会
9月 アセスメント・初回評価
10月 スポーツプログラム担当者による指導
11月 スポーツプログラム担当者による指導
12月 スポーツプログラム担当者による指導
1月 スポーツプログラム担当者による指導
2月 スポーツプログラム担当者による指導
3月 アセスメント・最終評価、振返り
事業の目的は、医学的根拠と評価ができる「リハビリテーションスポーツ(以下、リハビリスポーツ)」を開発し、病院・居宅事業所・包括支援センター・社協等との地域連携を図る「地域リハビリシステム」を構築することにより、医療、介護の制度の枠にとらわれず癌や疾病、フレイル、サルコペニア、要支援・要介護者、障害者、難病患者など、その種類や程度に関わらず、「スポーツが持つ特性と力」を利用し、心身機能や運動能力の向上と体力の増進を図り、自己実現と社会参加ができる地域社会を創造する事であります。
※下記、第1回、2回の記事
今回、JARS様と共催事業に至った経緯は「地域で直面した課題」が背景にあります。
私は地域住民の皆様と地元埼玉県所沢市で2017年2月から地域共生社会の実現を目的とした「ユニバーサルスポーツ・コミュニティ事業」を毎月1回実施していましたが、2年目から参加者が脳梗塞、対麻痺、ギランバレー症候群で入院中の方や、70代の女性で脳梗塞発症後に要介護4になりケアマネージャーからデイサービスやデイケアを勧められたが「あんなところ行きたくない」と介護サービスを拒否されてる方など参加されるようになり大変喜んでいただけた。今後もぜひ継続して参加して頂きたいと考えたとき、市民主体のコミュニティでは怪我や急変など安全面に不安があると考え、医療的背景があるリハビリスポーツの必要性を考えるようになりました。
そういった経緯から私が2017年から入会したJARS伊佐地会長に御指導いただき、その事がキッカケでリハビリスポーツの活動実績のあるJARS様に共催事業として御協力頂き、事業を実施できることとなりました。
下記、JARS様のリハビリスポーツの定義です。
リハビリテーションスポーツとは、疾病または障害のある人々がその種類や程度にかかわらず、スポーツが持つ特性と力を利用し、心身機能や運動能力の向上と体力の増進を図りつつ、自己実現と社会参加を最終目的として、医療、教育、 介護、社会活動などで行われるスポーツのすべてを言う。名は活動を表すかのごとく、我々が目指すべき方向を示す。
上記定義にある「スポーツの持つ特性」に関してはJARS伊佐地会長から下記のように説明して頂きました。
・だれでも小学校などで1度はやったことがあり馴染みがある。
・ルールを理解するために頭を使い、記録や点数など数字が出るので分かりやすく、それをより良くしようと目標を立て頑張るようになる
・自発的に出来る努力を繰り返しやろうとすることで自然に体力がつき、時には競い合っていつも以上の力を発揮し自己の限界が広がる
・人と一緒にやるのでコミュニケーションがとれ、人との交流が楽しくなり精神的にも社会的にも多くの効果をもたらし他者との関わり方や社会性、創造性などが助長されることにより医学的リハビリと社会的リハビリ双方への有用性があると考えられる。
こういったスポーツの特性を活かし、スポーツ本来の定義である「一定のルールに則って勝敗を競ったり、楽しみを求めたりする身体活動」を踏まえたリハビリスポーツプログラムが実施されました。
※日本リハビリテーションスポーツ学会
http://jars.kenkyuukai.jp/about/
今回の講師は埼玉県総合リハビリテーションセンター健康増進担当 硴田智也先生。
医学管理担当は、志村大宮病院 副院長 兼 茨城北西総合リハビリテーションセンター長 大仲功一先生
そして、国立障害者リハビリテーションセンター学院 梅崎多美教官が学院の学生3名様の研修を兼ねて参加して頂いてます。学生の皆様には研修の一環として来年2021年1月、2月のプログラムを担当して頂きます。
梅崎多美教官
学生の皆様
そして、2020東京パラリンピックを目指すパラバドミントンの小倉理恵選手が前回から、スポーツの多様なチカラを学びたいと参加されてます。
それでは当日のレポートをスタート。
まずは、参加者到着後バイタルチェックから
その後、硴田先生から埼玉県総合リハビリテーションセンターの施設紹介がありました。
それでは下記、今回のプログラム内容です。
①座って行う10ミニッツエクササイズ
②会議室内を往復
③カレーライスをつくろう
④紅白玉投げ(リバウンドネット使用)
⑤ボール相撲
⑥バドミントン
合わせて硴田先生が各プログラムごとの解説をしてくださいましたので記載します。
①座って行う10ミニッツエクササイズ(10分間運動)
1)つま先タップ(足関節の底背屈)
・足を床に着けたまま、つま先を上げ、その後つま先を床に繰り返し打ち付ける
2)貧乏ゆすり(ヒールシェイク:足関節の底背屈、膝、股関節の屈曲伸展)
・座ったままつま先立ちになり、踵を上下させる。
3)ヒールステップ(1)と2)を連続で行う:下腿部の筋運動)
・足を床につけた状態からつま先を上げたり踵を上げたりする。
4)膝の曲げ伸ばし(膝の伸展屈曲)
・座ったまま、片脚の膝を伸ばし、その後膝を曲げ、足を床につけることを繰り返す。
5)足踏み(フットスタンプ:股関節の伸展屈曲、腹筋)
・座った姿勢で股関節の動き(腿上げのような動き)を意識しながら足踏みを行う。
地団駄を踏むような動き。
6)お辞儀(体幹の伸展屈曲:腹筋背筋、頸部周辺の筋)
・座った姿勢のまま、息を吐きながら上半身を太腿につくまで倒し、その後息を吸いなが
ら椅子の背もたれまで戻す。動きに慣れてきたら首の曲げ伸ばしも同時に行う。
7)肩甲骨引き(弓矢引きの動き)
・片手を前方に伸ばした状態から、肩甲骨を背骨に引き付けながら体幹を捻って元に戻す。
8)体幹の回旋(身体捻り)
・腕組みをして左右に大きく体幹の捻転を行う。捻転を行う際に首も同じ方向に向ける。
②会議室内を往復 移動能力(歩容、車椅子の駆動性の観察)
③カレーライスをつくろう(移動能力、バランス) これは基本動作のうち、「歩く」、「走る(車いすなど)」「(カードを)つかむ」という動作をベースにして、リレー形式で集団で実施したものです。個人で行うことも可能ですが、集団で行うことで一体感を感じることができます。また移動能力の高い低いだけではなく、「運」という要素が加わり、集団で行うことでより一体感が生まれる。 【概要】
リレー型式でカレーライスの具材カードを6
種類集めます。早く全種類の具材カードを集めた
組の勝ちです。
【ルール】
・折り返し地点の机にある、裏返しの具材カード
の中から1枚を選び、自分のチームに持ち帰る。
・カードを取るときに具材カードを見てはいけな
い。
・持ち帰ったカードをホワイトボード係の職員に
渡したら、次の走者にタッチする。
・全種類がそろうまで往復する。
・6種類の材料全てを早くそろえた組の勝ち。
④紅白玉投げ(リバウンドネット使用)投動作(上肢能力、バランス、追視・追認)。これは「投げる」動作に加え、「つかむ(取る)」動作が加わったものです。空中を移動するものを「自分の目で見て」、「手でつかむ」、「身体全体で受け止める」といった空間認知力の向上に資するものです。
⑤ボール相撲(上肢能力、バランス、追視・追認)
この種目は基本動作のうち「投げる」という動作を発展させたものです。
「投げる」という動作は上肢能力だけではなく、立位で行う場合、重心移動を伴うためバランス能力の向上に役に立ちます。座位で行う場合も座位バランスなどの向上が見込めます。また、的をつくることで正確性が必要となります。道具に紅白球を使用するのも、安全面の考慮と強く投げられない人が、的のボールが自陣方向に転がらないようにブロックをつくる役割を持つことができます。身体能力の高い人、低い人が一緒に行える種目と考えています。 【概要】
紅白の玉を投げ合い、円の中心にあるラグビーボールを押し出し
て勝敗を競います。 【ルール】
・土俵に見立てた円の外側にさらに円を描き、その縁に紅・白の選
手が同人数並ぶ。
・一人10個を持ち玉として、「はっけよい、のこった!」の合図と
ともに、土俵の中心にあるラグビーボールめがけて玉を投げる。
・ラグビーボールを相手側の円から出した組が勝ち。
・30秒経過しても決着がつかない場合は、玉が止まっている位置
で判断する。紅組寄りの半円内であれば紅組の負け、白組寄りの
半円内であれば白組の負けとなる。
・2回戦行う。
⑥バドミントン 打動作(上肢巧緻性) この種目は「打つ」といった打動作がベースとなっています。
先述の種目にある「空間認知」を行いながら、空中を自分に向かって飛んでくるものを道具を使って「打つ」という動作を行うものです。
スポーツとして楽しむのも一つですが、自分の身を守る要素も入っています。また、サービス動作を身に着けることで、「他人にやってもらう」ものから、自分から発信する(ゲームを始める)ことに進むこともできると考えています。
最後に行った「サービスでかごに入れる」という動作も、「運試し」の面と、「狙ったところに物を運ぶ」ということまで発展できるものと思います(パラ代表候補の方もサーブを狙ったところに出せるようになるという効果もあると思われます)
バドサーブチャレンジ (狙ったところに物を運ぶ)
最後に小倉選手も挑戦!
以上、プログラム内容でした。
終了後、皆さんで振り返り。 お1人ずつ順番に感想を共有して頂きました。
振り返りとアンケートでは参加者も皆様から下記のような感想を頂きました。
【感想】
(参加者の皆様)
●今日はありがとうございます。今日最後の振り返りの時、かんどうして、いえなかったことがあったので、白状すると、私には、左反則無視があり、日頃移動訓練かねて、車椅子で支援活動にでているのですが、はっきりいって、左側の、動体視力視力が、落ちているのは、自分で把握してたのですが!シャトルを追えないとおもっていたのですが、追えたことにびっくり、かんどうしてました。左反則無視は、治癒できなくても、軽減できるとはしってはいたけど、まさか。5年でこのひがくるとは、心が動けば?体が、動くではないけど、体が動けば、心が動くと、思ってる私には、条件は揃ったとと思うので。次回からがたのしみになりました。
●それぞれの特性を踏まえた上で障害特性の有無を超えて楽しめるリハビリスポーツ。まだまだ可能性を感じ、次回が楽しみになりました。皆様ありがとうございました
●麻痺側の右手もバランスをとるうえで大事だと改めて感じました。なにより仲間たちとゲームしながら楽しくリハビリ出来ることがうれしいです。
●とても楽しかったです。心も動き身体も動きました。ありがとうございました。
●とても楽しくリハビリができました。
(学生の皆様)
●楽しく、かつ非常に勉強させて頂きました。こういう目的でとても楽しめる、みんなで楽しめるリハビリがあるのかという事に気付きました。「人を楽しませるリハビリテーションができるよう次に活かしたいと思います」
●自分自身も対象の方々と一緒に楽しむことができました。障害に合わせたアプローチの仕方をまだまだ知らないことを実感したのと、先生からいくつか学ぶことができました。ありがとうございました。
最後に
今回初のプログラム実施でした。全プログラムを通して本当に驚いたのはリハビリとは思えないほど、参加者の皆様が楽しそうで最後まで笑いの絶えない時間を過ごされていたことです。リハビリスポーツは個別リハとは違い、集団でスポーツを行い、他者と楽しみながら身体活動が実施できることで、当事者の心が前向きに動き、そのことで結果また、身体が動いてくる。医療を卒業し障害を抱えながら社会生活を送る中では、こういった集団で楽しみながら身体活動を行うことは非常に重要だと改めて感じました。また、参加者様の中には行動変容が起きた方々がいらっしゃいます。散歩を始められたり、毎日血圧測定を開始されたり、麻痺側を意識して使おうとされていたり、自己で日常できるリハビリを始められたり。こういった事は主催してる側としては本当に嬉しく凄く励みになりました。
お忙しい中御参加いただきましたみなさま、また御協力頂きました関係者の皆様に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。
鮎川地域共生コミュニティ研究所 鮎川雄一
【画像協力】木村理氏