発電所の話でよく登場する”kW”と”kWh”という2つの単位は、分かりづらいけど別のもの
ざっくり要約
kW(キロワット):全力を出したときの発電能力
kWh(キロワットアワー):実際に発電した量
自動車で例えると、kWはカタログ上の最高速度、kWhは実際に走った距離、みたいな感じです。
なので、ニュースなどで”kW”しか登場しない場合は、すこし気をつけて考える必要があります。
発電能力(kW)が同じくらいの発電所でも、実際に発電する電気の量(kWh)が違う
比べられがちな、原子力発電と太陽光発電で考えてみます。
原子力発電所は、1基でだいたい100万kWくらいの発電能力です。
太陽光発電も、パネルをたくさん置けば100万kWくらいの発電能力にすることができます。
しかし、原子力発電所と太陽光発電所は実際に作れる電気の量が違います。
なぜでしょうか?
自動車で例えてみよう
発電能力(kW)と実際に作る電気の量(kWh)を、自動車に置き換えて考えてみましょう。
kWは、車の最高速度 (km/h)と言い換えられます。
車のエンジンや空力性能など、設計の段階である程度決まる能力です。
いわゆるカタログスペックですので、常に発揮されるわけではありません。
対して、kWhは、自動車が実際に走った距離 (km)と言い換えられます。
最高速度が早い車なら、長い距離を走るのも簡単です。
しかし、実際に走る場合は、道が曲がっていたり、ドライバーが休憩したりします。
なので、最高速度が200km/hの車が5時間走ったとしても、1000kmを走ることはできません。
(そもそも法定速度があるじゃん、という話はいったん置いておいてください)
この例えと同じように、発電所はいろいろな条件で出力が制限され、常に全力発電ができるわけではないわけです。
どのくらい実力を出せるかは、発電所の種類によって異なる
さて、”いろいろな条件”と書きましたが、その条件は発電所によって異なります。
原子力発電は、発電を開始したら安定して高い出力を出し続けられます。
しかし、1年に1回程度、定期点検を行う必要があるためシャットダウンします。
また、設備故障が見つかった場合や、熱波で冷却水温度が高くなってしまった場合など、突発的に停止する場合もあります。
おおざっぱには、原子力発電所が実際に発電できている割合は70~80%程度です。
(国や時期によって変わるので、だいたいの数字だと思ってください)
太陽光発電は、当然ながら、太陽が出ている間だけ発電できます。
つまり、夜間と、悪天候と、朝夕などの太陽光が弱い時間帯は、発電量が減少またはゼロになります。
こちらもおおざっぱに、太陽光発電所が実際に発電できている割合は10~15%程度です。
数字は、以下、電力中央研究所というところの概算から引用しました。
(というか、このnoteより引用先を読んだほうがためになります)
つまり、発電容量だけで考えると、実際に作れる電気の量を見間違えてしまう
以上の話を、ものすご~~~く単純化して、電気の量を比べてみます。
100万kWの原子力発電所で1時間発電→だいたい80万kWhの電気
100万kWの太陽光発電所で1時間発電→だいたい15万kWhの電気
規模が同じでも実際にできる電気の量が違う、ということが起こります。
”発電容量”だけを比べるメディアの気持ちもわかる
「kWがわかりにくいなら、メディアはkWhの話をしたらいいんじゃない?」と、疑問が浮かびます。
おそらくですが、メディアの側もkWとkWhの違いはわかっているんだけども、「太陽光は効率が13%程度で…」みたいな話をすると「ネガキャンやめろ!」と怒られる、という背景があるんじゃないかなと思います。
作った電気の量は”実績値”なので、予報的に話すのにそぐわない、というのもあるかもしれません。困ったね。
このnoteよりも正確な記事
さっき引用で貼った電力中央研究所の記事が、わかりやすく正確です。
やる気がある方はこちらをどうぞ。