原子力の補助金のまとめ
地域に原子力発電所を作ると、国からいろいろお金がもらえます。
でも、それって詳しくはどういう枠組みでどういうお金なの?というのがわからなかったので、ググって出てくる範囲で調べてみました。
ざっくり言えば、
主に電源三法と呼ばれる法律に基づいて
原子力発電所等が設置されている自治体へ
税金からいくらかのお金が払われており
枠組みや補助対象ごとにわかりにくい名前がついている
という感じです。
こっから先に5000字くらいあるので、「大体わかったわ!」という方はお疲れ様でした。
読む気がある人は.…ありがとう!
ただ、ほぼ書き上げてから、図解入りの経産省まとめがあることに気づいたので、省庁資料が読める人はこっちを読んでください。
それではどうぞ。
電源立地地域対策交付金
ざっくりいうと
発電所を立地させてくれている地域への補助金
公共設備の整備、福祉促進、農水産業の支援など、幅広に使える
発電所は必要だけど近所に欲しくはない
地域に発電所があったとしても、作られた電気は送電網を通って各地に運ばれます。
せっかく生産設備があっても、特産品ということでもなく、地元への貢献がありません。
なので、「みんなが使う発電所を、なぜここに置かなくてはいけないのか?」という不満が生じてしまいます。
そうした不満感を削減するために、発電所が立地する地域への補助金が作られます。
…ということだと、思います。
公開資料から調べて、たぶんこうだろうなと書いていますが、関係者でもなんでもないので、誤認があればすみません。以下同です。
発電所の固定資産税
ざっくりいうと
発電所は巨大な固定資産です
したがい、立地自治体は固定資産税がたくさん手に入ります
ということ。
(で合ってるかな…?)
原子力産業基盤強化事業補助金
ざっくりいうと
原子力発電所の部品を作る企業向けの補助金がある
原子力サプライチェーンの維持が目的
技術開発や輸出の取り組みが支援対象っぽい
概要
原子力関連サプライヤーとは?
原子力発電所などで使われる、部品を作る企業です。
原子力発電所は、電力会社が運営していますが、他にも多くの企業が関わっています。
発電所の作られる過程をざっくりいうと……
事業者が「作るぜ!」と決める(かつ、国がそれを認める)
プラントメーカーが設計する
サプライヤーが部品を作る
建設会社が組み立てる
完成したら事業者が受け取って運転開始
という感じです。
必要な部品を作るのがサプライヤー企業ですね。
なぜサプライヤーを支援するのか?
わざわざサプライヤー向けの補助金を設定しているのは、”サプライヤー企業の衰退の防ぐため”です。
日本の原子力発電所は国産化率90%と言われています。
(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/023_05_00.pdf)
つまり、原子力産業の厳しい品質要求をクリアできるような、製造能力の高い企業が数多く国内に存在しています。
しかし、原子力発電所の建設は1980年代がピークで、以降の需要は減少していました。
さらに、2011年以降はほとんどの原子力発電所が停止したため、運転中の発電所の部品交換なども減りました。
結果として、サプライヤーはせっかく投資した製造能力を持て余してしまっていると言われています。
そういう状況が続くと、技術/設備/人材が失われてしまいます。
そこで、サプライヤーに向けて、R&Dや部品輸出のための補助金を出し、持て余している能力を使う機会を作り、技術等の維持/育成を補助しているんですね。
(具体的な事例は書かれていませんが、エネ庁の資料を見るにそういうことでしょう)
サプライヤーの維持はなぜ必要か?
国内にサプライヤーがいると、原子力産業の安定性が高まります。
仮に国外の企業から部品を買っている場合、情勢の悪化や為替の変動によって、原子力施設の部品が買えない/買いにくいという状況が起こり得ます。
特に、原子力発電所の安全性に関わるような重要な部品は、安定して手に入れられないと、いざというときのリスクが高まります。コワイ!!
もちろん、これからどれだけ原子力を活用するんだ、という議論を踏まえる必要があります。
現在のエネルギー基本計画では、電源の2割程度を原子力とする予定ですので、将来に向けてサプライヤーを維持するほうが安心ですね。
まとめ(再掲)
原子力発電所の部品を作る企業向けの補助金がある
原子力サプライチェーンの維持が目的
原子力を使う以上はサプライヤーを助けたほうが安心
技術開発や輸出の取り組みが支援対象っぽい
原子力発電施設等周辺地域企業立地支援事業費補助金
ざっくりいうと
原子力発電所がある地域の企業への補助金
地元の雇用や産業を改善するための支援
電気代がお安くなる
企業は電気代が安くて嬉しい、地元は雇用が増えて嬉しい
概要
原子力発電所と地域振興
原子力発電所が立地する、というのは非常に大きなイベントです。
原子力関連産業が立ち上がり、多くの作業員が立地地域にやってきます。
つまり、雇用が創出され、お金の流れが生まれます。
お金というと聞こえが悪いようにも思いますが、地域に大きな産業がある、というのは大きなメリットです。
地域の産業が豊かだと、地域に流れるお金が増えます。
増えたお金で、道路がきれいになったり、きれいな公共施設ができたり、福祉施策が手厚くなったりします。
きれいで福祉のよい地域には、多くの人が集まります。Happy…
というわけで、地域企業を応援
原子力発電所があると、大抵の場合、その内部では地元雇用や地元企業の活用が推奨されます。
(内部のことはよく知りませんが、風の噂で聞く限りはそのはずです)
この補助金では、8年という長期にわたって、固定支出である電気代が割り引かれます。
なので、企業にとっては”原子力発電所の立地地域に来るとお得!”ということになり、地元にとっては”新しい企業がきて雇用が生まれる!”となり、そして原子力事業者も新たなパートナーに出会える可能性があります。
三方よしですね。
まとめ(再掲)
原子力発電所がある地域の企業への補助金
地元の雇用や産業を改善するための支援
電気代がお安くなる
企業は電気代が安くて嬉しい、地元は雇用が増えて嬉しい
原子力発電施設等緊急時安全対策交付金
ざっくりいうと
原子力発電所のある地域の避難の準備を支援
国から自治体へ補助金を提供
必要な機材の準備や、道路をきれいにするのに使われる
概要
原子力発電所の周囲では避難の準備が必要
たまにニュースで「◯◯原子力発電所の避難計画が…」とか「避難の実効性が…」という話題を見かけるかと思います。見かけますよね?
原子力発電所は、事故を起こしたときに放射性物質を撒き散らす可能性がある、という特殊な性質があります。
ですので、事故があった場合に、必要な範囲の人が安全に避難できるよう準備をしておくことが求められます。
とはいえ、避難は大変です。
たとえば、避難が必要だと伝わっていない、避難経路が決まっていない、避難する場所がない……など。
特に避難に必要な建物や道路などは、事前に作っておく必要があります。
当然、お金も時間もかかります。
避難の準備を支援
そこで、避難の準備のために補助金が出ています。
引用元で挙げられていた項目を見てみると、
事故時に使う機材や車両を用意する
事故時の対応を訓練/周知する
事故時に使う建物をつくる
道路をきれいに/広くする
などが行われているようです。
補助金は、国から、原子力発電所を持っている各自治体へ渡ります。
なので、国が「原子力やるぞ~」という以上は、自治体が必要とする支援を行いますよ、という枠組みですね。
個人的には、道路が広くなったりするので、日常的にもメリットがあるのではないかな~と思います。どうなんだろう。
以下のリンクから、実際に補助金を使った県、概要、金額が見られます。
まとめ(再掲)
原子力発電所のある地域の避難の準備を支援
国から自治体へ補助金を提供
必要な機材の準備や、道路をきれいにするのに使われる
財源の話:電源三法
電源関係の補助金は、電源三法と呼ばれる3つの法律によって規定されています。
ざっくりいえば、電力事業者から集めた税金を、各自治体へ交付しているようです。多分。
大まかな流れは以下のとおり。
電源開発促進税法:電力事業者から税金を集める
特別会計に関する法律:発電施設向けに予算を割り当てる
発電用施設周辺地域整備法:様々な交付金として交付する
(補助金などが全部ここから出ているかどうかは不勉強でわかりません)
詳しくは以下を参照ください。
福井県の以下の図がわかりやすいです。
2015年ですが、実績は以下から見られます。
どうもお疲れさまでした。
より正確で、図解付きの資料は、以下にまとまっています。(再掲)
ご覧いただきありがとうございます! 知りたい内容などあればご連絡くださいね。