エネルギー基本計画の超ざっくりした説明
このnoteのねらい
最近(?)ニュースで見かける”エネルギー基本計画”というものが、何をするものなのかを、超ざっくりわかるようになろう!
エネルギー基本計画とは?
何を決めているのか?
安定で、環境に優しくて、経済的なエネルギー需給を達成するための、国の方針を決めています。
エネルギー政策基本法という法律で”ちゃんと方針決めろよ”と書かれているので、国の責務です。
ちなみに、”国民は無駄遣いをやめてね!”とも書かれています。
計画自体はエネルギー全体の話なのですが、おおむね、電気をどうやって供給するかと考えて問題ないかと思います。
誰が決めているのか?
経済産業省が主催する総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会という、専門家を集めた委員会で議論されています。
分科会には、大学、企業、自治体、シンクタンクなど、さまざまな分野の専門家が委員として参加します。
その後、パブリックコメントというだれでも意見を言っていい期間を経て、最後に内閣で閣議決定されたら完成です。
つまり
専門家が議論して
みんなでコメントして
閣議決定して完成
です。
分科会の様子はYouTubeで公開されています。
(長いので、何が議論されているか気になる場合は、YouTubeをAIに読ませて概要を読むと良いです。)
何を目指しているのか?
大方針は上で挙げたとおり、安定で環境に優しくて経済的なエネルギー政策の達成です。
これは、以下の図のとおり”3E+S”という考え方で表されています。
何を考える必要があるのか
どのくらいのエネルギーが必要か?
エネルギーの計画では、”そもそもどのくらいのエネルギーを使うのか?”ということが重要です。
というのも、エネルギーインフラ(発電所の数、燃料の購入/貯蔵量など)は時間をかけて作っていくものなので、事前にある程度予想しておかないと、過不足が発生したときの巻き返しがすごく大変です。
たとえば、発電所が多すぎる、少なすぎるのは困ります。
発電所が少なすぎて、発電所が全力稼働しても電気が足りない!というのはイメージしやすいですね。もちろんダメです。(2011年の計画停電みたいなことになります)
逆に、発電所が多すぎて余ってしまうと、いわゆる座礁資産として、金を産まない施設になり、電力会社の経営を悪化させます。(契約している電力会社が潰れてしまった、という人も、もしかしたらいるかもしれません)
そのほか、電源のバランスが悪くなる(増やす必要のない火力発電を増やしてしまう)とか、不要な補助金を渡してしまうとか、税金を無駄にする方向に進んでしまう可能性があります。
とはいえ、必要なエネルギーの量を予想する、というのは難しいです。
最近はデータセンターが増えたり生成AIが台頭したりで、電力需要が増える要因があります。
同時に、人口減少や省エネの進展により、電力需要が減る要因もあります。
なので、分科会の議論でも「予測が難しいよ~!」という声が折々で聞こえてきます。困ったね!
使えるエネルギー源には何があるのか?
さて、どのくらいのエネルギーが必要なのかが予想できたら、次は何を使って作るか?ということを考えます。
使えるのは、火力、原子力、水力、太陽光、風力、その他再エネ、そして水素やアンモニアなど……いろいろあります。が、おおよそ、太字の5つを考えておけばよいかと思います。
再エネをできる限り増やす、というのが基本路線になります。
最近は再エネもお安くなってきており、条件によっては最安の電源になることもあります。
また、化石燃料が高くなったので、バカ高い化石燃料を買い続けるよりも、今がんばって再エネを増やしたほうが長期的にハッピーになれる可能性があります。
しかし、2030年までに目指していた再エネ導入量(全体の36~38%)に届かない見込みであり、さらなる導入強化が必要です。
原子力発電は、再エネが足りない分をなるべくカバーさせたいところです。うまく使うことができれば、多量の電気を、低炭素・小スペース・長期間安定に供給することができます。
もちろん、安全確保や廃棄物処理の課題がありますので、際限なく増やすのもリスクがあります。現状では全体の20~22%の導入が目指されています。
ついでに、最近ニュースになったように、規制当局に運転を認められないリスクがあることや、2011年に浜岡原発に停止命令が出されたように、政治的なリスクがあります。
火力発電は、なるべく減らすものの、再エネと原子力で足りない分は使わなければなりません。足りないからいいや、とはならないのが電力です。
使わなければならない分は、せめてなるべく低炭素にできるように、火力発電所を高効率化したり、水素やアンモニアを混ぜて燃やすことが検討されています。
火力発電はCO2排出が大きいので、減らすに越したことはないですが、正直、再エネが増えきっておらず、原子力も止まっているなかでは、使わざるを得ないのが現状と思います。
そういえば、たまに環境系NGOが火力発電所の新設に反対していますが、その結果として老朽化力が延命されることがあるんじゃないか?と疑問に感じています。(やるなら”老朽火力の早期退出を!”じゃないのかなと思いますが.…..知らないだけで両方やっているのかな)
電源ごとの暫定的な評価は、次の資料に結構まとまっています。
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2024/060/060_004.pdf
参考資料
第6次エネルギー基本計画:https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/
総合資源エネルギー調査会:https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/