「放射線によるヒトへの影響ってどのくらいわかっているの?」というあたりのざっくりした解説
今更な話題かもしれませんが、放射線の人体影響は”わからな具合がわかりにくい”ので、すこし復習的な内容をまとめました。
放射線の影響のわかり具合
放射線被ばくについて、わかっていることがいくつかあります。
(カッコ内はだいたいのめやす)
だいたいわかっている、放射線の”悪い”影響
あまりにも大量に当たると死ぬ。(5Gy~)
死ぬほどではないけど多量に当たると、出血や脱毛の症状が起きる。(
内臓がダメージを受けない程度の量でも、がんのリスクが高くなる。(100mGy~)
だいたいわかっている、放射線の”無視できる程度の”影響
CTスキャンは放射線量が結構多い(~30mGy:診察によるメリットのほうが大きい)
普通に生活していても、放射線をすこし受けている(世界平均で年間2.4mGy)
放射線には、”一度にたくさん当たる”より、”少しずつ長期間当たる”ほうが安全
ちなみに、放射線被ばくと比べるなら、喫煙や運動不足のほうが悪影響が大きい(喫煙は1000mSv以上の被ばくに相当するという研究もある)
わかりきっていない放射線の影響
以上のように、放射線の影響はある程度までわかっています。
大量に浴びたら体に悪いことは、疑いの余地なしです。
しかし、わずかな量の被ばくは、わかるのが難しいです。
たとえば、”喫煙が放射線よりも悪そう”ということは、喫煙者が放射線を浴びても、喫煙のほうが悪さをしそう、ということでもあります。
言い方を変えると、原子力発電所で働いて被ばくした人が肺ガンになったとして、その人が喫煙者であったなら、それは放射線よりもタバコのせいというほうがありえそう、ということです。
タバコ以外にも、食生活、ストレス、裕福度など、さまざまな要因によって健康状態は変わります。
なので、これらと大きく変わらない程度の被ばくは、本当に悪いのか、悪いとしたらどの程度悪いのか、ということがはっきりしません。
とはいえ、大量に浴びたら体に悪いことはわかっているんだから、すこしの放射線被ばくであってもガンのリスクって増加するかもしれないよね、という方針で、なるべく被ばく線量を小さくするように対策が取られます。
この”なるべく小さく”というのが、2011年頃に話題になった20mSvとか1mSvといった基準値の根拠であっただろうと思います。
が、そのあたりはややこしそうなので触れずにいきましょう。
放射線被ばくのことって、どうやってわかったの?
ちなみに、放射線被ばくのデータはどこから集まるんでしょうか。
たとえば…
広島、長崎の原爆による被爆
核実験時の被爆
原子力施設での事故時の被ばく
これらは、不幸にも放射線がコントロールできなくなり、多量の被ばくを受けたデータです。
それから…
原子力施設で働いている人の被ばく
医療関係者の被ばく
動物実験
こちらは、きちんと放射線がコントロールされた状態で、それなりの量の被ばくを受けたデータです。
福島の事故後のような状況では、こういうデータを頼りたいですが、上で挙げた通りに、他の要因に影響を受けるデータでもあります。ムズカシイ
こうしたデータを長期にわたって分析することで、
どれくらい浴びた人がどれくらい病気になるか
放射線を浴びた細胞がどう反応するか
放射線の影響は遺伝するか(※しません)
などのことが調べられてきました。
おおよその方向性はわかっていて、それでもわからないことが残っている、というのは上で書いた通り。
で、福島の現状はどうかと言えば
少なくとも、放射線/放射能を問題にして大騒ぎするフェーズは過ぎました。
それでも、まだ帰還困難区域があったり、生活を失った人がいる状況です。
そうした意味で、今後よりよい地域になっていくことを応援する意味で、継続した関心と支援が必要だな~と思うので、こういうnoteを書いたわけでした。
(元気に福島ヘイトをする人を見かけたからでもあります)