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狂犬病予防法(昭和25年成立時)/ 第三章 狂犬病発生時の措置(公示及びけい留命令等)第十条

今のではなく、昭和25年に出来た時の狂犬病予防法を読み続けています。

前々条で届出、前条で現場の獣医師または所有者が隔離、と書かれていました。
ここでは、行政が狂犬病が発生した地域にその旨を公示し、口輪をかけたり係留することを命ずる。
ここも難しそうなことはありません。 


(※條を条に直したり、当時の文字と違う書き方をしています)

第三章 狂犬病発生時の措置
(公示及びけい留命令等)
第十条 都道府県知事は、狂犬病(狂犬病の疑似症を含む。以下この章から第五章まで同じ。)が発生したと認めたときは、直ちに、その旨を公示し、その発生地を中心とした半径五キロメートル以内における区域及び期間を定めて、その区域内のすべての犬に口輪をかけ、又はこれをけい留することを命じなければならない。

国立公文書館デジタルアーカイブ 狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号


概要

(届出義務)第八条にて狂犬病が発生したら都道府県知事に報告されることになっています。その報告を受けた都道府県知事は、
公示(広く一般にしらせる)
・発生地を中心とした半径5キロ以内に区域・期間を定めて、その区域内の全ての犬に口輪をかけるか係留することを命じる

口輪

世の中に知られるようになったのは明治に入ってから。しかも狂犬病の感染拡大があったことで「西洋の口輪というものを使ったらどうにかなるだろう」と軽く考え対策が遅れ、多くの人が亡くなったのが日本における口輪デビューのようです。
このことからも明治より前の日本には「犬と暮らす」という文化がなかったことがうかがえます。

そのことが以下のブログに書かれています。
対狂犬病口輪 明治26年 @ 帝國ノ犬達
既に「パスツールの開発した狂犬病豫防注射」があったにも関わらず「口輪でどうにか」と考えたのですがどうにもならず、結局予防注射を使うことになります。使うにあたり常識的な準備もできずに使い始めますが、どうにか鎮圧することが出来たのは不幸中の幸いです。

現在との近い

字体が旧字が今の字かを除くと、「その発生地を中心とした半径五キロメートル以内における」がなくなっています。

5キロってどれくらいだろうと考えてみました。
一般的に人間が一時間歩いて4キロと言われていますので、一時間早歩きすれば歩けそうな距離です。
建物が少ない地域や海岸線であれば、健康な犬であれば走ればすぐに越えてしまいそうな距離ですが、狂犬病を感染させる可能性が大きい状態の犬は速く走り続けることは出来ないと思います。せいぜい5キロ、私もそのくらいだとおもいます。
また検疫所などで発生した場合、5キロも必要ないのではないかと考えてしまいます。

ただし、狂犬病の犬が10キロ以上移動した記録があることは記憶にあります。海外の記録だったと記憶しているので日本では起こらないのではと私は考えていますが、日本でもとても広い平地があり、そこに人がほとんど暮らしていないような場所があれば有り得ると思います。

とにかく、発生状況等を精査して区域を定めることが出来るよう、削除したと想像しています。

前の第九条、次の第十一条では当時の「犬」が今は「犬等」になっていますが、この第十条は今でも「犬」です。狂犬病予防法施行令第一条で(犬以外の動物は)「猫、あらいぐま、きつね及びスカンク」とされています。
アジア圏において人間に狂犬病を感染させる動物のほとんどが犬であることから、狂犬病予防注射も犬だけになっているようです。なので、他の動物に狂犬病が発生しても犬に口輪や係留を求めても、他の動物には求めないのかも。また、他の動物用の口輪が入手できないことも考えてのことなのかも。

もし今の時代に「犬等」になっていたら、猫にも口輪または係留を求めることになります(この法律が公布される少し前の昭和25年7月21日の参議院厚生委員会にて「猫につきまして繋留することをお願いしておるようなわけでございます。」との発言はあります)。
2020年台の今であれば「家から出しませんから」となるケースも多いと思いますが、2000年以前くらいだと「外に出るから口輪をしないと!」なんてことになりそうです。それは現実的ではないですから「犬等」ではなく「犬」なのでしょう。

本当のことをご存知の方がいらしたら教えてください。

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