狂犬病予防法(昭和25年成立時)/ 第三章 狂犬病発生時の措置(交通のしや断又は制限)第十六条
今のではなく、昭和25年に出来た時の狂犬病予防法を読み続けています。
現在(令和六年)の条文と変わりません。
初めて読んだ時、前条(移動の制限)とどうちがうの?、と思ったのですが(移動の制限)は「犬の」であり、こちらは指定なし。
(※條を条に直したり、当時の文字と違う書き方をしています)
概要
前条同様、特に説明の必要もないので逆に細かく説明してみます。
(誰がやるの?)都道府県知事が
(どんな時に?)狂犬病が発生した場合において緊急の必要があると認めるとき
(どのように?)厚生省令の定めるところにより、期間を定めて
(期間は制限は?)七十二時間をこえることができない
(どうするの?)狂犬病にかかつた犬の所在の場所及びその附近の交通をしや断し、又は制限
「交通のしや断」と言ったら対象は人間なのでしょう。狂犬病を感染させる可能性が高い犬が確認された場所の周囲に人が行かない様にする。その中にいる人はそこから出ることも出来ないし、その中での移動も制限される。
犬は、第十条で係留されるし第十五条で移動が制限されるので動けない。では猫はどうなんでしょう。第十条も第十五条も「犬」であり「犬等」ではありません(令和六年現在も)。
「緊急の必要」から想像すると、まだ捕獲されていない狂犬病の犬がいる場合等、その場所その附近に人や犬をはじめとする感染する生き物が立ち入ることを制限するための条文なのだと思います(人以外にお願いしても伝わらないと思いますが)。
72時間という制限を設けていることが興味深いですが、交通を完全に遮断するのであれば、これくらいが限界なのでしょう。
犬の移動制限(第十五条)が行われ、更に交通の遮断が行われる
今の日本の感覚だと「こんなことはめったに起こらないだろう」と思いますが、第十五条の犬の移動制限が長い間行われていたことをうかがわせる資料が以下にあります。このような状況下であれば、交通の遮断または制限を行うこともありそうです。
狂犬病予防法の一部を改正する法律 @ 国立公文書館デジタルアーカイブ
狂犬病予防法は昭和29年に改正されますが、それに向けての記録や資料です。PDF形式、全60ページ。
PDFのページ数で35ページの左側「犬の移送制限」という段があります。以下にその部分を私が手作業で入力してみます(なので間違いがあるかも)。
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犬の移送制限
狂犬病の発生は現在関東一円においつめて来ましたが之をなくすには再び他の地方にばらまかない事が必要です。この為に関東地方(静岡を含む)から他府県に移送するにはその制限を受けるようになつています。
つまり犬の移送の時から 90日以内20日以前に注射を受けた注射済証明書をもつていることが必要です。
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現在は、犬と遠出するときに鑑札や注射済票を身につけることは常識ですが、当時は登録も注射もされていないことが珍しくありませんでした。
このページには円グラフ「昭和26年/発生犬の種別」があり、畜犬 27.5%、無届犬39.6%、野犬32.9% とあります。
この左ページには他にもとても興味深いことが書かれています。
それほど遠くない昔「不用犬」という言葉がありましたが、その言葉が生まれた背景とおもわれる考えが書かれた「飼犬が不用になつた時には」や狂犬病予防法における繋留の当時の考えが、今とは違うことが分かる「犬はつないで飼うこと」の段はとても興味深いです。
37ページに漫画あり、その下に「狂犬病アチーブメントテスト」なるものがあります。3.の「放し飼いにしてもよいでしょうか」の解答には時代を感じます。このような状況だったので狂犬病を撲滅できなかったのでしょう。ワクチンについては安全性が今とは違います。現在のワクチンについても安全性他を今一度よく調べることをお勧めします。
ここまで。