とるにたらないもの
とるにたらないもの、という表現が私はとても気に入っている。
いま風に言うと「映えない」もの、になるのかもしれない。
写真に切り取られなかった側のもの。
選ばれなかったもの。
フューチャーされなかったもの。
見向きされなかったもの。
でも確かに「そこ」にあるもの。
移ろいゆく世の中に圧倒されていると、時々、そんな「とるにたらないもの」と自分の存在が重なったりもする。
だけど、とても愛おしいと思ったりもする。
日常にそっと寄り添っているその何気ない存在が、さりげなく日々を支えてくれていたり、振り返ると人生を彩ってくれていたりする。
ああ、そうか。
誰かにとっての「とるにたらないもの」たちは、誰かにとっての、愛おしい何かだったりするのだ。
そう気がついて、この言葉を気に入っている理由がわかった気がした。
とるにたらない、愛すべきものたち。