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聴いてください、RADWIMPSで「もしも」
19歳のころに買ったペンケースが、ついに壊れた。13年も同じペンケースを使っていたことになる。どこで買ったかも忘れてしまった。だが、買った理由は覚えている。塾講師のアルバイトを始めることになり、急に必要になったからだ。当時は大学生だったが、ペンケースは持っていなかった。パンクじゃないから。ペンはポケットにいれるのがパンクだった。
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何の思い入れもなく、急いで買ったペンケースはラクダ柄だった。ラクダが好きなわけでもない(好きな動物はヤブイヌかペンギン)。その割に、ずいぶん長い間お世話になった。
塾講師として働いていたのは、夏期講習から受験までの半年くらい。短い期間だったが、生徒とはわりと仲良くなった。生徒たちは僕のことを「ラクダちゃん」というあだ名で呼んでいた。ペンケースがラクダ柄だったから。
確かにラクダ柄のペンケースは珍しい。というかラクダ柄がそもそも珍しい。男性講師はみんなスーツ+黒髪で、そのうえ僕の顔立ちには特筆すべき個性がなく、あだ名にできそうなイジリしろがなかったのだろう。ペンケースがラクダ柄なら「ラクダちゃん」になるのは必然と言える。
そんなことを思い出しながら、壊れたペンケースを眺める。ペンケースの中には、会社用のシャチハタやフリクションの替え芯など、わりと業務に必須レベルの文具が入っている。買い替えは急務である。
しかし、何せ13年振りの買い替えとあって、探し方がわからない。こだわりが強いわけではないが、気に入るものを見つけたい。文房具屋にはグッとくるものがなさそうである。小粋な雑貨屋を巡った方がいいのかもしれないが、あいにく小粋な雑貨屋を巡る気力はない。なぜなら京都の冬は寒いから。
とりあえず、応急処置的に「デカいクリップ」で閉じておくことにした。頻繁に開閉するわけではないし、中身がこぼれることもないので、取り急ぎは問題なさそうである。少々かさばるのが気になるくらい。
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この状態のペンケースを見て、ひとつの疑問が生まれた。もしこのペンケースを、当時の自分が塾に持ち込んだら、あだ名はどうなっていたのだろう。「ラクダちゃん」のままだろうか。それとも「クリップくん」になっていたのだろうか。
1つの概念に2つの要素が含まれると、共通項でくくるのがベターではある。塩ラーメンと味噌ラーメンを出すラーメン屋のことは、「塩ラーメン屋」とも「味噌ラーメン屋」とも呼べなくなる。結果、2つに共通する「ラーメン」でくくられ、その店は「ラーメン屋」と呼ばれる。
自分に置き換えてみる。「ラクダ柄のペンケース」と「クリップで留めたペンケース」の共通点は「ペンケース」、つまり僕のあだ名は「ペンケース万太郎」になっていたかもしれない。
先述の通り、もう13年も前の話であり、検証は不可能である。しかし、気になる。もしもタイムマシンが手に入ったら、いの一番に検証してみたい。もしもピアノが弾けたなら、いの一番に久石譲のSummerを弾きたい。もしも、本当にもしも、きみも僕のこと想ってくれてたら、なんて考えてる僕を、どうか叱ってやってくれないか。聴いてください、RADWIMPSで「もしも」。