シェアハウスインタビュー vol.1 まゆちゃん
私は今、約140人規模のシェアハウスに住んでいます。
そこには様々な経歴、面白いキャラクター、素敵な価値観のひとたちがぎゅっと揃っています。
せっかくだから、この家に住んでいる間にいろいろなひとのお話を聴いてみたい!とはじめた企画です◎
記念すべき第1回は、まゆちゃんにお話をお伺いしました!
<まずは自己紹介をどうぞ!>
まゆです。栃木県出身で、大学入学のタイミングで上京しました。
趣味は散歩で、よく適当な駅で降りて探検をしてる!(笑)
最近いいなと思っているのは、東横線沿線。学芸大学や都立大などの駅は、少し奥に行くと個人経営のカフェなどがあっておすすめ!
モデルの菊池亜希子さんが書いている「みちくさ」という散歩の本が好きで、その本では自分がおりた駅で出会った人や見つけたもの、例えばちょっと可愛いお地蔵さんがあるとか、老舗の帽子屋さんがあるとか、そういったことを紹介してくれているの。その本が好きで、私自身も探検をするのが好きになったよ。
<私は目的地を決めてお出かけするタイプだから、そうやってふらっと出かけて探検するのはとっても楽しそうだね!>
基本的に友達と遊ぶのが好きで、私も休みの日は友達と目的地を決めて遊ぶことが多いんだよね。
だから逆に一人の時間ができたときは、「何かをする」っていうのを決めないで、自然発生的な出会いや発見を見つけるのが好き。そういう時間がいいなって思う。
仕事は新卒から2年間小学校の先生をやっていて、その後フィンランドで先生をする仕事のあてがあったのだけど、紆余曲折があってだめになってしまって、今は教育系の民間企業で働いています!
<そもそも小学校の先生だったんだね〜!先生になりたいって思ったのは、何かきっかけがあったの?>
自分自身が学校や教育で成長できたなって思っていたんだよね。
もともと小さい頃の私は引っ込み思案で、隅っこで本を読んでいるような子供だった。けれどそれをまわりが無理やりなんとかしようとするのではなくて、その姿勢を尊重してくれていた。更に、誘うときには誘ってくれてチャレンジの機会もあって、ちょっとずつ半径を広げられた気がしたんだよね。
そうやって半径を広げていくと、自分の見えている世界って楽しいなって思うようになっていって、そのおかげで今幸せだなって感じられている。
そういったことを同じように経験してほしいなって思ったのが、先生になろうと思ったきっかけだったかな。
<それはとても素敵なきっかけだね。実際に先生になってみて、どうだった?>
それはやっぱり、とても楽しかった!
月曜日から金曜日の朝から晩まで、もしかしたらおうちの人よりずっと一緒にいられる関係で、その子たちのトライや良いところをずっと近くで見られるのは本当に幸せで楽しかったな。
<本当にとっても楽しかったのが伝わってくるよ〜!逆に、先生になってみて、大変だったこととかはあった?>
私が根本で大事にしているのは、「それぞれの子を尊重したい」ということなのね。
例えば、外に遊びに行く子もいていいし、教室の中にいる子がいてもいいし、考えるのがゆっくりな子がいてもいいし、考えるのが早すぎる子がいてもいいと思っている。だけど、やっぱり40人の集団生活になると個々のペースでいいよってなかなか言えないんだよね。
それが目の前の子たちにとっていいのかなって、ゆっくりしている子が急かされることで自信がなくなっちゃったりしないかなって思っていた。
例えば、ものすごく「蟻」が好きな子が熱中してずっと蟻のことを考えているのも、それってめちゃくちゃいいことだと思うんだよね。
これからの世の中ってそういう尖り方や、自分の持っているスキル、「好き」な気持ちがとても大事だと思うから。
そういった気持ちは、小さい頃誰に言われるでもなく持って見つけられているはずなんだよね。
それが集団のシステムのせいで否定されたような気持ちになったり、仕舞い込んでしまったら、私が目指したいひとりひとりのwell beingみたいなところと逆行しちゃうんじゃないかなと感じたの。
ただ一方で、私はそう思っているけれど、学校自体はそういう場所ではないというのもわかっている。
一個人として私が子供たちと居たいスタンスと、「先生」という仕事の責任感の中で求められていることが解離しているかもなと思ったんだよね。
やっぱり目の前の子供たちのことが好きで幸せになってほしいなという気持ちが強かったから、自信をもって「これが良い」って思っていない関わり方、教育スタイルを届けているままでいいのかな?と疑問を感じたの。
何年か続けていく中で自分がものわかりがよくなっていって、今ある違和感がなくなっていってしまうのも怖いなと思ったんだよね。
学校としては6年ぶりくらいの新卒で、他の先生たちにはとても可愛がってもらっていて、チャンスもたくさんもらっていたのね。
だから、職場環境がどうとか赴任先が良くなかった、みたいな偶発的な要因じゃなくて、そもそもの全体のシステムのところに違和感を感じたんだよね。
<そういった違和感を忘れないうちに新しいことをしたいなって思って辞めることにしたんだね。>
そうそう。もともと先生になりたかったのだけれど、大学4年のときには進路に迷っていたんだよね。
大学生活で自分の半径を広げていくうちに、教育って学校だけじゃないかもしれないと思ったの。「人と関わる場は全部教育になる」と考えると、「人の成長に関わる」とか「子供に関わる」という選択肢は学校以外にもたくさんあるんだよね。
一方でキャリアカウンセラーの人に「大きい企業や文科省に入ってやれることは、大きなムーブメントの一端を担うこと。あなたがやりたいのは、やっていること自体は大きくなくても、自分がいいなと思っていることを目の前の子供達に届けることなんじゃない?」って言われてしっくりきたの。
それが一番できるのが先生なのかなと思って、先生になることにしたんだよね。
でもいざやってみるとそうではないことがわかったから、一度4年生のときの気持ちに戻って、「学校の先生にとらわれない教育」という領域で自分がやりたいもの、自分の価値観と近いものにトライしてみたいなって思ったの。
<自分の価値観と近いものにトライしてみたいというその気持ちが、最初に話してくれていたフィンランドに繋がったの?>
そう、フィンランドはとても個を大事にしてる国なんだよね。国力や資源があるわけではないから、それぞれの人がそれぞれの好きや得意をいかして社会をつくっていかないといけないという考え方があるのね。
小さい頃から大人が介入しないのが当たり前で、喧嘩をしていても止めない。
そのかわり、「あなたは何をしたいの?」というのをとても大事にする。
クラスに30人いたときに、30人がバラバラなことに価値があるという考え方なんだよね。
学校としても「学校がこうしますよ」というスタンスではなくて、おうちの人と子供がどうしたいかをヒアリングして、それをサポートする立場、というスタンスなの。
そういう風にやっているから、子供たちは自分のことも、自分がどういう状態が幸せなのかもわかっているんだよね。
だから、例えば、お医者さんとパン屋さんには序列がない。
それぞれ世の中にとっては必要な仕事で、君は人を治すことが得意だからお医者さんとして素晴らしいし、一方で君はおいしいパンを焼いて人々の生活を幸せにしているから素晴らしい、というふうに捉えているんだよね。
それぞれが幸せに自立して生きるっていう考え方がとても好きで、これからの日本に必要な考え方だなと思っている。
フィンランドが太古の昔からそういう国だったら諦めがつくけれど、もともとは教育先進国ではなかったんだよね。
それを変えようとした教育大臣がひとりいて、その人のアクションと熱意で一気にひっくり返って今のフィンランドがある。
それを知って、日本でも同じことができる可能性があるかもしれないと思ったんだよね。
だから、チャンスがあるならぜひ現地で学びたいと思っていたの。
フィンランド自体はそもそも個を大事にする国だから、違う文化の人が来るのは良い影響だよねと多国籍ウェルカムな国ではあるのね。
一方で、「先生」がとても専門性の高い職業だった。教育を大事にしているからこそ、修士まで出ないとなれないプロフェッショナルの集まりだったんだよね。
そうなったときに、かたやプロフェッショナルが教えている時間とどこからきたかわからない人が教えている時間と、子供たちにとってどちらが良いのかな?という議論が国で行われたんだよね。
そして、制限しようと国の方針がちょうど変わって、あぶれてしまったの。
けれど、日本の学校は人員管理のために12月までに退職届を出さなくてはいけなかった。
すでに退職届を提出したあとの1月末にフィンランドに行けなくなることがわかって、露頭に迷ってしまったんだよね。
最初はええ?と思ったけれど、一方でこのまま違和感を抱えたまま先生として働くのは違うなとは思っていたから、続けるという選択肢は自分の中になかった。
フィンランドに行きたいと思った気持ちも、ある意味きっかけに過ぎなかったのかもしれないな。
<状況のせいにせず、そうやって前向きに捉えられるのがすごいなあ。
今の会社はどんな経緯で知ったの?>
先生を辞めてから、時間がたくさんあったんだよね。
だから、就活で企業訪問をする一方で、教育イベントにも足を運んでいたの。
その時にたまたま話を聞きに行った人が今の会社の紹介をしていて、知ったんだよね。
その人自身はちょうどキャリアチェンジをしたところで、3月まではその会社にいたけれど今は違う仕事をしている人だった。
興味をもったから、ぜひ訪問したいですとその人に声をかけて、繋げてもらった。
<その会社は具体的にどんなことをしている会社なの?>
企業の人や子供たちと一緒に、商品開発やコトづくりをしている会社です。
人が多くいる会社ではないから、色々なことにチャレンジをさせてもらっている。
小学生向けのコンテンツづくりやワークショップデザインなどを行っています。
あとは中高生の学校向けのゼミや、企業の人たちと一緒にコラボするときのファシリテーションなども仕事のひとつかな。
<今の仕事はやってみてどう?>
めちゃめちゃ楽しい!
理由はいくつかあって、一番は自分がやりたいことと求められていることの価値観が解離していないところかな。
自分が自信をもって、目の前の子たちにとっていいことだと思えていることを提供できているのがとても嬉しい。
あとは、周りの人たちがすごいのもあるかな。
バックグラウンドが様々で、コンサルや経産相、デザインのフィールドから来た人もいるんだよね。
それぞれがプロフェッショナルで、お互いへのリスペクトが強くて、その人たちと一緒にチームを作っている感覚があるのが楽しい。
自分自身の学びにもなっているし、社風として様々なチャレンジをさせてくれる。
働いて価値提供もできるし、自分自身学べているっていう感覚があるかな。
<とても楽しそうだね〜!
今の環境でもっとこういう風になりたいなとかはある?>
もっともっとできるようになりたいと思っている。
今もらっているお給料は、わたしが価値を生み出している分以上にまわりの人たちが作ってくれた価値を会社として再配分してもらっている感覚があるのね。
段階があるからいいんだよって言ってもらえるけど、もっともっと自分ができるようになりたい。会社のビジネスのモデルが好きだからもっと広げたいと思っている。
もともと根本にあるのはデザイン思考で、デザインはセンスではなくやり方があって、誰でもそれに乗ってやればできるようになるという考え方なのね。
今のわたしの理解度は、大きいデザイン思考の枠組みの中から、子供たちや会社などに個別最適化するものの理解はできているくらい。
けれど、デザイナーの人たちがものづくりをしているときに考えるような本質の部分を理解できるようになりたいなと思っている。
<違和感を忘れずに果敢にチャレンジしていけるのってすごいなって思うよ。
そうやって次から次に自分の道を進めるのって、小学校の時の「自分は自分でいい」っていう体験が原点になっているのかな?>
本当にそう!
そういう自分を大切にしたいなと思っているし、大切にしたいと思っている価値を自分ができていなかったらブレちゃうよね。
特に先生って、言葉として「先に生きる人」という風に書くし、つまりお手本というか、自分が示すのが一番だと思うの。
だから子供たちと向き合う大前提として、自分がちゃんと実現できているの?というのはすごく大事にしたいなと思っている。
<自分で示すのは大事だね。直近はデザイン思考を深めたいのだと思うけれど、5年後10年後にこういうことできてたらいいな、っていうのはある?>
やっぱり人の成長や人と関わることが好きなので、そこはぶらさないでいきたいな。
でも、自分がその時に思うことを大事にしていきたい。
今はそれがデザイン思考かもしれないけれど、今度はこういうフィールドかもしれない。自分の心に正直にいたいな。
ばしっと人生計画をたてるというよりは、大体大事にしたい価値観が見えてきて、ちょっと太めの道を作っておいてその中で「あっちかも」「こっちかも」って降りることを大事にしていきたい。
ちょうど散歩のように、東横線に乗ることは決まっているけど、今日は祐天寺で降りようかな、みたいな感じで(笑)
あとは、教員免許があるから「先生」という仕事はある意味いつでも戻ることができる。
今は自分の力を磨いている段階だけど、それがちゃんと実って子供たちに還元できる段階になったら、もう一回先生になるのも良いかなあって思っている。
<その頃の先生をやっている姿も見てみたいな〜!
それでは話を変えて、そもそもなんでシェアハウスへ引っ越してきたの?>
もともと国分寺に7年間、大学の頃から住んでいたんだよね。
国分寺には後輩もいたし、馴染みのお店があって、かなりホームな環境だった。
新しい会社に入るとき、ホームから引っ越して仕事もうまくいかなかったら、家に帰ってひとりで落ち込んでしまうかもしれないって思ったんだよね。
だから、もうひとつコミュニティがあったらいいなと思ったのが1つ目の理由。
もう1つは、自分の中でチャレンジ欲が高まっていたタイミングだったから。
そもそも保守的で、私の基本性格でいうとこういうコミュニティは選ばない(笑)
新しい仕事も始まって、挑戦の気概が高まったタイミングで、今ならいけるかなと思ったの。
長い人生を考えたときに、不特定多数の人とゆるっと繋がる暮らし方ができるのって期間が限られているだろうし、合わなかったら一人暮らしに戻ればいいかなと思った。
<チャレンジ欲が高まっているタイミングでよかった!笑
まもなく1年だけど、どう?>
とっても楽しい!
自分の世界が広がるなと思った。
色々な人たちと出会うことができたのもあるし、誰かと住んでいる安心感もある。
毎日話すわけではないけれど、家に人の存在を感じたりすれ違ったりするだけで、戻ってきた感じがあるのがいいな。
それも毎日ゴリゴリ飲み明かす!みたいなのでもなく、自分の気持ちやスタイルにあわせてグラデーションがあるのが心地良い。
お互いに尊重の気持ちがあるから、暮らしやすいかな。
<その感覚、わかる気がする!
わたしも仕事終わりは疲れていて存在薄いから、そういう時は空気読んで関わらないようにしてくれているけど、土日の朝に元気でいると声かけてもらえて嬉しいなって感じるなあ。>
そうだよね。この人数でそれができるのはすごいなってめちゃめちゃ思う。
そして、今回こうやってインタビューしてもらえて本当に嬉しかった!
あゆちゃんは聴くのが上手だし、個人的に私はあゆちゃんのお話も興味あるな(笑)
完全にここからは余談だけど(笑)
こういったインタビューのように、0から1を作ることができるのってとても大事だと思うんだよね。
例えば、私の好きなウォークマン誕生秘話があるんだけど、もともとソニーの会長が音楽好きな人でね、「出張で飛行機に乗っているときも音楽が聴けるように、小型のテープレコーダーにステレオ回路を入れてほしい。」と社員に要望したの。それで開発を進めていったんだけど、その時代、音楽はリビングのオーディオで聴くのが当たり前だし、「録音機能のないレコーダーなんて誰が買うの?」と、発売前には否定的、批判的な意見が大半だったのね。
それでも、「会長のために作りたい!」「このコンセプトは絶対売れる!」と熱意をもって形にしたら、後々大ヒットになった。
今の時代は特にモノが飽和してるから、売れるものを作ろうというのは難しい。
100人いる中で1人しか買わないかもしれないけれど、その1人が熱狂的に欲しいと思ってもらえるようなものが後々スケール化してくるんだよね。
自分が、とか、この人のために、というわがままで作られた商品が刺さる時代になってきていると思う。そういう時代だからこそ、「蟻が好きなら蟻が好きなままでいいんだよ」って子供たちに言いたいし、そういう気持ちを大事にしてほしいな。
<そうやって言ってくれて本当に嬉しいし、私も励みになったよ!ありがとう!>
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