くせっ毛
自分の髪が好きだ。
そう思えるようになるには長い時間がかかった。
小さい頃から、専らくせっ毛が悩みの種。
ショートだとあちらこちらではね、
ミディアムだと毛先が外側にはね、
ロングだと無造作にカールする。
そして太陽の光を当てても真っ黒。
朝は寝癖が加勢し、洗面所が戦場だった。
中学に上がると、ストレートパーマという救世主があることを知り、
少し都会の美容院に、お手伝いを頑張って貯めたお金を握りしめて向かった。
初めての一人遠出、初めての都会、初めてのお洒落な美容院、
何もかもがキラキラ輝いて見えたことを今でも覚えている。
アルバイトを校則で禁止されていた高校時代。
なかなかお金を貯めれず、くせっ毛に戻ってしまった。
毎朝早く起きて、ストレートアイロンの電源を入れる。
パジャマから制服に素早く着替え、朝ご飯をかきこんで、歯をマッハで磨く。
家を出る時間までひたすらにアイロンで丁寧にゆるやかなワンカールを作る。
「髪の毛やってないで、早く行きなさい!」
その母からの注意が家を出る合図、猛スピードで自転車をこいで通学していた。
携帯のアラームが聞こえず、自然と目が覚めたある日のこと。
完璧に寝坊してしまった。
少し髪を水で濡らし、くしでとく。
今までにないスピードで自転車をこぎ、何とかチャイムと同時に教室へ飛び込んだ。
息を切らしながら前を向いていると、隣から
「大丈夫か?(笑)」
「死にそう・・・」
「なんか今日の雰囲気違うな」
!!!!!!!!!!!
完全に髪の毛だ。
急に恥ずかしくなり、手で押さえる。
最悪だ、それも隣は、好きな人である。
やっと席替えで隣になれて大喜びしていた一週間前の自分が恨めしい。
「かわいいじゃん、そっちの方が好きだけど。」
「え?」
「だから、かわいいって」
「嘘だ!」
「巻いてきたんじゃないの?」
「違う…くせっ毛で…」
「似合ってるし、そんな隠さなくていいよ」
・・・・・・驚いた。
昔から悩みの種のくせっ毛が似合ってる?
それも、好きな人がかわいいと言ってきたのである。
その日はうわの空で帰宅した。
早速母に聞いてみた。
「私のくせっ毛、どう思う?」
「え?毛先がくるんとして似合ってるって、いつも言ってるけど」
私は、自分の髪の毛を嫌だと思うあまり、周りの声に聴く耳を持っていなかったのだ。
それからは自分の髪質に向き合い、手入れするようになった。
地肌も顔と同じように保湿をする。
髪にはオイルを塗り、しっかりと乾かす。
その日の気分に合わせて、くせを生かした髪型、アイロンで整えた髪型を楽しむ。
キラキラした青春を送った学生時代、既に過去の記憶だけれど、
私の髪は今でもキラキラしていると思う。
雨の日は気分に関係なく、無造作にカールする。
そんな、私の髪が愛おしい。