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あの正月、家族で見た花畑

記憶が正しければ、あの正月の家族旅行では、一番下の妹の結婚が決まっていたはずである。

コロナ禍を経て、数年ぶりの帰省だった。にぎわう空港のロビーで、母と妹ふたりを見つけたとき、正直にいうと、私は家族に人見知りをした。

「あ、あやちゃん……?」

わざと戸惑ったように声をかけてきた次女のおどけた様子に、たちまち気持ちがほぐれていく。お土産を詰め込んだキャリーケースを転がしながら、父の待つ車にみんなで向かう。

何かおもしろいことを話していた覚えはないが、いい大人になったはずの三姉妹はくすくす笑い合い、昔に戻ったように母の背中を追いかけた。

その翌日、5人の家族は旅に出た。車の運転を交代しながら(といっても、私だけはペーパードライバーで戦力外だった……)、隣の県の温泉宿に向かう。

ドライブにうってつけの、気持ちのいい天気だった。

前の席で、ときどき両親が道を確認し合う。末っ子は船を漕ぎ、次女は1年の運勢を占う本を読み、長女の私は車酔い防止に外の景色を眺める。

どこまでも、空と山と道しかない。車内はまどろむほど穏やかで、目的地になんて辿り着かずこの時間がずっと続けばいいのに、とぼんやり思う。

そんなことを軽率に考えていたら、どうやら天国に辿り着いたみたいだ。

1月初旬であることが信じられないくらいの、一面に広がる黄色い絨毯。

日本のハワイとも言われるこの地では、年末年始に菜の花畑の季節を迎える。陽光を浴びてキラキラと光る湖には、幻の生物が棲息しているという。

車を止めて、家族全員で菜の花畑に並ぶ。

父と母がいて、私たち三姉妹がいて、5人でひとつの家族だった。それはこれからも変わることはないけれど、あのとき、末っ子に続いて、私と次女も立て続けに夫となる人を連れてくるなんて、さすがに両親は想像もしていなかっただろう。

「はい、撮るよ~!」

次女の号令で、わらわらとみんなが身を寄せ合い、ひとつのカメラレンズに視線を向ける。

久しぶりの集合写真は、全員マスクで顔半分が隠れていた。

それでも弾けるような笑顔が浮かんで見えるのは、きっと菜の花畑の効果に違いない。

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