容器再利用プラットフォームLOOP(ループ)の可能性 - 日米比較-
日本ローンチが数か月も予定より遅れていたLoop(ループ)*が、今月25日からECとイオン17店舗でスタートする。
米国ではすでに2019年から同プラットフォームが開始されており、現時点では洗剤やシャンプー、ナッツ類などの販売を中心に、オンライン販売で113点の商品が展開されている(5月21日現在)。筆者は、この取り組みに関して実は日本が米国よりも拡大していくのではないか?と期待している。- by Miho Tabaru
*Loop(ループ)とは、従来、使い捨てされていた洗剤やシャンプーなどの日用消耗品や食品などの容器や商品パッケージを、ステンレスやガラスなど耐久性の高いものに変え、繰り返し利用を可能にする新たな商品提供システム。(参照)ゼロ・ウェイスト「Loop」取り扱い店舗 | イオン (aeonretail.jp))ローンチ時に対象となる商品は、13SKUに留まるとのこと。
理由としては、
1. 日本では、Loopの再生容器に入った商品を購入・返却する場がイオンのリアル店舗メインという事。店舗へペットボトルやプラスチックの容器などを返却(戻す)という行為自体は既に日本人(特に地方の中年~高齢者)にとって違和感がないので、今回のLoopの再生容器についても、今までの消費者行動に違和感なく取り込めると期待できる。
米国では、オンラインでのショッピングをベースにしているため、配送料が購入した商品を届ける際と、使用後の容器を収集する際のダブルでかかる。この配送料と容器と配送ボックスのデポジットが費用として含まれるため高額になる。だが、リアルな場所でのやり取りだとその様な追加コストが発生しない。
米国でのケース(オンラインショッピング)
筆者が米国でLoopの利用を試みた時のエピソードを紹介したい。
6ドルのグラノーラが「1点購入したら2点目無料」のプロモーションで購入できる表示を見て、お会計を進めていった。すると、合計金額が37ドルと表示されたため思わずPCをたたんでしまった。
金額の内訳をみると、
1. 商品グラノーラ自体が10.6oz で5.99ドル。
2. 容器のデポジット(保証金)が6ドル。
3. 配送時に利用されるLoopの袋のデポジット(保証金)が5ドル。
4. 配送料(配送+集荷)で20ドル
合計金額の内、11ドルが保証金なので返却されるとしても、20ドルの配送料はやはり高い。配送料を分配するために、複数の商品を購入しようとも考えたが、そもそもLoopの再利用可能な容器で提供されている商品数が113点のみなので、選択肢が少なく欲しい物が他にはない。
こういった理由から、Loopの仕組みは米国でのオンラインベースよりも、日本でのリアル店舗ベースの方が拡大余地があると考えられる。
また、その他の理由としては
2. 容器の保証金を含めると高く感じてしまうが、商品自体の価格は高くない。
例えば、日本で販売予定のLoop容器に入ったキシリトール(内容量216g)の想定小売価格は2,090円(税込み)、そのうち容器代が880円。容器を差し引いた金額を内容量で割った1g当たりの価格は5.6円。https://www.lotte.co.jp/products/brand/xylitol/campaign/loop
対して、通常のプラスチックに入ったファミリーパックは143gで820円(楽天)。1g当たりの価格は5.7円。
3. 日本では、サステナビリティにブランド横断で対応してるLoopのようなサービスがまだ少なく、皆がサステナブルな行動を起こしたいのに、どうしたらよいか分からないという飢えがあったから。そこに、容器の耐久性とデザイン性が高いLoopが参入してきたので、飛びつく生活者は多いと想定する。
イオンからのプレスリリースを読んで非常に気になった点が一つある。それは、今後一年間日本国内でLoopが提携するのはイオンのみであるという事が強調されている。ここに、イオンの独占欲が見え隠れする。イオンは、何のためにLoopとの取組みを始めたのだろうか?
Loopを独り占めして話題も独占し、集客を伸ばすためだろうか?
本当の意味で容器の再利用を推し進め、少しでも環境負荷を削減させてたいというパーパス(目的)があれば、Loopのようなサービスは様々な企業との提携を進るべきだし(イオンはそれを許すべき)。また、それによって国民がどこで何を買っても直ぐに容器を再利用するために返却できる場所がある、という状況を作る事が出来る。
サステナビリティ活動のの真の目的を達成するためには、競合との競争ではなく、協業を進めなければならない。