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ミステリーなのも短編集なのも、いい。【神様の罠】
「読み逃し厳禁!」
「二度読み必至」
帯に書かれているこれらのコピーを見て、うおおお……と心の中でうなっていた。
(二度読むほど難しいのか……!?)と。
さて今回私が読んだのは、「神様の罠」。
辻村深月、乾くるみ、米澤穂信、芦沢央、大山誠一郎、有栖川有栖の有名ミステリー作家6名による短編集だ。
実は今まであまりミステリーを読んできたことがない。
その理由として、登場人物のイメージに時間がかかってしまうというのがある。
たとえば、ドラマなどの映像作品だと顔や声で登場人物が描かれるから、ストーリーもすんなり入ってくる。
しかし本となるとキャラクターの把握や、複雑な人間関係を理解するのにいつも苦戦するのだ。
(そういうもんなのかもしれないけれど。)
だからちょっとミステリーって苦手意識が強くて、遠ざかってきたのかもしれない。
そして、本書の作家さん6名すべてが私にとって初めての出会い。
名前を知っている方もいたけれど、全員初見か……というのも、心のうなりにつながったと思う。笑
実際に読んでみたら、意外とすらすら読めた。
なので私のように「ミステリーはちょっと……」という方にもぜひおすすめです。
6作品どれもおもしろかったのですが、特に2作品についての感想を紹介します。
孤独な容疑者/大山誠一郎
最後の大どんでん返しがすごくすごくおもしろかった!
はじめの会話シーンで「久保寺さん」と何度も入れてきて、「久保寺という名字」と読み手に意識させるのがさすが!と読み終わってから感じた。
それにしても殺された藤白の人間性は怖いなあ。
藤白みたいに笑顔で近寄ってきて、突然豹変する人ってきっといるんだろうね。
私はあまりお近づきになったことがないけれど。
そして、緋色冴子がとても気に入った。
「緋色さんってこの短編だけのキャラなの!?もったいない!」
と思っていた私が甘かった。
ネットで調べたらやっぱりこのキャラクターはシリーズになっていたのですね。
しかもテレビドラマまで!(テレビを見ないため知識不足)
うんうん、未解決事件に向かっていく緋色さんはなんとも爽快でした。
本書内にある緋色さんの「コミュニケーション能力皆無」というプロフィール、なんてステキなんだろう。
読みながらどんな見た目の女性なのかな、と想像をふくらませていたがドラマで演じていたのが松下由樹だったということを知り、これからは松下さんのイメージがついてしまいそう。
松下さんは「あ〜さ〜く〜ら〜!」のナースのお仕事のイメージが強かったんですけれどね。笑
2020年のロマンス詐欺/辻村深月
コロナ中に大学生になった人たちって、とてつもないやりきれなさがあるだろうな、と思う。
楽しいはずだった学生生活が一気に別物に変わってしまった。
慣れない一人暮らしを始めた耀太のような学生さんたちは、さぞかし大変だったのだろう。
私は早く東京に出て大学生活をエンジョイしたかったから、耀太の立場になったとしたらすぐにダメになっていたはず。
「オレンジデイズ」のような大学生活ではなかったけれど(そもそもキャストが違うわ)、一人暮らしの友達と互いの家を行き来したり、サークル活動にいそしんだりして過ごした学生時代だった。
上京の不安、一人暮らしの不安、知り合いがいない不安。
なによりも東京に出ることを応援し、支えてくれた親へ心配をかけてはいけないといった不安。
自分の上京したての頃と耀太が重なるところがあって、少し苦しくなった。
さらにコロナ禍で誰とも触れ合えないなんて、そりゃ耀太辛すぎるよね。
そんな中でのメッセージのやり取りって、耀太にとったら大切なものだったのだろうなと感じた。
相手は見ず知らずの人で、しかも耀太自身も自分を偽っていたとしても。
本短編は最後がほんわかした終わり方で、よかったです。
なんだかんだで私はハッピーエンドが好きなんだなあ。
短編集はいろいろな作家さんのちがいを知れておもしろいと改めて感じました。
ぜひ読んでみてください。
さらっと読めるので、私のようなミステリー若葉マークさんにもおすすめです。