こんな夜更けにバナナかよ
生前、私は三浦春馬くんのファンでもなんでもなかったから、彼の出演作をチェックすることなんて、正直皆無だった。
リアルタイムで見たのは、「14歳の母」だけ。ひょろっと背が高いため、志田未来ちゃんとの身長差が気になってしまい、当時ちゃんと演技を見ていなかったように思う。
映画は「恋空」をDVDか何かで見た気がするが、いわゆる携帯小説のお涙頂戴ストーリーが好きではなく、金髪(私は彼に似合っていないと思っていた・・)こと以外、ほとんど記憶に残っていない。
今年の5月くらいだろうか、深夜に暇を持て余し、アマゾンプライムにあった「こんな夜更けにバナナかよ」をたまたま観た。
ボランティアの医大生の、どこにでもいそうな、でもなんだか頼りなくて、その優柔不断さにちょっとイライラしつつ、でも最後には自分の意思で行動し、成長していく様がすごく印象的だった。
そして、エンドロールで驚いた。えっ!あれ、三浦春馬なの!?
いわゆる「ただのイケメン若手俳優」という認識しかなかったから、どうしても目立つであろうその綺麗な容姿を、どうやって隠したのだろうか、見事に感じさせず、こんなにもどこにでもいそうな大学生を自然に演じていたことに、本当に驚いた。
そう、私が彼の生前の姿を、一生懸命そして誠実に演じる姿を、彼がまだこの世にいた時にちゃんと観たのは、あの夜が最初で最後だった。
私はどうして、彼が生きている間に、その輝きに気づかなかったのだろう。
今、彼が亡くなってから、彼が生きた証を知りたくて、出演作を見漁っている。そして本当に驚いた。
演じる役柄の幅広さ、そしてそのどれもが三浦春馬であって、でも三浦春馬ではない、役そのものになっていることに、私はどうして気づかなかったのだろう。
私が何を言ったところで、それが彼に伝わるわけではないのだけれど。
それでも、彼が生きている間に、リアルタイムで彼の出演作を観て、そしてきちんと伝えたかった。
あなたは、演劇界の宝だと。
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