ふりやまぬ雨の中、世界で一番住みやすい街、ミュンスターに到着
ケルン大聖堂に別れを告げて、やってきたのはドイツ北西部にあるミュンスター。ここでは1977年から、10年に1度、ミュンスター彫刻プロジェクトという野外彫刻展が開催されている。彫刻家のヘンリー・ムーアが芸術と公共のあり方に問いを立てたことで始まったプロジェクトは、今年、2017年で5度目の開催となる。
ケルンで降っていた雨も、鉄道に乗ってミュンスターに移動する間に晴れ間が見えるのではと期待していた。
ところが、さらにどしゃぶりの雨。ミュンスター中央駅のすぐ目の前に設置されているインフォメーションセンターまで、スーツケースを転がしながら、話を聞きにいくのも一苦労だった。
「入場料は無料だから、チケットは買わなくていいよ、地図は3ユーロね。全部見てまわろうと思ったら、だいたい1日半くらい。自転車はすぐ後ろの、駅のところでレンタルできるから」
短時間に必要な情報を全て手に入れられるインフォメーションセンターは、やっぱり便利。
ホテルまでバスで移動しようと思っていたけれど、雨にくじけてタクシーに乗り込む。ドイツのタクシーはベンツ率が高くて抜群に乗りごごちよく、運転手さんも親切だ。「ホテルミュンスター」と告げるたら、「はいはい、わかります」とニコニコと返事をしてくれ、明日の天気を心配する私に、雨マークだらけの週間天気予報図を見せてくれた。
「ミュンスターでは自転車で移動するのが良い」と聞いてはいたが、雨では困難だ。晴れ女なはずなのに困ったな、と、買ったばかりのマップを何気なく見ていたら、インフォメーションの書き出しに「You're in Munster. It's pouring with rain.(君のいるミュンスターは雨が降っているね)」と書いてあって、のけぞった。
「大丈夫、屋内で見られる作品もいくつもあるし、しばらく時間を過ごしていたら、雨があがるよ」
そうか、ミュンスターは雨がちな気候なんだ。
予約したホテルは中心部から少し離れた閑静な住宅街の中にある。周辺には可愛らしい家々が軒をつらねていて、居心地の良さが伝わってきた。
チェックインを済ませ、ここでも自転車を借りられると確認したら、作品鑑賞は諦めてホテルでのんびりすることにした。もともと3泊する予定なのだから、雨の合間になんとかなるだろう。
散歩がてら近くのスーパーまで買い出しに行き、ワインと生ハムとチーズとパンを買った。どんどん降る雨に、ホテルに戻る頃には、スニーカーが雨と泥でぐちゃぐちゃだった(地元のひとたちはずぶ濡れになりながら、果敢に自電車を漕いでいて、なんだかかっこいい)。
3ユーロもしなかった赤ワインが美味しい。熱いシャワーを浴びたあとは、音楽をかけて歌いながら、ふかふかのベットでネットサーフをする。旅の途中にこんな時間があってもいいよね、と悦に入っていると、いつのまにか、外の雨があがっていた。