日本に帰りたくない理由
私は3年間カナダに住んでいて、知り合いから日本に帰らないのか聞かれることが時々ある。私は日本に家族も友達もいるし、日本のサービスや食事のクオリティの高さや日本独特の文化にはいつも感嘆させられるが、カナダでの3年間の生活を得て、もう日本では暮らせないとますます思うようになった。
もし日本で生きづらさを感じている人がいたら、それは自分のせいじゃなくて周りの環境が悪いのかもと疑ってみてほしい。
1. 結婚をゴールとした文化
30歳を過ぎて独身の女性は、"アラサー"、"負け組"といった言葉で表現されることがしばしばある。また"花嫁修業"といった結婚をゴールとした言葉や、"嫁に行く"といった観念もまだ根強くあり、結婚を機に退職することを"寿退社"といってまるでそれが女性の人生のゴールのように言われる。日本にいたときはそれらの言葉に対して特に反感をもつことはなかったが、こういった言葉は日本の、特に女性に対して結婚をゴールとした文化を象徴しているように思う。私は30歳を過ぎて独身なのだが、家族との会話はいつも結婚が話題になってしまうし、特に祖父母にとっては30歳を過ぎて結婚していないことがまるで異常事態かのようにかなり心配されいてる。
2. 選択肢の少なさ
まだ法的に同性婚は認められていないし、養子や精子バンクの利用も普及していないし、ピルなども海外に比べて手に入りにくい。また移民をほとんど受け入れていなかったり、二重国籍も認めていない。それぞれ個々の状況があって、それらがどうしても必要な人たちがいるのに、そういう人たちはマイノリティだからか、典型的なロールモデルから外れている人はまっとうな権利が与えられない。
3. 空気を読む文化
特に日本の学校や大企業では、”出る杭は打たれる"。そして、”あの人は空気が読めないから"と陰口を叩かれる。空気を読めないと、コミュニケーション能力がなくマイペースな人と判断されて、特に大企業では致命的な欠点となる。でもこれは海外ではそのように判断されない可能性が大きい。むしろ相手が空気を読むだろうと想定して明確なコミュニケーションを取らない方がコミュニケーション能力がないと判断される国もある。
4. パワハラ
日本で働いていたときは、いじめ、陰口、強制的な残業、上司から詰められる、私生活が尊重されない、といったパワハラを幾度となく耳にし、自分も体験してきた。特に銀行で働いていたときは、同僚が数時間、上司から説教を受けているのは日常茶飯事だったし、時短で働く女性に対しては周りからのマイナス評価や陰口を何度も聞いた。今考えるとそれらはどう考えてもパワハラだったけれど、そのときは次のターゲットが自分にならないかと毎日ビクビクしながら生きていた。サービス業をしている人ならもしかするとお客さんからのパワハラを受けている人がいるかもしれない。でも海外ではサービスを提供する人とお客さんは立場が対等なので、日本で理不尽なクレーム対応しているのは世界では当たり前じゃないかも。
5. 男女差別、年齢差別、外国人差別
職場においての男女差別は未だ顕著である。例えば、一般職は女性のみで給料も総合職に比べて低い。子持ち35歳以上の女性は就職が困難なため派遣や非正規雇用として働くことが多い。また年齢差別も顕著で、スキルや経験ではなく、新卒や第二新卒の採用を行うのも当たり前。海外ではインターンなどでスキルをつけてからフルタイムの仕事につくことが一般的だ。しかもインターンは、学生でなくても応募可能。つまり海外では性別や年齢は関係なく、スキルやポテンシャルがあるかどうかで採用する。そもそもカナダでは採用時に年齢や性別で差別することは法律で禁止されている。また日本では外国人差別をしている人が未だにいる。私は日本で外国人とシェアハウスに住んでいたのだが、隣のアパートの家主から外国人が近所をウロウロしていると治安が悪いから外国人を家から追い出すように苦情を受けたこともあった。信じられなかった。トロントだったら50%近くが移民だから、外国人は受け入れられないなんて言ってたらなにもビジネスはできないし、街も歩けない。
ここにあげた問題点は私の経験から感じたことであって、間違っている解釈もあるだろうし、もちろん私が気づいていない問題も山ほどあるだろう。ただここにあげた問題点だけでも、私が今住んでいるカナダと比べて全然進んでいない。日本ではあまりこういった議論が日常的になされないところに原因があると思う。まず、ロールモデルに合わない人をすぐに枠に当てはめてそれ以上理解しようとしないことが議論の機会を妨げているように思う。上記で書いたように30歳前後の女性を"アラサー女子"と呼ぶこともそうだし、例えば、精神的に滅入って会社にいけなくなると、鬱と診断されて会社を休職するのは当たり前になってきたが、それはその人じゃなくて会社の環境が悪いのかもしれないのに、その人は精神的な病があるから会社に来ない、というのが解決策なのは少し違うと思う。また学校や企業、家族内でもトップダウンや年功序列という文化が残っていて、立場の弱い人や新しい考えをもつ若者の意見が聞き入れられないのも、これらの問題がいつまでたっても解決されない原因だと思う。
もし何か意見やアイデアがあったらコメントください。
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