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テアトロコント vol.10『辛笑い』

辛笑い、という言葉はこの世に存在しないが、もし存在していれば今回のテアトロコントは辛笑いに満ち溢れていた。現実の辛さを鮮烈に思い出しながら、それでも笑わざるを得ない状態だ。辛い現実を忘れたくて、笑いに劇場に来るお客さんだって一定数いたことだろう、本当に申し訳ない。いつものテアトロコントはここまで辛笑いに偏っているわけではないのだ。示し合わせたわけでもないのに、異常な偏りをみせた回だった。

1番目はマッハスピード豪速球。生活保護を受けている迷惑なおばさん、法律違反の仕事を勝手に行う言い訳が見苦しいおじさんのふたりが、メインキャラで登場する四つのコント。猫に餌付けをする、出ないパチンコ台を叩く、自転車撤去や交通整備のルールをよくわかっていないなど、罪としては小さな事柄で延々と揉め続けるさまはとても気まずい。しかし残念ながら、このような光景は、東京にありふれているものであるのもまた確かなことだ。

2番目はナカゴー。『復縁』と題された30分の長尺のコント。浮気が原因で別れた元カレが新しい女を連れて、主人公の引き取ったペットを取り戻しに来るという、とにかく元カレがゴミ過ぎる設定。しかも途中でいい感じの雰囲気になって主人公を性的に襲い始め、別に天誅が下るわけでもない。因果応報の対極というか、損する人は損したまま、不幸な人は不幸なままという現実に、心がざわざわとした。

3番目はテニスコート。特に『オーディション』という、オーディションを受けている全員が自分はエロくないと面接官に主張するうちに、オークションのように自分の欠点を次々に口にしては否定していくナンセンスな作品が良かった。個人的には偶然ナカゴーの次がテニスコートだったので、「確かにあまりにもエロ過ぎる人は問題も多いだろうし、オーディションで取りたくないよなあ」と、変な部分に納得した。

4番目はジンカーズ。五つの作品どれもが相当攻めている内容だったものの、一番の問題作は『英会話教室(尖り ver.)』だろう。英会話の例文が最初から殺伐としており、やがて内容はテレビに使い捨てにされる芸人のイライラした思いの丈をぶちまけたものに変わり、率直に言って笑っていいのかどうか一瞬迷ったほどのダークっぷりだった。笑いの総量は少なかったけれども、辛さの面ではダントツの1位。げんなりコントフェスティバルのようなものがあればぜひ出演して欲しいものだが、恐らくそんなものはこれから先もないだろう。

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