妹とのハロウィン
場所:カフェのある席。
とある組織の若頭にのし上がった兄と、妹の会話。
兄 「疲れたぁ…」
妹 「はぁ? あんなんで疲れたとか、何言ってんの」
兄 「お前は何もしてないだろ…。少しは兄を労われ」
妹 「誰が労わるか。でもそうだなぁ…。ここのカフェ代出してくれたら少しは考えてあげなくもないかも」
兄 「はぁ…。最初から金出すのは俺って決まってんだし、もう何でもいいや…」
妹 「んふふっ。おにいちゃんだいすきっ」
兄 「はいはい」
ここで妹が運ばれてきたカボチャスープを飲むために上着を脱ぐ。
兄 「おい。いつもといる場所も着てる服も違うんだからもう少し周りに気を付けろ」
妹 「ここはそんじょそこらにあるカフェとは違う。少しはあたしから視線を逸らして周りを見てみろ。普通にコスプレをしている人間もいれば、人外だっている。背中にある『例の痣』について知る者は――」
兄 「そういう問題じゃねぇだろっ!」
勢いよく兄が席から立ち上がり、客の視線が一斉に集まる。
兄 「…っ、すみません。大声出しちゃって…。取り敢えずこれでも着てろ。お前は何回そう言って危険な目に遭ってきたんだよ…。その度にどれだけ俺が大けがを負ってると思ってんだ」
妹 「それは単にあんたがどんくさいだけじゃん」
兄 「あのなぁ…。お前、それで俺がほんとに死んだらどうす」
妹 「死なないよ」
妹が残り少なくなったスープ皿を両手で持ち、グイッと一気に飲み干す。そして隣に座る兄の膝の上に乗り、抱きしめる。
妹 「お兄ちゃんは、いつだってあたしのお兄ちゃんだもん。ずっとあたしのお兄ちゃんでいてくれるって、約束したもん。ずっとそばにいて守ってくれるって、言ってくれた。お兄ちゃんは、あたしとの約束は破らない。だから、絶対、死なないよ」
兄 「……お前みたいなやつの兄貴は、俺にしか務まらねぇよ。……まぁでも、そうだな。そこまで言うなら、お前の事を狙うやつらは全員蹴散らしてやる。そして、お前が死ぬまで兄貴というこの役職を全うしてやろうじゃねぇか」
妹 「それでこそ、あたしのお兄ちゃんだねっ」
妹は兄の膝から降りてドアに向かう。
妹 「あ、そうだ。下の連中どもがハロウィンだーって盛り上がってから、お兄ちゃんも家に帰る前にこんな感じの小さいのでいいから、お菓子用意しておいたら?」
兄に見せつけるように個包装のされているチョコを食べる。
兄 「お前もそのチョコ買って……おい待てそれもしかして俺のじゃ」
妹 「だからあんたはまだまだだって言ってんの。早く行くぞバカ犬」
兄 「さっき膝に乗って来た時か……。ガキが調子に乗りやがって…。 てか俺はバカでも犬でもねぇし! あとで覚えとけよっ!」