あやしき下臈(げろう)

興奮する真の知的遊戯(個人の感想)、暗号解読について書きます。 ゴリラのドラミングは拳…

あやしき下臈(げろう)

興奮する真の知的遊戯(個人の感想)、暗号解読について書きます。 ゴリラのドラミングは拳ではなく平手でするのが正しいそうです。さしみ

マガジン

  • 雑記

    他のマガジンに含まれない内容をまとめる。いわゆる「その他」枠。

  • 暗号解読に挑戦

    興奮する真の知的遊戯(個人の感想)暗号解読に挑戦してもらうための問題と解答を集めるところ。

  • 暗号紹介

    暗号を紹介するところ。特に日本語での資料があまり多くないものを中心に紹介する予定。

  • 暗号人列伝

    暗号の解読や作成に携わった人々の紹介をするところ。

  • 暗号解読の手段

    興奮する真の知的遊戯(個人の感想)である暗号解読を行うにあたり、有用な手段を文に起こしてまとめておくところ。

最近の記事

  • 固定された記事

知的遊戯としての暗号解読

このnoteでは知的遊戯としての暗号解読を扱う。暗号とは、大まかに言えば元のメッセージに何らかの操作を施して意味を分からなくした文章である。一方、その文章から意味ある言葉を引き出して見せることが解読である。なぜそれをするかと言えば、試行錯誤の末に意味のある文章が出てくる瞬間が楽しいからである。暗号を紹介し、歴史を記し、方法を示し、実際に暗号文の例題を出し、解読に挑戦してもらう。そういったことをやりたいと思っている。 わざわざ「知的遊戯としての」と銘打ったのは、noteにおい

    • 雑記:エニグマ暗号機シミュレーターを作ってみた

      長らく無沙汰であったが、このたび久しぶりに思い立って記事を書くことにした。内容はタイトルの通りエニグマ暗号機シミュレーターを自作したことである。 世の中にはしっかりしたシミュレーターが既に多くあるというのに、わざわざ正確性が不安な自作シミュレーターを作ったのには理由がある。既存のシミュレーターは実在したエニグマのモデル(Enigma I、Enigma M4など)の再現を行っている。しかし、自分で自由にスクランブラーやリフレクターの内部配線を設定できるシミュレーターは、リサー

      • 暗号解読に挑戦:ミックス問題1・解答編

        問題はこちら前回の記事では、様々な種類の暗号により暗号化した文章を5つ提示した。今回はその元のメッセージと、暗号化に使用した暗号表および転置鍵を示す。 少し間を空けてから解答を掲載する。 問題1まず頻度分析を試みて、出現頻度の高い順に文字を並べると、O, S, E, I, N, R, … , A, B, C, G, K, Lの順になる。この傾向は通常の英文と一致する……とはいささか断言しにくい。暗号文の文字数はさほど多くないから仕方ないかもしれない。ともかく、通常の英文に

        • 暗号解読に挑戦:ミックス問題1

          ここでは、何らかの暗号で暗号化された文章を5つ提示する。その平文は別の記事に掲載する。 出題日(2022年10月5日)時点で紹介してきた暗号のどれかから出題する。ただし既に出題したプレイフェア暗号とADFGVX暗号は除く。 対象となる暗号は次の通りである。 「Chaocipher」「ベーコンの暗号」「レールフェンス暗号」「Redefence暗号」「Bifid暗号」「Four-square暗号」「グリル暗号」 各問題はそれぞれで完結している。問題のキーワードがその問題の外に隠

        • 固定された記事

        知的遊戯としての暗号解読

        マガジン

        • 雑記
          4本
        • 暗号解読に挑戦
          6本
        • 暗号紹介
          11本
        • 暗号人列伝
          1本
        • 暗号解読の手段
          3本

        記事

          暗号紹介:グリル暗号 暗号の仕組みとその特徴

          用語についてグリル(Grille)とは格子窓を意味する語である。ここではところどころに穴が開いており、それを通して文字を読んだり書き込んだりするようなシートをグリルという。 グリル暗号とはグリルを用いた暗号はいくつかの種類が存在する。 ・カルダン・グリル ・シングル・レター・グリル ・トレリス暗号 ・回転グリル暗号 以下のサイトも参考のこと。 ウィキペディア記事「カルダングリル」 ウィキペディア記事(英語版)「Grille (cryptography)」 カルダン・

          暗号紹介:グリル暗号 暗号の仕組みとその特徴

          暗号紹介:Four-square暗号(2) 解読実例

          表記・用語についてプレーンテキスト(暗号化前のメッセージ)の文字は小文字で、暗号文の文字は大文字で表すことにする。 Four-square暗号とは前回を参照。 プレーンテキストを推測するここでは、暗号文が与えられた状態で、プレーンテキストを推測しながら暗号表を構築し解読する方法を示す。 アメリカ陸軍作成のマニュアルに掲載されている例題を用いて、その解読作業を追っていく。マニュアルの7-0ページから7-11ページまでがFour-square暗号の分析を扱っている。 Fou

          暗号紹介:Four-square暗号(2) 解読実例

          暗号紹介:Four-square暗号(1) 暗号の仕組みとその特徴

          Four-square暗号とはフランス人の暗号作成者Félix-Marie Delastelleにより発明された。Delastelleは他にも以前紹介したBifid暗号なども発明した、アマチュアの暗号作成者である。 暗号表を用いて2文字組を別の2文字組に変換する形式をとっていることから、似た形式を持つプレイフェア暗号と対比されることがある。 プレイフェア暗号と異なり、政治・外交・軍事的に実用されたという記述は見かけない。Four-squareはプレイフェア暗号よりも実際強固で

          暗号紹介:Four-square暗号(1) 暗号の仕組みとその特徴

          暗号人列伝:アル=キンディー

          名前についてアル=キンディーに限らずイスラーム圏の人名は、何を以てフルネームとするかは難しい。見る限り最も長い名前表記はサイモン・シンの『暗号解読』に見える「アブー・ユースフ・ヤアクーブ・イブン・イスハーク・イブン・アッサバーフ・イブン・ウムラーン・イブン・イスマイール・アル=キンディー」である。他の文献ではイブン・○○が適宜略されるなどしている。ここでは「アル=キンディー」で通す。 概要アル=キンディー(Al-Kindī, c. 801- c. 873)は、中世イスラーム

          暗号人列伝:アル=キンディー

          暗号紹介:Bifid暗号 暗号の仕組みとその特徴

          用語についてbifidとは「二つの部分に裂けた」「二分の」「二裂の」を意味する語。発音は「バイフィド」。強いて訳せば「二分暗号」「二裂暗号」となるだろうか。その用例はないので、ここでは原語のままで通す。 Bifid暗号とは1901年頃、フランス人の暗号作成者Félix-Marie Delastelle(1840-1902)により発明された。DelastelleはTrifid暗号(Bifid暗号の発展形)やFour-square暗号も発明している。 Bifid暗号が政治・軍事

          暗号紹介:Bifid暗号 暗号の仕組みとその特徴

          雑記:隠しページ探し

          今回は暗号解読とは別の、だが筆者の原点でもある、とあるゲームについてつらつらと語りたいと思う。 昔流行した「隠しページ探し」というものをご存じだろうか。とは言ってもここで語りたいのは、厳密な意味での隠しページ(その存在を公開されておらず、通常の方法では行きつくことのできないページ)ではなく、ゲームとしての隠しページ探しである。つまりあらかじめ何らかのページが隠されていること自体は公開されており、それをあらゆる手段を使って探し出すものである。 隠しページとはどのようなものか

          雑記:隠しページ探し

          暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号・解答編

          問題はこちら前回の記事では、ADFGVX暗号により暗号化した文章を3つ提示した。今回はその元のメッセージと、暗号化に使用した暗号表および転置鍵を示す。 少し間を空けてから解答を掲載する。 問題1の答え暗号文に付随して、CARL von CLAUSEWITZという人名がある。強調されているCARLおよびCLAUSEWITZが鍵である。転置鍵としてCARLを用い、換字表としてCLAUSEWITZを鍵として作った次のものを用いる。 \   A D F G V X A   c

          暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号・解答編

          暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号

          ここでは、ADFGVX暗号により暗号化された文章を3つ提示する。その平文は別の記事に掲載する。 各問題はそれぞれで完結している。問題のキーワードがその問題の外に隠されていることはないし、ある問題を解かないと別の問題も解けないということもない。 ADFGVX暗号についてはこちらを参照。 便利なツールであるdcode.frのADFGVX暗号化・復号ツールも参考のこと。 問題1問題2この問題の転置鍵が「BISMARCK」であることが分かっている。 問題3この問題は転置鍵の決

          暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号

          暗号紹介:レールフェンス暗号・Redefence暗号 暗号の仕組みとその特徴

          用語についてRedefence cipherについて、時折Redfence cipherという呼称が用いられていることがある。しかしアメリカ暗号協会(American Cryptogram Association)のサイトを見る限りでは「Redefence」の方が正しいようである。ただし暗号名の由来は不明であり、また「redefence」自体の意味も分からない。 レールフェンス暗号とはレールフェンス暗号とは転置式暗号の一種である。その暗号化の様子が、水平な横木(レール)を持

          暗号紹介:レールフェンス暗号・Redefence暗号 暗号の仕組みとその特徴

          暗号解読の手段:エンコード・デコード

          エンコード・デコードとはエンコード(符号化)とはデータを一定の法則で符号に変換することであり、デコードとはそれを元のデータに戻すことである。符号の種類は、古くはモールス符号、コンピューター上ではASCII、Base64、uuencodeなど、その例はさまざまである。これらは通信に便利なように作られたものであるが、データの秘匿を目的としているわけではない。つまりこれらの符号によりエンコードされたデータは、正確には暗号文ではない。しかしそのままでは読むことができず、知識がなければ

          暗号解読の手段:エンコード・デコード

          暗号紹介:ベーコンの暗号 暗号の仕組みとその特徴

          用語についてベーコンの暗号は英語ではBacon's cipherというが、厳密にはサイファー(個々の文字を別の文字に置き換える)とは別物である。これは一見して「これは暗号だ」と分かる文章ではなく、何気ない文章を装いつつ情報をその中に隠す技術・ステガノグラフィーに属する手法である。このことに注意。 ベーコンの暗号とはベーコンの暗号は、イギリスの哲学者フランシス・ベーコン(1561-1626)が1605年に考案した情報秘匿の手法である。 ウィキペディア(英語版)「Bacon'

          暗号紹介:ベーコンの暗号 暗号の仕組みとその特徴

          暗号紹介:ADFGVX暗号(2) 解読実例

          表記・用語についてプレーンテキスト(暗号化前のメッセージ)の文字は小文字で、暗号文の文字は大文字で表すことにする。 ADFGVX暗号とは前回の記事を参照。 解読実例ADFGVX暗号には、特別な場合の解読法と、一般解読法がある。今回は一般解読法を示す。アメリカ国家安全保障局所蔵の資料に掲載されている例を用いて、その解読作業を追っていく。 実際、かなり複雑である。筆者自身が説明不足を感じ、自分なりに解決した部分を補っているが(あるいはそのせいで?)、それでもかなり難解である。

          暗号紹介:ADFGVX暗号(2) 解読実例