パーキンソン病になって子供にあきらめがついた話
独身時代、結婚願望はあるか?と聞かれると
「んーそんなにないかな」
と答えていた。
友達は
「子供ほしいから結婚したい」
という。
私は
「子供は...今んとこいなくてもいいかな。結婚したら価値観変わるかもだけど、そもそも彼氏もいないし」
と、もらっていた給料を好き勝手に使えて自由を謳歌する最強時代の私は笑って話していた。
おい、あの頃の私。
それならちゃんと人生設計しろーーー!
と、喝を入れたくなる結婚した今の私。
結婚して、子供がいない人生9割、いる人生1割の人生予定でこれまで過ごしてきた。
いないならいないでいい、できたら頑張る!それだけの話だ、と考えていた。
30代半ばに夫と結婚して、誕生日を迎えるたび高齢出産いつまでいけるんだろう、と少し考えていたし、芸能人に高齢出産でも元気な赤ちゃん産みましたという記事やニュースをみると私もいけるかもと思っていた。
こんな感じで夢見る女バージョンの私がちょいちょい顔を出すようになっていた。
どこかで、自分も幸せな家庭を築けるかもしれない。
父母をじいじばあばにできるかもしれないと思っていた。
他の家族を見て子供がいる生活の方も幸せなのかもしれないと思った。
でも、夫とは一度も子づくり行為をしたことがない。
嘘と言われるかもしれないけど本当の話。
子供のことを考える以前にリングにも立っていないのだ。
格闘技のリングの向こう側に夫がいて、独身時代リングの上から私は夫にずっと「やんのか?コラァ」と言い続ける感じだった。
もちろん向こうにいる夫は聞こえていない。
結婚するころには、私もリングを降りた。
そんな私も夢見る女バージョンになっている時は少しシュミレーションしてみる。
夫は双極性障害で、多くのお薬を服用している。
もし妊活するなら薬やめてもらって...
不妊治療は?
いやいや、できる財力ない。
今経済的には不安定な私たち
じゃあいつなら大丈夫?
現実的に2年後...42歳になる。
高齢出産も高齢すぎだし、更年期と思春期かぶるやん!
そんなことをぐるぐる考えて過ごしてきた。
そして、自分の体に異変が起きる。
病気を受け入れる覚悟は固まっていく一方、夢見る女バージョンの私が、こんな体で万が一子供ができたら体力お化けの子供と遊んであげれるのかな、と考える。
リング降りてるくせに考えている。
2024年7月
「しろくまさんはパーキンソン病です」
病院の先生も薬を出すときに「妊娠の予定はありますか」とは聞かない。
だって40歳だもん。
わたしに出された薬をネットで調べると
”妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい(動物実験で催奇形性が報告されている)”
夫に
「一応言っておくけど、この薬を飲み始めて私はすごく体が楽になったけど、もう私たちの赤ちゃんは望めないよ」
と話した。
夫は
「僕のせいだね」
と答えた。
私は否定も肯定もしなかった。
「な...なんでやねーん」
と笑いながら言った。
夢見る女バージョンの私が持つこの気持ちに病気をもってケリをつけざる終えなくなった。
さようなら、私の女としての小さな夢。
そして、いらっしゃい、子なし人生を生きる覚悟を決めた私。
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