ただ素敵で、美しい女性だと思った
最寄り駅からの帰り道、遠くに緑色の自動車が見える。「明るいな。」と思って目を配ると、「小池百合子、本人が乗っています。」とのアナウンスが聞こえた。
私には支持政党はない。だから特に浮き立つような出来事でもない。しかし、「沢山の候補者がいますが、小池百合子」との声を聞き、そうかもなと何となく思った。彼女は、自分の人生を諦めずに生きているのだと、私には見えたからであった。
私の正面に向かってきた選挙カーは、横断歩道のため偶然、私の横で停車し、本物の小池百合子さんと目がしっかりと合った。そして、手を振られた。
テレビで見るより細く、ずっと若々しく、お綺麗で、パワーある姿であった。
純粋に、美しい女性だと思った。
……………
自分の話になる。
義実家にお伺いしても、「ありがとう」ではなく、次回の長野訪問日程や北海道観光の案内係の依頼、
結婚式では、義家族の誰からも「おめでとう」の言葉はなく、
テーブルラウンドでの写真撮影では、義家族が夫を囲い私の周りには誰もいない。
私が嫁として媚びへつらうことを求める。
義家族の存在で心が凍り、「これからはあなたと2人で生きてきたい。」との思いを夫に打ち明け、夫から義父母に話すと、義父母から不潔なクリアファイルに挟まれた離婚届けがボロボロのレターパックで届く。
結婚によって、私は私の人生から、義家族と夫の理想を叶えなければならない存在になってしまった。
結婚式も、新居も、全部、夫が義家族に見せるためで、私との生活のためではない。
いつの間にか、自分の人生を歩くことが許されなくなってしまった。
………………
目の前で世襲のためではなく、ただ自分の人生として政治をされている女性が現れた時、私は何をやっているのだろうと思わずにいられなかった。
夫と同じようにフルタイムで働き、
家事の9割を熟し、
疲れていても貞操義務を果たす。
やっと見つけた土地に2人で建てる新しいお家は、義両親に見せるためで、私との暮らしは二の次。訪問を断れば、LINEブロック等による音信不通や離婚届という脅しに遭う。2人だけの暮らしで、お互いの仕事を尊重し合う、それだけのことすら許されない。
私も自分の人生のために頑張ってきたのに、それを平気で奪っている。そのことに当人たちは気が付かず、もっとを求める。嫁なのだから私たちを満足させろと言わばかりに。
私も夏の晴れの日に、晴れやかに人に手を振ることのできる、元気な女性になりたい。ただ、私と夫2人のために暮らしを作りたかった。
………………
積み上げてきたかけがえのない毎日は、他人にとってはその大切さは関係なく、奪うことにすら罪悪感を持たない。そこに引っ張られて、沈む自分に気が付きながら、年齢の壁に苛まれ、身動きできない自分が哀しい。
譲れないものを抱えたまま、超えられる道はあるのだろうか。もどかしさからの出口は、どこにあるのだろう。