「その人しかいない」という思い、分かるから
「酷いことされて別れたんでしょ?」
「元彼と仲良くする必要ある?」
彼と別れた直後は、そんな言葉をよく言われたが、私にとって彼の存在は「別れた」とか「付き合っているから」とかではない。私のメンタルの安定には彼が必要で、毎日を楽しむ相談相手としても彼じゃなきゃダメだったのだ。
友達だとか、恋人だとか、そんなカテゴリーは分からない。ただ、頭の整理をして気持ちを安定させて、適切な判断をしてあるべき場所で生きていく。毎日を楽しく豊かに過ごすには、居なくてはいけない人が彼。
だから、カテゴリーは結局、どこでもよくて、酷いことされたから別れたとしても、離れる選択肢はない。
唯一無二の取り替えがきかない大切な人なのだ。
………………
それは彼に限らない。
困り事があったときや楽しみを共有したい時、理解してもらえる相手は限られていて、この人じゃないといけないとなる。その相手には、信用を置かざるを得ない。必要なのだから信用する以外の選択肢はない。だから、
「何だか変だな」
と感じても、目を瞑るしかない。
なぜなら、察知した根拠なき異変をも受け入れなければ、一人ぼっちなのだから。
人は沢山いて、出会う人も数え切れない。
しかし、分り合えた相手は数えるほどしかいない。
良き理解者に出会えたとしても付き合いを続けていくには、お互いに自立していることも前提だから、適度な距離感が必要となる。にもかかわらず「分り合える相手」となるにはお互いに深入りするため、距離が近くなりすぎてしまう。
結果、嫌な部分が見えて離れざるを得ず、長続きしないこともある。
だから、長く、深く分り合えた相手に出会ったら、それはかけがえのない人で、その人を手放すことは、もはや出来やしない。
…………………
自分の思いを人に伝える役割を担う通訳としての業務が成立するためには、相互の深い理解も必要であっただろう。そんな業務も相まって、親しくしていた中で、もしかすると動物的な本能が働いて違和感を感じたかもしれない。
しかし、おかしいと感じたところでどうにか出来るものだろうか?優しくしてもらえる理由が金品の奪取あってこそと感じても、自分にとっては代わりはいない唯一の友だとしたら、手放すことが出来ないかもしれない。
だから見逃さざるを得ない、又は完全に騙されるしかなかったかもしれない。そんな思いを想像すると、言葉に出来ない感情で胸が締め付けられる。
ただそれでも、世界一になるためには、気が付いて、切らなければならなかっただろうと思う。
……………
自分事になるが、前職の技術力は、誰にも作れない世界一のものであり、あらゆる人に役立っていたと自負している。この全人類に役立つ技術でさえ、クリーンな組織あってこそだった。どんなに素晴らしい技術を発明しても、ギャングのボスみたいな人に収益の一部が流れていれば、誰も評価しない。
それが、世の中で生きるということだろう。そしてそれは個人主体の働きでも同じだろう。
個人が世界一の能力を発揮し、収益を図っている以上、如何なる事情があってもコンプライアンスに反してはならず、それは「知らなかった」では終わらないこともある。
才能を開花させたいと応援したくとも、善意解釈はしてもらえない。悪事には淡々と法を適用するしかないのだ。
………………
組織で生きる小さな世界の片隅にいてさえ、理解してくれる相手は殆どいない。世界一を争う場所に立ったのなら、理解してもらえる相手に出会うことはもっと少ないだろう。
しかし、世界一になるための出会いならば、決して盗ることはしない。いや、盗ることは出来ない。
なぜなら、世界一となることがそれを支えるみんなの夢なのだから。そのことは誰も前職の技術を我が物にしなかったことからも言える。
心から信頼を置いていた相手が、
切らざるを得ない相手となってしまった哀しみはいかに深いものか、想像を絶する。
だが、それは世界一になるための必要な道だと信じたい。そして、彼がクリーンでこれからも活躍できることを祈りたい。
とても嬉しいので、嬉しいことに使わせて下さい(^^)