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【頭の中で無限大のモザイクアートを創ろう】

ハンガリー仕込みのシンプルで美しい指揮を広めるために活動中!
合唱指揮者と経営者、二つの顔を持つ1児の母
中川彩です。

さて前回の記事では合唱指導を行う上で《想像》《創造》《技法》のバランスが大切だとお話しいたしました。
この3つに共通して私は〔感性〕が大切だと思うのですが、
いったい感性ってどこから湧いて出るのでしょうか?
どうやって養っていけばよいのでしょうか?

私が行う合唱指導はプレイヤーではなくエデュケーターに近いというお話も前回しましたが、私は合唱指導の中で歌い手の〔感性〕を養うために〔考える力〕をまず育てることを意識をしています。
それは同時に楽譜を読み解く力でもあるのですが、その力が育つと曲の完成度がぐんぐん上がっていきます。

では、そもそも私がなぜその様な考えに至ったのかをお話ししましょう。
あれはまだ18歳で、ハンガリーへ渡ってすぐのことでした。
留学生活が始まって最初の数ヶ月間は、ケストヘイという街にある幼小一貫教育の芸術学校の屋根裏部屋で下宿をしていたのですが、そこで暮らすようになって間もなく、ピアノのレッスンをしていただけることになりました。
課題曲はチャイコフスキーの「甘い夢」
とてもロマンチックで優しく甘美な曲です。

テクニック的には難しくないので、私はレッスンで音や強弱を間違えずに弾きました。
すると先生は、
「よく間違えずに弾けましたね。では質問。この左手の音はオーケストラではどの楽器で演奏するかな?」
先生はこの楽譜の音すべてを別の楽器に当てはめてみなさい、と私に言うのです。
18歳の私はその時初めて自分は音のみを弾いていて、音を表現しているわけではないということに気づきました。
実際に合唱団で歌っていてもこういう方いませんか?
音程もテンポも間違っていないけど・・・という感じです。

この状態を打開するため、私が心がけたのはシンプルにひたすら考えるということでした。

さて、レッスンでのお話はまだ続きます。笑
次のレッスンで「ここはヴァイオリン、この旋律はフルート、このメロディーはチェロで・・・」と話している私の言葉にかぶせて先生は一言、

「なぜ?どうしてそう思ったの?」

・・・えっ!?それは・・・
と、言葉に詰まる私。笑
この様なやりとりが何度も何度もあって、2ヶ月かけてやっと一曲完成させました。
あの日から私の「考える人生」がスタートしたのですが、間違いなくこの考える力が音楽表現に生かされていると確信しているので、私は歌い手の皆さんの〔考える力〕を育て続けていきたいのです。

さて、前途の様に考えることで想像した世界を、次は創造のステップへ進めましょう。
考えることによって浮かび上がってきたパーツを一つ一つはめていって、頭の中で一つの絵を完成させていきます。
あくまで手に持っているのは白黒の楽譜ですが、頭の中ではモザイクアートが出来上がっていく、という感覚でしょうか。
俯瞰してみると一つの大きなモザイクアートが完成していると、素晴らしい音楽になると同時に、歌い手の感性も豊かに育っていることでしょう!
一人ひとりの感性を育てることは難しいですし、もちろん時間がかかります。
しかしそれがエデュケーター思考の合唱指揮者である私のお志事ではないかと考えています。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回は、“モザイクアートのパーツ”を見つけるため、実際に私が指導中にどのように声かけをしているか、少しご紹介したいと思います。

それではまた、お会いしましょう!
ハンガリー仕込みの合唱指揮者、中川彩でした。


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