横浜で見かけた「じゃがりこおじさん」

5年以上前、仕事とプライベートを兼ねて横浜に来ていた。

銀杏並木で、床が黄色に染まっていた頃の話だ。

横浜中華街に向かう中、中年男性が真剣な顔をして立っていた。


みんな、足を止めることもなく歩いていた。

そんなところに、1人の男性が立ちすくんでいる。

そして、その場で正座をして空のじゃがりこの箱を地面に置いた。
正座した太腿の上に両手をおき、その手はぎゅっと硬く握り締められていた。


「あ……。」

5年も経つのに忘れられない。
私は一緒に歩いていた仕事仲間に「あの人…子どもでもいるんかな?1人には見えないんだけど…。」

「ここらへん多いよ」そう言われた。

けど、ずっとそういう生活をしていた人には見えなかった。
正座する前、自分のプライドを捨てたような気がした。一瞬、そのプライドを消す瞬間が見えた。

絶対、こんなことになるなんて思っていなかったと思う。

私は…1000円渡そうか…
それとも、「お話し聴かせて頂けますか?」と声を掛けたかった。

私は自営業だし、正直なところその方に仕事を渡すこともできた。けれど…。

視野に入る限り、その男性の姿を見続けた。


寒くなってきましたね…。
私はあなたが1人だとは思わなかった。きっと娘さんがいたのかもしれない。あなたのあの表情は、本当に困っていた。今、ご飯食べていますか?
生活出来ていますか?
………生きていますか?

わたしは後悔しています。

どうして、人ごとにしたのか。
社会の問題は自分たちの問題。
その時もそう思っていたのに、私はあなたの心の声にすら耳を傾けることが出来なかった。


今なら分かります。
寒くなりましたね。とても、芯から冷えますね。
温まる場所はありますか?
安心して眠れる日はありますか?
先の不安が無く、今日楽しかったことを振り返りながら眠れていますか?

涙にも色んな種類があります。
…今、泣けていますか?涙はこぼれおちますか?

こぼれおちた涙を、
社会は拾ってくれていますか?
受け入れてくれていますか?


私は未来を予測できていましたか?

だけど、

心の声に傾けるだけでは、瞬間の魔法に過ぎない。


5年前の私へ。

過去に戻りますか?

それとも、未来を歩みますか?

仲間と共に、歩みますか?

あの時の、じゃがりこおじさんの姿はきっと、
私の原動力に変わったことでしょう。


私はもう、

踵を返すことなく、進むね?

あなたの姿を焼き付けて。

あなたも昔は子どもだったはず。


あなたはどんな子どもでしたか?
どんな生活でしたか?


名前も知らない。けど…
5年経った今、あなたの気持ちがわかる気がします。

あなたは、今も生きていますか?
どうか幸せな笑顔でありますように。





(ちなみに…じゃがバター味!私はカロリー的にもサラダよりじゃがバターの方が…好きです。)

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