コミュニティの意義を「価値共創」の視点から考えてみる[2]:価値共創とは
※このブログは、コミュニティマーケティングAdvent Calender 2023 の12/15分のエントリーです。
前回、顧客とのつながりを強化するために顧客を知ることの必要性まで書きました。では、つながりを強化するためには、何が必要なのか。今回は「価値共創」について考えたいと思います。
価値共創とは
顧客とのつながりを強化する方法を考える前提として、「価値」について整理する必要があります。
企業は顧客に「価値」を提供したいと考えて製品 / 商品 / サービスを販売しています。けれども「価値」は、企業が一方的に生み出し、提供するものではないというのが最近の考え方で、これはサービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)というものです。S-Dロジックの詳細はここでは省きますが(深すぎて私自身語りきれない)、「価値」は企業が一方的に生み出し、提供するものではないのであれば、「価値」はどのように生み出されるのでしょうか。S-Dロジックをベースにすると、次のようなポイントで整理できます。
S-Dロジックをベースにした価値共創の捉え方
従来のビジネスでは、価値を創造するのは企業であるという前提で、オペレーションと管理が行われてきた。
しかし、モノ(製品 / 商品 / サービス)自体は実際に使用される時点まで内側に「価値」を内在させているにすぎない。
価値は企業が一方的に提供するものではなく、顧客も価値を作り上げる主体であり、企業と顧客が共創(=価値共創)するものであるという発想。
モノが使用(体験)された段階ではじめて「価値」=使用価値が生じ、個々人の置かれた文脈によって知覚される「価値」=文脈価値は個別に異なる。
つまり、価値は体験プロセスで生まれるものである。
企業が一方的に価値を規定することはできず、企業ができるのはあくまで製品/商品/サービスを通じて価値を”提案”することに留まる(= ”ユースケース”の提示)
つまり、「価値」とは企業が一方的に提供するものではなく、顧客と共創されるものということです。顧客も価値を生み出す主体となるため、企業が共創しようと恣意的に動けるものでもありません。あくまでフラットな関係性です。
これって、マーケティング活動全体において考えておかなくてはいけない視点でもあります。顧客はそれぞれが文脈価値を知覚することになるわけで、企業が一方的に考える価値をメッセージにして顧客に伝えたり、企業が一方的にきっとこういう行動を取るだろうと思って施策を打っても、それは企業側の都合だし、顧客をコントロールするなんておこがましいことはできません。その考え方自体を少し変えていかないといけないということだと思うのです。
価値共創の考え方で見直す、事業の在り方
価値共創の考え方の下では、企業は一方的にどのような価値を創造するのか決めるのではなく、製品 / 商品 /サービスが使用される、特に購買の後工程での顧客との共創経験・プロセスを中心に据えて事業構造自体を再構築することまで検討する必要があります。SaaS領域でのカスタマーサクセスはわかりやすい例です。
また別の言い方をすれば、自社の中核技術や知識をコンピタンスとして認識するだけではなく、自社のそれらに加えて、顧客や他のステークホルダーとのネットワークをコンピタンスとして考えるべきであるとも言えるでしょう。これは、QC(品質管理)の概念にも当てはまります。経営管理の手法であるTQM(統合品質管理)は企業が価値を一方的に提供するという前提のものなので、共創される価値全体の品質を管理するという考え方にシフトしていくべきであると思います。
顧客とのつながりを強化するためには、この「価値共創」を中心に据えた事業構造、そして共創される価値全体の品質管理がキーになるのだと思います。