乳がんになった私 #19「くもをさがす」
初回の抗がん剤治療まであと1週間と少し。
この頃から身体に様々な不調が出始めた。
咳、ひどい腰痛、足のしびれ、膝裏の違和感、みぞおち付近の違和感、右胸と右脇以外にも身体のあらゆるところがチクチクピリピリするかんじ。(当時の日記に書いてあった症状)
治療開始前に悪化しているのではないか…。
ネガティブな考えが浮かび上がる。不安のせいで夜もなかなか眠れずにいた。
身体の不調や不安な気持ちをパートナーの内田に話したり、母にLINEをして逐一聞いてもらっていた。きっと2人には心配をさせていたと思う。
後に、この時のあらゆる不調は乳がんのせいではなく、精神的ストレスが主な原因だったのだと分かるのだが、当時は本当に不安で不安で仕方がなかった。
そんな不安で不調な日々の中、私には一刻も早く読みたい本があった。
3月中旬、自分が乳がんかもしれない、病院でほぼ確定だと言われたタイミングで、以前から好きだった小説家の西加奈子さんの初のノンフィクション作品「くもをさがす」が発売されることを知った。
その内容がなんと、カナダで乳がんになった話。
私は勝手に運命を感じてしまった。もちろん即予約をした。
本は4月20日に届いたのだが、その日は私は採卵手術だったため読む余裕がなく、翌日の夜寝る前にドキドキしながら読み始めた。
夢中で読んでいたら気付けば深夜1時すぎ。身体のために早寝早起きを心がけていたのでもうそろそろ寝なければと思い中断。熟睡出来ずに朝を迎えた。
その日は内田と2人で音楽制作をしていた。過去にリリースした「たらしめろ」という曲のリミックス。構成やアレンジを新しく作り変えるためアイデアを出し合っていたのだが、私は寝不足と不調のために少し休憩、昼寝をすることにしたのだが…。
読みかけの小説、中断した箇所が抗がん剤の副作用で辛そうな描写だったので、私はこれから始まる治療に対しての不安が増してしまっていた。(体調不良も相まって) もちろん人それぞれ病状も違うし副作用のひどさも違うことは分かっているものの…こんなに大変そうなのに、本当に私は音楽を続けられるのだろうか…?と。
よし!昼寝はやめて本を最後まで読もう!じゃなきゃ続きが気になって…不安が止まらない!音楽にも集中できない!
そう思い、私は本を一気に読み終えた。
読み終えたら、ものすごく勇気が湧いた。
そして、西加奈子さんの病気に対しての捉え方や、自身の身体への思い、社会に対して思うことなど、考え方が似ている部分があるなあと勝手に共感して、勝手に嬉しくなった。
西加奈子さんが小説で自分の人生を表現したように、私は音楽で表現していきたいんだ。
あらためてそう思えた。
「たらしめろ」のNEWバージョンは、無事に抗がん剤治療の入院前 (前々日) に完成した。
この曲も、今の自分への応援歌に聴こえるなあ。
(#20へ続く)
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