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読ログ#3『ぼくは勉強ができない』でも、つまらない人間じゃない。


今日初めて読んで、すっかり虜になった。
とんでもなく面白い本だ。
山田詠美さんの『ぼくは勉強ができない』

こんなにも大人びた考え方ができる高校生なんているのだろうか。
なんと人生の早い時点から濃密な時間を過ごしているのだろう。
あなたもきっとそう感じる。

昔の自分もそうだったな、と懐かしい気持ちになる章もあれば、現在進行形で共感できる章もある。最近やっと理解できた内容もあって、読み進めるのが本当に楽しい。
こんなに本を読み切るのに熱中したのは久しぶりだった。


「ぼくは思うのだ。どんなに成績が良くて、りっぱなことを言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分と虚しいような気がする」


ある一定の特徴を持った人に対して、
「つまんないなー」「面白くないなー」
と思い始めたのは半年くらい前からだと思う。

人を受け入れる余裕がない人間
人の話を聞いてるフリして自分のことにしか興味がない人間
よく知りもしないのに決めつけて、それを強要してくる人間
綺麗事やテンプレしか言わない、毒のない人間


勉強ができることは、必ずしもその人が面白い人間であることとイコールではない。
大人だろうが子どもだろうが関係ない。

この人は面白い人間だな、
その面白さに気づける基準を持っているだろうか。

この人はつまんないな、
そのつまらなさを客観視する視点を持ち合わせているだろうか。



良いことをすれば、父親がいないからだということになる。悪いことをすれば、やはり父親がいないからだということになるが、それは事実であって定義ではないのだ。事実は、本当は、何も呼び起こしたりしない。そこに丸印、ばつ印をつけるのは間違っていると、ぼくは思うのだ。
ぼくは、ぼくなりの価値判断の基準を作って行かなくてはならない。忙しいのだ。何と言っても、その基準に、世間一般の定義を持ち込むような”ちゃち”なことを、ぼくは、決してしたくないのだから。

彼の魅力は、なんといってもこのまっすぐな芯だろう。

(告白してきた女の子に対して)
ぼくは、人に好かれようと姑息に努力する人を見ると困っちゃうたちなんだ。ぼくの好きな人には、そういうとこがない。香水よりも石鹸の香りの好きな男の方が多いから、そういう香りを漂わせようと目論む女より、自分の好みの強い香水を付けてる女の人の方が好きなんだ。たとえ話だけど。
(それを聞いた女の子は)
何よ、あんただって自然体っていう演技してるわよ。自分だって、他の人とは違う特別なものを持ってるって思ってるくせに。あんたはすごく自由に見えるわ。でもね、自由をよしとしてるのって、本当に自由ではないからよ。私も同じ。私は人に愛される自分てのが好みなのよ。そういう演技を追求するのが大好きなの。中途半端に自由ぶってんじゃないわよ。

好きな男の子に、そんなグサグサ刺さること言われて
こんなこと、すぐに言い返せる子おる?笑 

(進路に悩む主人公に対して同級生が)
時田くん、なんだか、少し困っているようだけど、気にすることないよ。誰だって困ってるんだから。あなたは、自分のように考えてるの自分だけと思っているかもしれないけど、それって、一種の特権意識よ。反省した方が良いかもよ

なんと憎たらしい、鋭い同級生なんだ。


私がこの本を高校生の時に読んでも、そんなに刺さらなかったんじゃないかな。
それくらいこの本は、悩める高校生たちを主人公にしている割には、とても大人びていて成熟した考え方ばかりだった。

それでもやっぱり、
高校生時代、漠然と抱えていたモヤモヤや焦燥感、
行き場のない怒りや葛藤は、
この本を読むことで
「あぁそういうことだったのか」「そうそう、まさにそれが言いたかった」
と言語化されて、ようやく解き放たれるのではないだろうか。


自分の考え方に本当の意味で影響を与える本なんて、人生で何冊出会えるかわからない。
むしろ出会えたのが奇跡と言って良い。

私がこの先の人生でつまらない大人になりそうになった時、
価値判断の基準を見直したい時、

そんな時に戻って来れる、読み返せる
私のバイブルである。



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