詩集『目は体の灯』制作メモ
今日から始まる個展「目は体の灯」に合わせて詩集を作りました。SUNNY BOY BOOKS店頭&オンラインストアで手に取っていただけます。(オンラインストアでの販売開始は始まり次第お知らせします!)
詩集を作っているときに書いた制作メモを掲載します。
制作メモ
怒りについて
蓋を開けたら、怒りがあかるみの方へ目を細めている。自分は言葉にしないことで怒りをここに留めようとしていたのだと気づく。耳に流し込む音楽で燃焼の方へ自分を連れてゆく。以前よりその道程は長い。それが私の生活の地点を指していることはよくわかる。しかし怒りや抗いについて、これ以上置き去りにはできない。詩と一緒に生きていくことはどのようなことなのだろう。更新された回答を持ち合わせないまま、私は蓋を開けて、出かけていく。蓋を閉めて、帰ってくることができると知っているから、そうする。そのことに驕りを感じないわけではない。感じなくてもいいことを、感じることを選ぶ人と共に在りたい。この星に生きている間の辛抱だ。
言葉を選び取る手が照らされたり、暗がりに埋もれたりする。
どうしようもないことと呼ばざるを得ないことが多すぎることに、悲しみを感じることもまたその内に入る。その内の数に自分を入れる。それは1。1が足されたり引かれたりする。この唇はふるえることを決してやめないのに、怒りは私を壊すことができない。ここには多くの人がいる。怒りの内に在ることは、1として在ることは、満員電車の中で感じる親しい柔らかさに似て、あたたかい。人間の地上を見下ろせば、営みはこんなにも小さく愛らしい。そしてここからは、人の手のふるえは見えない。人の涙の流れるところは見えない。だから降りてきて。わたしたちが灯された地上を共に。
ここには多くの人がいる。1として、こんなにもたくさんの愛らしいとしか言えない柔らかくあたたかな火のことを、どうしようもないことと呼びながら。ふるえることを決してやめないでいる。わたしはやめないでいる。
捏ねて作ったろうそくの一本ずつが人のかたちにも見えていました。そして実際の生きる人の中にある光や火のことを思いながら色を重ねました。ろうそくはひとつひとつ手から生まれた抗いと祈りです。あなたの手と出会えたらうれしいです。