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一生涯を風にめくれて笑うピクニックシートとする

もう何度も出会っているけれどまた会いたくて、会えるようにと願って出会ったらやっぱりうれしくてまた会いたいと思う。
これがわたしたちの別れと出会い。
咲くのが待ち遠しい花のように、食べ終えることがさみしくなるくらい美味しいもののように、遠回りして会いにゆく道程のすべてはわたしの、わたしたちの眼をひらかせ、ここに立たせてくれる。
どうしてこんなにもうれしいのだろう。
思考やさっきまでの気分を易々と越えて流れ込んでくるよろこびを、この身の内の他者のものだと感じる。はみ出しているよろこびは隠しきれないしっぽみたいだ。
与り知らない他者からの土産と共に生きることこそを「自分を生きること」とすることにした。
わたしの領分とそうではないもの、どちらも大切に思うことが自分の特権とさえ思っている。全部抱きしめられる腕をここに持つことこそが、わたしがわたしを生きることのよろこびだ。

与えられた一生涯を、何としよう。
いつだってなげうつことのできる陶椀でも、広々とした白紙でも、いい。あなたが選んでいい。
わたしはこの魂の奥ゆきに適うピクニックシートのようにありたい。花を眺めて、おにぎり食べて、尽きない話を溢れるままに、満ちゆくままに、吹く風に、注ぐ光に渡せるような時間を生きてゆきたい。誰のためでもなく、ここに在る自分のために。
鼻の奥がつんとする。
体が変わっても変わらないものたちを抱きしめて、わたしというものは光の宿として、今日の日もああ、深く深く眠ろう。

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