明日の私2
遠くで目覚まし時計が鳴っている
だんだん音が近づいてきて
耳元で鳴っていることに気付いて目を覚ます
暗い部屋をカーテンも開けずに電気をつけて
お湯を沸かす間に
冷たい水で顔を洗ってテレビをつける
誰もいない部屋に声が響き渡ると
ひとりじゃないと安心する
朝は楽しい情報が嬉しい
ゆっくりと時間を噛みしめながら
コーヒーを淹れる
豆を擦る時間も
ゆっくりとお湯を注ぎ 落ちていく琥珀色の筋も
沸き立つ香りも
少しずつ私を覚醒させていく
ちょうど良いタイミングでパンが焼きあがり
朝の至福のひと時
焼きたてのパンに 手作りの餡子とクリームをのせて
淹れたてのコーヒーを啜る
変わらない いつもの朝
いつもの朝に感謝する
出社のために外に出ると
ひんやりと冷たい空気に首を縮める
鍵をかけて ポケットに手を突っ込み
バス停へと歩き出す
毎朝すれ違う半袖シャツでジャケットを手に持っている人
一年中サングラスをかけているランニングのおじさん
もこもこに着込んで犬と散歩をするおばあさん
たまに見かける制服姿の高校生
時々会うと声を掛けてくれるお散歩の神父さん
朝は気持ちがいい
7時23分のバスに乗って最寄りの駅まで行く間
景色を眺めるのが好きだ
電車からの景色よりも近くて
信号やバス停の度に停まるから
行きかう人々をゆっくり観察できる
観察と言ってもたいしたことではなく
眺めているだけなのだが
保育園に向かう親子の会話を想像したり
急いでいる人の遅刻の理由を考えたり
そういう時間が
人にはわからないだろう密かな楽しみなのだ
バスを降りると駅は目の前
改札から一番近いところに停まってくれるのが嬉しい
しかし今朝は少し道が混んでいたのか
いつもより到着が遅れている
20分に1本の快速にはなんとか間に合いたい
思わず走っていた
人波を掻き分けて
改札に着くと人が溢れている
どうやら電車が止まっているらしい
少しほっとして携帯を見ると
Yahoo!ニュースが飛び込んできた
沿線で土砂崩れがあり 車や電車が立ち往生しているという
ここからは随分遠い場所なのだが
線路は繋がっているのだ
バスに乗っている間は気が付かなかったけれど
かなりの被害が出ているらしい
会社からメールが届く
「本日の出勤については各自の状況により判断し
出社が難しい場合は在宅勤務をしてください」
そういうことなら、と
今走ってきた道を引きかえし
またバスに乗る
帰宅して、
またコーヒーを淹れ
相変わらずカーテンを閉め切ったまま
電気をつけて仕事する
カーテンは開けないのが好きだ
季節や時間の経過を気にせずに済むから
朝 目が覚めた時 まだ暗いのも嫌だし
夜 陽が沈んでからまだ仕事をしているのも嫌
春夏秋冬 カーテンを開けなければ
目覚めはいつも同じ明るさなのが嬉しい
そして今日もカーテンの外で日が暮れていく
今日も一日お疲れ様でした
頑張った私にまた ゆっくりとコーヒーを淹れる
夜の至福を味わうために
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